リスク回避的円高とユーロ安等によるドル高で板挟み
〇先週のドル円、22日未明安値153.90と22日午前安値153.97を買われて底固さを見せる
〇22日夜は米PMIが良好だったことで155円台に到達し、その後も155円弱の水準を維持
〇トランプ政権発足後のインフレ再燃懸念で、米国の利下げペースが鈍化する可能性がドル円の上昇要因
〇米長期金利は高止まり、米主要株価指数は上昇、トランプ政権発足後の減税や規制緩和等への期待感強い
〇155.20超えからは20日夜高値155.88試しとし、高値更新からは11/15高値156.74を目指す上昇を想定
〇153.80割れからは11/19安値153.2円試し、割れた場合152円台中盤への下落を想定
【概況】
ドル円は11月19日夕安値153.28円から20日夜高値155.88円まで戻し、その後の反落で21日深夜に154円を割り込んだが、22日未明安値153.90円と22日午前安値153.97円を買われて底固さを見せ、22日夕刻に相次いで発表された仏独欧英のPMI悪化によるユーロやポンドの急落でドル高優勢となった事を支えにジリ高で推移し、22日夜は米PMIが良好だったことで155円台に到達し、その後も155円弱の水準を維持した。
米大統領選でのトランプ氏勝利による「トランプ・ラリー」としてのドル買い円売りが一巡したことで11月15日高値156.74円から11月19日安値153.28円まで失速した後は、153円台へ下げたところを買われつつ155円台後半で売られるやや乱調な騰落を続けている。
トランプ政権発足後のインフレ再燃懸念で米国の利下げペースが鈍化して利下げサイクルが短期に終わる可能性が浮上していることがドル円の上昇要因であり、概ね米10年債利回りの上昇基調と相関した動きを続けているが、一方では円安の進行に対する政府・日銀によるけん制と12月の日銀追加利上げの可能性が払拭できないことがドル円の上値を重くしている。ウクライナ情勢の緊迫感もリスク回避的な円買い、スイスフラン買い、ユーロ売り等の反応を招いているため、強弱材料の板挟みから上下いずれへ抜けだすのか方向感を探る局面と思われる。
【欧米PMIの差によるドル高優勢の流れ】
11月22日に発表された11月のユーロ圏総合PMI速報値は48.1となり10月の50.0から大幅に低下して10か月振り低水準となった。サービス業PMIは51.6から49.2へ、製造業PMIは46.0から45.2へ悪化した。
仏11月PMIは製造業が10月の44.5から43.2へ悪化、サービス業が49.2から45.7へ大幅に悪化した。独PMIは製造業が43.0から43.2へ若干改善したものの50を大幅に下回り、サービス業は51.6から49.4へ悪化した。
英11月PMIも製造業が49.9から48.6へ悪化、サービス業も52.0から50.0へ悪化した。
一方で 米S&Pグローバルが発表した11月の米総合PMI速報値は55.3となり前月の54.1及び市場予想の54.3を上回って2022年4月以来31カ月ぶり高水準となった。製造業は48.5から48.8へ若干の改善だったが、サービス業は55.0から57.0へ顕著に上昇して2022年3月以来の高水準だった。
欧州の景気低迷感と米景気の堅調さの対比がドル高優勢としている。
【米10年債は高止まりで持ち合い、米主要株価指数は上昇】
11月22日の米長期債利回りは概ね小幅低下した。トランプラリーによる上昇一服の様相で高止まりしている。
10年債利回りは前日比0.02%低下の4.40%で終了、11月15日に4.51%まで大幅上昇してから19日に一時4.34%まで低下した後は4.40%を挟んでほぼ横ばいの推移を続けている。30年債利回りは前日比0.01%低下の4.59%で終了、11月7日に4.68%へ上昇後に4.34%までいったん急低下し、その後の反騰で18日に4.68%を再び付けた後は4.60%を挟んだ揉み合いで推移している。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.03%上昇の4.38%としたが、15日の4.38%から19日に4.21%までいったん下げてから3連騰で15日の水準へ戻し、日足終値ベースでは9月25日の3.51%以降の最高とした。
12月FOMC(12月17−18日開催)における0.25%利下げ期待度は5割強だが、利下げ見送り確率は4割を超えてきており、仮に12月に利下げしても1月は見送られると市場は見ている。
一方で22日の米国主要株価指数は総じて上昇した。ウクライナ情勢への懸念や米国の利下げペースが鈍化するとの見方が重石ではあるが、それよりもトランプ政権発足後の法人減税や規制緩和等への期待感が強い印象だ。
NYダウは前日比426.16ドル高と大幅上昇して3連騰となり、ナスダック総合指数も31.23ポイント高で2連騰、S&P500指数は20.63ポイント高で18日から5連騰とした。
【中勢の下値支持線、26日移動平均を維持できるか試される】
ドル円の日足チャートでは、26日移動平均や一目均衡表の26日基準線が9月16日安値を起点とした上昇トレンドの下値支持線であり、今のところは両線を上回った状況を維持しているが、11月15日高値と11月19日安値までのレンジ内での揉み合いを続けて戻り高値を切り下げる場合には両支持線割れを試す流れへ進みやすくなると注意する。
昨年の7月14日安値137.24円から11月13日高値151.90円への上昇時も26日移動平均や26日基準線が支持線として機能し、一時的に割り込んでも翌日に切り返したことで上昇トレンドを維持してきた。すでに7月3日高値161.94円から9月16日安値139.57円までの下げ幅22.37円に対して11月15日高値までの上昇幅17.17円で4分の3戻しを超えているため、26日移動平均や26日基準線を上回るか一時的に割り込んでも切り返すうちは上昇継続余地ありとし、11月15日高値を超える場合は市場介入や日銀の追加利上げ判断等を試しながら160円台回復へ向かうと考える。
ただし、26日移動平均及び26日基準線割れから続落する場合、特に日足陰線の連続でそれらを割り込む場合は昨年11月13日から12月28日安値140.24円への下落時に近い展開とみて、150円台を維持できるか試す流れへ進むと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、153.80円を下値支持線、155.20円を上値抵抗線とする。
(2)155.20円超えからは20日夜高値155.88円試しとし、高値更新からは11月15日高値156.74円を目指す上昇を想定する。20日高値を超えずに失速する場合は11月15日から20日への高値切り下がり基調が続くとみて、下落再開後には11月19日安値153.28円試しへ向かうとみる。
(3)153.80円割れからは11月19日安値153.28円試しとする。19日安値割れを回避して154円台へ戻す場合は、15日午前高値と19日夕安値を起点とした支持線フラットで上値抵抗線の切り下がるレンジ縮小型の三角持ち合いを形成する動きとし、持ち合い放れへのきっかけを探る展開でやや膠着した推移に入るとみる。
(4)11月19日安値割れからは152円台中盤(152.65円から152.35円)への下落を想定する。152.50円以下は反発注意とするが、26日移動平均や26日基準線割れによる下落感が強まるため、9月16日安値からの上昇一巡による下落期入りを疑い、先行きは150円を試しに向かう流れと考える。
【当面の予定】
11/25(月)
06:45 (NZ) 7-9月期 四半期小売売上高 前期比 (4‐6月 -1.2%、予想 -0.7%)
06:45 (NZ) 10月 貿易収支 (9月 -21.08億NZドル)
14:00 (日) 9月 景気先行指数CI・改定値 (速報 109.4)
14:00 (日) 9月 景気一致指数CI・改定値 (速報 115.7)
18:00 (独) 11月 IFO企業景況指数 (10月 86.5)
11/26(火)
08:50 (日) 10月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (9月 2.6%)
23:00 (米) 9月 FHFA住宅価格指数 前月比 (8月 0.3%)
23:00 (米) 9月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (8月 5.2%)
24:00 (米) 10月 新築住宅販売件数・年率換算 (9月 73.8万件、予想 72.4万件)
24:00 (米) 10月 新築住宅販売件数 前月比 (9月 4.1%、予想 -1.9%)
24:00 (米) 11月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (10月 108.7、予想 112.0)
24:00 (米) 11月 リッチモンド連銀製造業指数 (10月 -14)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨・11月6日-7日分
11/27(水)
09:30 (豪) 10月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 2.1%、予想 2.5%)
10:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 4.75%、予想 4.25%)
16:00 (独) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 -18.3)
22:30 (米) 7-9月期 GDP・改定値 前期比年率 (速報 2.8%、予想 2.8%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費・改定値 前期比年率 (速報 3.7%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE・改定値 前期比年率 (速報 2.2%)
22:30 (米) 10月 卸売在庫 前月比 (9月 -0.1%)
22:30 (米) 10月 耐久財受注 前月比 (9月 -0.8%、予想 0.5%)
22:30 (米) 10月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (9月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.3万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 190.8万人)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 7.4%)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前年同月比 (9月 2.2%)
24:00 (米) 10月 個人所得 前月比 (9月 0.3%、予想 0.3%)
24:00 (米) 10月 PCE(個人消費支出) 前月比 (9月 0.5%、予想 0.4%)
24:00 (米) 10月 PCEデフレーター 前年同月比 (9月 2.1%、予想 2.3%)
24:00 (米) 10月 コアPCEデフレーター(食品・エネルギー除く) 前月比 (9月 0.3%、予想 0.3%)
24:00 (米) 10月 コアPCEデフレーター(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (9月 2.7%、予想 2.8%)
24:30 (米) エネルギー省EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省7年債入札
11/28(木)
休場 米国(感謝祭) 株式・債券市場
09:00 (NZ) 11月 ANZ企業信頼感 (10月 65.7)
09:30 (豪) 7-9月期 民間設備投資 前期比 (4‐6月 -2.2%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 11月 消費者信頼感・確報値 (速報 -13.7)
19:00 (欧) 11月 経済信頼感 (10月 95.6)
22:00 (独) 11月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (10月 0.4%)
22:00 (独) 11月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (10月 2.0%)
11/29(金)
米国(ブラックフライデー) 株式・債券市場は短縮取引
08:30 (日) 10月 失業率 (9月 2.4%、予想 2.5%)
08:30 (日) 11月 東京区部CPI(生鮮食料品除く) 前年同月比 (10月 1.8%、予想 2.0%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前月比 (9月 1.6%、予想 3.9%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (9月 -2.6%、予想 1.5%)
08:50 (日) 10月 小売業販売額 前年同月比 (9月 0.5%、予想 2.0%)
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -0.6%、予想 -1.9%)
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 36.2、予想 36.5)
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 6.1%)
19:00 (欧) 11月 HICP(調和消費者物価指数)速報値 前年同月比 (10月 2.0%)
19:00 (欧) 11月 コアHICP速報値 前年同月比 (10月 2.7%)
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景気指数 (10月 41.6)
オーダー/ポジション状況
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