トルコリラ円見通し 対ドルでの史上最安値更新で9月27日安値割れへ余裕乏しい(21/10/11)

米雇用統計発表直後12.58円まで戻すも早々にドル高リラ安へ切り返したため、ドル円の急伸では支えきれず12.50円を割り込み週を終えたが9/27安値12.42円割れは回避した。

トルコリラ円見通し 対ドルでの史上最安値更新で9月27日安値割れへ余裕乏しい(21/10/11)

トルコリラ円見通し 対ドルでの史上最安値更新で9月27日安値割れへ余裕乏しい

〇トルコリラ円、10/8夕12.45へ下落、10/9早朝終値12.48で9/27安値割れは回避
〇対ドル最安値の更新続けば持ち合い下放れへ、下げ足速まり昨年11月底12.03割り込む懸念も
〇エルドアン大統領が中銀総裁解任の可能性、リラ売りの勢いづきに警戒
〇対ドル、中銀総裁解任疑惑、米長期利回り上昇背景に9日早朝最安値8.96更新
〇12.55から12.60にかけては戻り売りにつかまりやすく、12.60超えの場合12.62試しと反落を警戒する
〇12.42割れからは段階的に下値を試し、昨年11/6安値12.03試しへ向かう流れとみる

【概況】

トルコリラ円の10月8日は12.59円から12.45円の取引レンジ、9日早朝の終値は12.48円で前日終値の12.55円から0.07円の円高リラ安となった。
10月6日夜安値12.45円からの反発を継続して8日午後にはこの日の高値となる12.59円まで戻していたが、エルドアン大統領による中銀総裁への不信感が報じられたことで夕刻に対ドルで史上最安値を更新したためにトルコリラ円はこの日の安値となる12.45円へ下落した。
米雇用統計発表直後にいったんドル安リラ高となった局面で12.58円まで戻したものの早々にドル高リラ安へと切り返したため、ドル円の急伸では支えきれずに失速して夕刻安値に迫り12.50円を割り込んで週を終えたが、9月27日安値12.42円割れはひとまず回避している。

【対ドルで史上最安値を更新】

ドル/トルコリラの10月8日は8.98リラから8.83リラの取引レンジ、9日早朝の終値は8.96円で前日終値の8.87リラから0.09リラのドル高リラ安だった。
トルコ中銀による9月23日の利下げからリラ売りが進んで9月29日には8.95リラまで史上最安値を更新し、その後は上昇一服となっていたが、エルドアン大統領がトルコ中銀のカブジュオール総裁へ不信感を募らせているとの報道から8日夕刻には8.97リラへ最安値を更新した。
米雇用統計で非農業部門就業者が市場予想の50万人増に対して19.4万人増にとどまったことでいったんドル安リラ高へと揺れ返したが、米失業率は4.6%へ予想を超える改善となり米連銀による年内のテーパリング開始と来年の利上げという規定路線は変わらないと市場は受け止めた。その結果、米長期債利回りが上昇し全般的にドル高基調ヘ進んだためにリラ売りも再開して9日早朝に最安値を更新した。

【トルコ中銀総裁は近々解任か】

10月8日夕刻に「エルドアン大統領が中銀総裁への信頼を失い解任も」との通信社報道によりリラ売りが勢い付いた。報道によれば大統領はカブジュオール総裁に対する信頼を失っており、ここ数週間はほとんどやり取りをしていないという。大統領はカブジュオール総裁が就任早々に利下げをすることを期待していたが9月23日まで利下げをしなかったことで相当な不快感を持っているとされ、野党・IYI党のアクシェナー党首が10月6日には「大統領が近くカブジュオール総裁を解任しそうだ」と述べたという。

エルドアン大統領は「一桁の物価上昇率と政策金利の実現」を公言し続け、利下げこそが物価を低下させると繰り返し強調してきた。昨年11月にトルコリラが史上最安値を更新する通貨危機的な状況でアーバル前総裁を採用し、同総裁は在任中に三度の利上げを行って政策金利を10.25%から19%まで引き上げてきた。この利上げによりトルコリラは反騰したのだが、連続利上げを不満として今年3月にアーバル前総裁は突然解任された。
カブジュオール現総裁は3月就任後に「物価上昇率を下回る政策金利にはしない」と繰り返し強調して市場を落ち着かせてきたが、9月8日に「政策金利の判断基準としての物価上昇率については全体ではなくコア指数とする」旨を発現したために利下げの可能性が浮上してリラ売りが再燃、9月16日にエルドアン大統領が利下げ催促的な発言を行って一段安となり、9月23日に利下げが強硬されたことで対ドルでの史上最安値更新までリラ安が進んでいた。
中銀総裁は過去2年半で3人解任されており、近々4人目の解任ということになれば市場の不信も強まってリラ売りが益々勢い付くと警戒される。

【9月27日からの持ち合い下放れ警戒】

トルコ中銀の次回金融政策決定会合は10月21日。それまでにカブジュオール総裁が解任されない場合、大統領の意向を受け入れて追加利下げされる可能性が高いと思われる。9月23日に利下げされた根拠としては、8月のトルコ消費者物価コア指数が16.8%で政策金利の19%を下回っていたために18%への引き下げが可能だったという事だろう。10月4日に発表された9月消費者物価コア指数は前年比で17.0%であり8月から若干上昇したものの引き下げられた政策金利18%に対しては利下げの余地があることになる。仮に現総裁が留任した状況で17%台前半へ追加利下げされる場合、コア指数の年末にかけての低下予想を示してさらに一段と利下げする可能性を示唆することも考えられる。
現総裁が解任される場合、現総裁としてはこれ以上の利下げは無理と認識しているにもかかわらず意に沿わないとして解任され、新たな総裁が10月23日の会合で追加利下げする可能性が高まると思われる。いずれにしてもエルドアン大統領による独裁的な姿勢が強調されることになりリラ安が通貨危機を招くようなことにもなりかねない。

トルコリラ円見通し 対ドルでの史上最安値更新で9月27日安値割れへ余裕乏しい

トルコリラ円は9月27日安値以降は下げ渋っている。10月8日に対ドルでトルコリラが史上最安値を更新したもののドル円が9月30日高値112.07円を超えて112.25円へ上昇してパンデミック前の2020年2月20日高値112.21円も超えたことでトルコリラ円は円安に支えられて持ち合い範囲にとどまった。しかし対ドルでの最安値更新がさらに続けば持ちこたえられなくなり持ち合い下放れへ進む可能性が高まると思われる。持ち合い下放れに入れば買い方の投げ売りや先安期待での売り攻勢も考えられて下げ足が速まり、昨年11月底12.03円を割り込んでゆくことも懸念される。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月27日安値12.42円を下値支持線、12.60円を上値抵抗線とする。
(2)12.55円から12.60円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。12.60円を超える場合は12.62円試しとその後の反落を警戒する。
(3)12.45円割れからは12.42円試しとし、12.42円割れからは12.30円、12.20円と段階的に下値を試し、昨年11月6日安値12.03円試しへ向かう流れとみる。中銀総裁解任等が発生する場合は史上最安値更新へ向かうとみるが、前総裁解任の際に9月22日は高値15.08円から安値13.33円まで暴落し、前日比では1.13円の円高リラ安が発生している。

【当面の主な予定】

10月11日
 16:00 8月 失業率 (7月 12.0%)
 16:00 8月 経常収支 (7月 -6.83億ドル)
10月12日
 16:00 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 -4.2%)
 16:00 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 8.7%)
 16:00 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.7%)
 16:00 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 12.3%)
10月14日
 20:00 外貨準備高 10/8時点 (10/1時点 83.20億ドル)
10月15日
 17:00 9月 財政収支 (8月 +408.4億リラ)
10月20日
 23:30 9月 中央政府債務 (8月 204.2億リラ)
10月21日
 20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合


※ポイント要約は編集部

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