来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)

ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。

来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)

『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』

〇今週のドル円、週明け早々に155.36まで上昇後、週間安値153.28まで急落
〇加藤財務相による牽制、プーチン大統領の核兵器の使用基準引き下げ等が背景
〇その後はロシアラブロフ外相の火消し発言等に週間高値155.88まで上昇するも反落
〇ロシア・ウクライナのミサイル発射の応酬や、米景気指標の不冴え等に154円台後半で越週
〇ユーロドル、週央にかけ1.0609まで反発するも、週末にかけ約2年ぶり安値1.0333まで急落
〇ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まり、欧州圏PMIの悪化等が重石に
〇ドル円、主要テクニカルポイントの上で推移、強い買いシグナルも成立、地合い極めて強い
〇トランプトレード本格化、円キャリートレード再開期待等もドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):153.00ー157.00、(EURUSD):1.0250−1.0550

今週のレビュー(11/18−11/22)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初154.41で寄り付いた後、(1)植田日銀総裁による「利上げタイミング、先行きの経済・物価・金融情勢次第」「毎回会合で経済・物価評価や見通しをアップデートし政策を判断する」との真新しさに欠ける発言(ややハト派寄りの発言)や、(2)上記1を背景とした円ショートの再構築(円安阻止を目的に一部でタカ派的なメッセージが出てくるのではないかとの警戒感が広がっていたが、結果的に踏み込んだ発言が出てこなかったため円キャリートレード再開)、(3)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支えとなり、週明け早々に一時155.36まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)加藤財務相による「為替動向、行き過ぎた動きには適切な対応を取る」「非常に緊迫感を持って為替の動きを見守っている」とのやや強めのトーンでの円安牽制発言や、(5)米金利低下に伴うドル売り圧力、(6)上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り、(7)一部メディアによる「プーチン大統領が核兵器の使用基準について従来よりも引き下げることを承認した」との観測報道(リスク回避の円買い圧力)が重石となり、翌11/19にかけて、週間安値153.28まで急落しました。その後は、(8)急ピッチな下落に対する反動買いや、(9)ロシアのラブロフ外相による「ロシアの核ドクトリンは米国のものと変わらない」「核戦争を起こさないことがロシアの立場」との火消し発言、(10)国際原子力機関(IAEA)による「イランは、核兵器に必要な濃度に近い高濃縮ウランの生産を停止することに同意した」との発言を好感する形で、週間高値155.88まで上昇する場面も見られましたが、一巡後に伸び悩むと、

(11)ウクライナがロシア領内に向けて英国製巡航ミサイル・ストームシャドウを発射したとの観測報道や、(12)ロシアが大陸間弾道ミサイルのICBMを発射したとの観測報道、(13)上記11、12を背景とした地政学的リスク、(13)米金利低下に伴うドル売り圧力、(14)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「金利はさらに低下する可能性がある」とのハト派的な発言、(15)米11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果▲5.5、予想+8.0)の市場予想を下回る結果、(16)米10月景気先行指数(結果▲0.4%、予想▲0.3%)の市場予想を下回る結果、(17)本邦10月全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く(結果+2.3%、予想+2.2%)の市場予想を上回る結果が重石となり、本稿執筆時点(日本時間11/23午前2時30分現在)では、154.70前後での上値の重い展開が続いています。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0533で寄り付いた後、(1)急ピッチな下落に対する反動(自律反発)や、(2)ユーロ圏9月貿易収支(結果136億ユーロ黒字、予想77億ユーロ黒字)の市場予想を上回る結果、(3)米金利低下に伴うドル売り圧力が支えとなり、週央にかけて、週間高値1.0609まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まりや、(5)ドイツ10月生産者物価指数(結果▲1.1%、予想▲1.0%)の市場予想を下回る結果、(6)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBは制約的な金融政策を解除し続けるべき」とのハト派的な発言、(7)ギリシャ中銀ストゥルナラス総裁による「2%に到達するまで会合ごとに利下げを継続すべき」とのハト派的な発言、(8)ユーロ圏11月消費者信頼感速報値(結果▲13.7、予想▲12.4)の市場予想を下回る結果、(9)フランス11月製造業PMI速報値(結果43.2、予想44.5)の市場予想を下回る結果、(10)フランス11月非製造業PMI速報値(結果45.7、予想49.0)の市場予想を下回る結果、(11)ドイツ11月非製造業PMI速報値(結果49.4、予想51.7)の市場予想を下回る結果、(12)ユーロ圏11月製造業PMI速報値(結果45.2、予想46.0)の市場予想を下回る結果、(13)ユーロ圏11月非製造業PMI速報値(結果49.2、予想51.6)の市場予想を下回る結果、

(14)次回ECB理事会での大幅利下げ観測、(15)直近安値下方ブレイクに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買いが重石となり、週末にかけて、約2年ぶり安値となる1.0333(2022/11/30以来の安値圏)まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/23午前2時30分現在)では、1.0410前後で推移しております。尚、今週発表されたユーロ圏第3四半期妥結賃金(結果+5.42%、前回+3.54%)は前期比で伸び率が加速する結果となりましたが、ユーロ買いでの反応は限られました。

来週の見通し(11/25−11/29)

<ドル円相場>
ドル円は11/15に記録した約3カ月半ぶり高値156.75(7/23以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「21日線と90日線のゴールデンクロス」「21日線と200日線のゴールデンクロス」「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)トリプルレッド実現に伴うトランプトレードの本格化期待(米国のインフレ懸念再燃→米金利上昇・米ドル買い)や、(2)日米金利差に着目した円キャリートレードの再開期待など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクは、「リスク回避の円買い」と「有事のドル買い」が同時並行で生じることから、一方的なドル円下落には繋がりにくいと考えられます。加えて、政府・日銀による「為替介入」や「12月利上げ観測」についても、日本株の急落を招くリスクを孕んでいるため、余程切迫感に駆られる円安局面(本年7/3に記録した高値161.99を超えてくるような強烈な円安局面)が到来しない限り、「為替介入」も「追加利上げ」も見送られる公算が大きいと判断できます。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの再開をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米国側で米FOMC議事要旨、米第3四半期GDP改定値、米10月PCEデフレータ、日本側で11月東京都区部消費者物価指数などの重要イベントが予定されているものの、11/28以降に米感謝祭(Thanksgiving)を控える中、市場参加者の減少が見込まれるため、余程大きな材料が出てこない限り、ドル円は比較的静かな1週間となりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):153.50ー157.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/25に記録した年初来高値1.1214をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約2年ぶり安値となる1.0333(一昨年11/30以来の安値圏)まで急落しました。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲下限、ボリンジャーミッドバンド)の下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「21日線と200日線のデッドクロス」「EMAベースの弱気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(トランプ政権による関税政策が欧州経済に悪影響を及ぼすとの警戒感→今週発表されたユーロ圏各国のPMI速報値は大幅に悪化)や、(2)欧州政治の先行き不透明感(フランスやドイツを巡る政局不透明感の高まり)、(3)ECBによる根強い利下げ観測(欧州経済の下振れ懸念を背景に来月予定されているECB理事会で50bpの大幅利下げに踏み切るとの警戒感)、(4)トランプトレードの本格化懸念(米金利上昇・米ドル買い)、(5)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

来週予定されているドイツ11月IFO景況感指数や、欧州委員会景況感指数が市場予想を下回る場合には、欧州経済の先行き不安→ECBによる追加利下げ観測→欧州債利回り低下→ユーロ売りの経路で、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(今年中にパリティを割り込むシナリオを想定)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0250−1.0550

注:ポイント要約は編集部

『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』

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