ドル円 2020年高値上抜けで買いが強まりやすい(週報10月第2週)

先週のドル円は、週初からじり高の展開を辿り週末には昨年高値を上抜ける動きとなりました。

ドル円  2020年高値上抜けで買いが強まりやすい(週報10月第2週)

2020年高値上抜けで買いが強まりやすい

〇先週のドル円、インフレ懸念による米金利上昇にともない112.25まで上昇
〇中国恒大集団問題が一段の懸念材料とはならず、一方で資源価格の上昇が更なるインフレを連想させたか
〇週明けは2019年高値112.40レベルも上抜け、2018年高値114.55レベルをターゲットにする展開
〇今週は米国9月CPI、同PPI、米国10月NY連銀製造業景況指数に注目
〇112.00レベルをサポートに、テクニカルなターゲットを参考に113.20レベルをレジスタンスという流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初からじり高の展開を辿り週末には昨年高値を上抜ける動きとなりました。材料的には中国エバーグランデ問題が一段の懸念材料とはならず、いっぽうで止まらないエネルギー価格の上昇が更なるインフレを連想させ米金利が上昇、米金利との相関が高いドル円は素直にじり高となり、週末には昨年高値も上抜けたことでドル円の上昇基調を決定づけることとなりました。

エネルギー価格の高騰については2回のコラムで書きましたので、詳細はそちらを見ていただくとして、原油以上に天然ガスや石炭価格が大幅に上昇していることから、パウエルFRB議長をはじめFRB関係者が想定していたようなインフレ上昇ペースの鈍化は望めず、想定以上の速度でインフレが加速することで米金利の利上げは2022年末はおろか、更に前倒しにつながっていくのではないかという見方が広がっています。

そのことが10年債利回りなど米金利上昇につながり、ドル円は112.25レベルまで上昇、週明けも更なる上昇という結果につながりました。以下のチャートは上段が10年債利回り、下段がドル円のそれぞれ1時間足ですが、似たような動きをしていることがよくわかります。今後もドル円はインフレ懸念による米金利上昇が大きな材料となってきます。

2020年高値上抜けで買いが強まりやすい

そしてテクニカルにも重要な変化が起きています。月足チャートをご覧ください。

2020年高値上抜けで買いが強まりやすい 2枚目の画像

金曜時点で昨年の高値を上抜けていましたが、週明けも一段とドル買いが強まる中で2019年高値112.40レベルも上抜け、現在は2018年高値114.55レベル(ピンクの点線)をターゲットにする展開となってきました。112円台前半には節目が集中していて狙われやすく逆に上抜けしやすかったのですが、114円台はさすがに距離があり、今週中にそこまで行くことは難しいでしょう。

日足チャートをご覧ください。
既に近いターゲットは全て上抜けてしまいましたので、9月安値を起点に9月高値までの上げ、10月安値への押しを考えます。この短期上昇N波動から得られる近いターゲットは61.8%エクスパンションの112.64と78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションの113.14があります。既に前者は到達したことから後者をターゲットに考えることとなります。
下値は既に112円が底堅くなってきていると考えられますので、今週は112.00レベルをサポートに、テクニカルなターゲットを参考に113.20レベルをレジスタンスという流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

10月11日(月)
**:** NY債券市場休場
16:00 フランス中銀総裁講演
16:00 トルコ8月経常収支、失業率
17:00 エルダーソンECB理事講演
21:00 レーンECB理事講演 ☆
23:00 オーストリア中銀総裁講演
24:30 スペイン中銀総裁講演

10月12日(火)
07:00 シカゴ連銀総裁講演
08:01 英国9月小売売上高
09:30 豪州9月企業景況感 ☆
15:00 英国9月失業率
16:00 トルコ8月鉱工業生産
18:00 ドイツ10月ZEW景況感 ☆
18:00 ユーロ圏10月ZEW景況感
25:30 アトランタ連銀総裁講演

10月13日(水)
08:30 豪州10月消費者信頼感
**:** 中国9月貿易収支
15:00 ドイツ9月CPI
15:00 英国8月鉱工業生産、貿易収支
18:00 ユーロ8月鉱工業生産
20:00 南ア8月小売売上高
21:30 米国9月CPI ☆
27:00 FOMC議事録公表 ☆
29:30 ブレイナードFRB理事講演

10月14日(木)
**:** 香港市場休場
08:01 英国9月住宅価格
09:00 ボウマンFRB理事講演
09:30 豪州9月失業率
10:30 中国9月CPI・PPI ☆
21:30 米国9月PPI ☆
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 アトランタ連銀総裁講演
24:00 週間原油在庫統計
26:00 リッチモンド連銀総裁講演

10月15日(金)
07:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
15:45 フランス9月CPI
18:00 ユーロ圏8月貿易収支
21:30 米国10月NY連銀製造業景況指数 ☆
21:30 米国9月小売売上高
23:00 米国10月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
23:00 米国8月企業在庫
25:20 NY連銀総裁講演
**:** G20(〜16日)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

10月4日(月)
週明けのドル円は株安の動きには反応を見せず前週後半の下げに対する買い戻しが先行しました。香港取引所でエバーグランデ株取引停止のニュースにも為替市場は反応せず、欧州市場までじり高となり111.30レベルの戻り高値をつけました。NY市場ではOPECプラスで減産縮小予定通りとなったことからNY原油は大幅高となり7年ぶりの高値をつけ資源国通貨買いによるドル売りがドル円にも波及し、NYダウの下げも重なって110.82レベルと日中安値を更新後、安値圏での引けとなりました。

10月5日(火)
ドル円は終日ドル買いが目立ちました。背景としてはエネルギー市場が高騰を続けているものの株式市場が安定していたこと、また米金利が上昇に転じたことにドル円は素直に反応した動きでした。

10月6日(水)
ドル円は東京市場では前日のドル買いの流れが継続、長期金利が上昇を続けたことも重なって東京後場には111.79レベルの高値をつけました。しかし、欧州市場序盤以降は米金利が下げに転じる動きとともにドル円も下げに転じ、NY前場に111.20レベルまで水準を下げ、それ以降は株式市場が上昇に転じたことから買い戻しも出ての引けとなりました。

10月7日(木)
ドル円はNY市場までは細かく上下しながらも横ばいで方向感のはっきりしない流れが続きました。NY市場に入り12月上旬までの時限措置ではあるものの米国の債務上限引き上げが合意することを好感しダウが上昇、ドル円もじり高となり111.65レベルの高値をつけそのまま高値圏での引けとなりました。

10月8日(金)
ドル円は米金利がじり高の動きとなる中欧州市場序盤までじり高の展開となりました。しかし、高値が111.99レベルと112円をつけられなかったことから雇用統計に向けて反落、雇用統計も失業率は4.8%と大幅改善したもののNFPが19.4万人と予想を大きく下回ったことに反応し初動はドル売り、111.51レベルの安値をつけました。下値も111.50レベルをつけられなかったことや悪かったのはNFPのみだったということもあり、その後は改めてドル買いに動き米金利上昇とともに112円を上抜け、112.25レベルの高値をつけ、高値圏での週末クローズとなりました。

※ポイント要約は編集部

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