上昇スピード早いが、ドル高リスクは継続
〇本日のドル円、先週末の年初来高値112.26を超え、112.85近くまで一時上昇
〇次のテクニカルポイントは114円台半ばや114.70レベル
〇8日発表の米雇用統計、予想値を下回るも早期テーパリング後退観測は聞かれず
〇米祝祭日のため本日は経済指標発表なし、ただしIMF年次総会等の国際会議に注意
〇本日欧米時間ドル/円予想レンジは112.20-113.20、112.85前後が目先の抵抗、超えれば113円台乗せも
<< 東京市場の動き >>
週明け11日の東京市場はドルが堅調裡。先週末に記録した年初来高値112.26円を超えただけでなく、そのままの勢いで112.85円近くまで一気に値を上げた。
先週末は、台湾をめぐる米中の軋轢が改めて取り沙汰されるなど、中国情勢が引き続き思惑を呼ぶなか、債務上限やサプライチェーンをめぐる問題など米国情勢も何かと話題になっていたようだ。
そうした状況下、ドル/円は112.20-25円で寄り付いたのち、当初は若干小緩むと日中安値の112.15-20円を示現。しかし、以降は緩やかな右肩上がりの展開をたどると、上方向のテクニカルポイントも次々突破した。2019年高値の112.40円も超えると、112.85円近くまで一時達している。16時現在でもドル/円は日中の最高値圏で推移、欧米市場を迎えていた。
なお、円は対ドル以外でも弱含み。さながら全面安といった様相で、とくにカナダ/円や豪ドル/円、スイス/円での円安進行が顕著だった。
一方、材料的に注視されていたものは、「台湾をめぐる動き」と「米国情勢」について。
前者は、米紙WSJが報じた「米軍が台湾軍訓練」報道に中国外務省が批判コメントを発したことに続き、フランス議員団の台湾訪問にも強い反発の姿勢をうかがわせていた。さらに、辛亥革命110周年記念大会で演説した習国家主席が「台湾統一は必ず実現できる」とコメントしたことが物議を醸す反面、台湾総統は中国軍機による台湾の防空識別圏への相次ぐ進入に危機感を示したうえで、「一方的に中台の現状を変える行為を全力で阻止する」などと発言している。依然として緊迫した情勢に陥っている感も否めない。
対して後者は、米紙WSJは先週末に発表された米雇用統計について、「期待外れの内容だったが、11月からテーパリングを開始する条件を満たすもの」と論評。その一方、米商務長官は「サプライチェーンの混乱は来年も影響が続く見通し」、米財務長官は「債務上限引き上げは議会の責任、ただ最後は引き上げを決めると確信している」−−などとコメントしていたようで、一部で話題に。
<< 欧米市場の見通し >>
ドル/円の上昇について、起点をどこにとるかで異なるものの、仮に9月15日の109.11円を起点とすれば、1ヵ月弱のあいだに3.7円ほどの上昇をたどっていることになる。テクニカルポイントを次々と上抜けていることもあり、リスクはほぼ間違いなく上方向にバイアス。ただし今年初夏、4月半ば安値を起点としたドル高進行は期間こそ2ヵ月超ながら、価格的には4円強の上昇でピークアウトしている。さらなるドル高にも、そろそろ慎重さが求められる状況かもしれない。
米金利動向への関心が高いという状況が依然として続くなか、先週末に発表された米雇用統計は予想値を大きく下回ったものの、早期テーパリングの後退観測などはとくに聞かれていない。また、岸田首相が週末に「株式譲渡益など金融所得課税の見直しは当面は考えていない」と発言したが、金融市場では依然として疑心暗鬼の向きも多く、こちらも引き続き円売りに寄与している面を否めないだろう。いずれにしても、足もとは円の支援要因が少なく、調整を除けば円高へもなかなか振れにくいと言わざるを得ない。
テクニカルに見た場合、ドル/円は本日東京時間に年初来高値を大きく更新。112.85円近くまで値を上げ、113円台乗せも現実的な上値メドとして意識されてきた。
ちなみに、次の明確なテクニカルポイントとなると113円台には存在せず、114円半ばや114.70円レベルなどになる。さすがに、一足飛びにそれら水準へと達するとは思われないが、予想以上に速いスピードでドル高が進行する可能性も否定できない。
材料的に見た場合、中長期的には「恒大リスク」をはじめ次々に問題が発覚する「中国情勢」のほか、すでに総選挙後の経済対策へ関心が移行しつつある感も強い「日本の政局」、「新型コロナ関連」−−などが注視されている。
一方、本日は「コロンブスデー」ということで、米経済指標の発表などはとくになし。NY債券市場が休場となるうえ、為替も実質的には開店休業状態か。ただ、IMFの年次総会など実施されるいくつかの国際会議ならびに出席者の発言には一応要注意。
そんな本日欧米時間のドル/円予想レンジは112.20-113.20円。本日東京高値にあたる112.85円前後が目先の抵抗で、超えれば113円台乗せも。ポジションの偏りを考えないなら、一時的な青天井か。
対するドル安・円高方向は、112円半ばレベルからビッドが並び始めているようで、なかなか底堅そう。下回っても、112円台前半では下げ止まりそうで、111円台はやや遠のいた感がある。
ドル円日足
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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