Brexit レポート(山中さん第3回「投票後の相場」)

英国がEUに残留、離脱のそれぞれの場合、為替レートはどの程度動くのでしょうか?

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Brexit レポート(山中さん第3回「投票後の相場」)

「国民投票でどれだけ動く?」

直近のブックメーカーのオッズと世論調査

今週は速報でもお知らせしましたが、まずは現在のブックメーカーのオッズから。
残留 1/2 =1.5倍
離脱 13/8 =2.6倍

だいぶ離脱のオッズが下がってきています。それでも、まだ残留が優勢となっていて、このあたりは世論調査の結果とは異なるところです。私が追っているICMの13日に発表された世論調査の結果では、残留支持44%、離脱支持49%、未定7%となっていて離脱支持が優勢ですが、浮動票と考えられる未定7%が仮に残留支持に回れば、僅差で残留となります。

世論調査とブックメーカーの優勢が逆のわけは未定部分の扱い?

世論調査は調査会社によって数字は異なるものの大半は離脱支持が優勢となっているのですが、ブックメーカーのオッズは未定の部分が最終的には残留に回るであろうとの見方から残留のオッズのほうが低い結果になっていると考えられます。

投票後の相場の目安の考え方

国民投票の23日まで残留と離脱の思惑が交錯し、全ての金融市場に大きな影響を与えることとなりますが、仮に離脱となった場合でも実際の離脱までには時間がかかります。離脱の交渉期限は2018年6月と2年先で、実際の交渉は総選挙の行われる2020年5月までと4年間かかるとの見方となっています。

つまり、残留=ポンド買い、離脱=ポンド売りという短期的な動きは当然出てきますが、残留が決まる場合は、最近ほどブレグジットに対して不安が無かった昨年からの動きの中でだいたいの目安を考えることが出来ます。ポンドドルとポンド円のチャートをご覧ください。

「国民投票でどれだけ動く?」

         上段がポンドドル、下段がポンド円です。

英国がEUに残留する場合

ポンドドルについては最初の節目は5月高値の1.4770、そして11月安値の1.4994を割り込んで以降下降トレンドが強まったことを考えると大台の1.50という水準があります。短期的な値動きとして前者の1.4770レベル、その後市場が落ち着きを取り戻した場合のターゲットとして1.50の大台という水準を残留決定時のターゲットと考えてよいでしょう。

いっぽうポンド円は、ドル円単体での円高の動きもあって大きく値を崩しています。こちらは短期的にも中期的にも5月高値162.89という水準がターゲットとなります。

英国がEUから離脱する場合(過去の「大相場」の動きを参考に)

さて、問題は離脱が決まった場合です。実際の交渉を見据えると不透明な要因が多く、投票直後、また中期的にどの程度動く可能性があるのかは過去の事例から想像せざるを得ません。そこで、過去のポンドを含め、いわゆる大相場と言える値動きについていくつか見てみることとしましょう。

スイスフランショック時の為替動き16-18%

まず、1973年に変動相場制に移行後、1日で最も大きな動きを見せたのは昨年のスイスフランです。昨年1月15日のユーロスイスの防衛撤回によるスイスフラン急騰は記憶に新しいところですが、ドルスイスが1.0221→0.8585と1636ポイントの下げ、割合にして約16%のスイスフラン急騰。スイス円が114.98→135.37と20.39円の上げ、割合にして約18%のスイスフラン急騰です。

実際には各社でレートが消えたため、それぞれのスイスフラン高値はまったく異なる状態でしたが、このスイスフランショックが金融機関やFX業者に与えた影響は甚大で、それ以降はどこもリスク許容度が低下し、急激な動きに対して抵抗力が弱くなったという印象があります。

ソロス危機(ポンド危機)時のポンドの動き9.5%

さすがに、ポンドの流動性はスイスフランを大きく上回りますので、ここまででは無いにしても、過去にはポンドショックというものがありました。これは1992年にポンドが高すぎるとジョージ・ソロスがポンドを売り浴びせ、当時ERM(European Rate Mechanism)という管理変動相場(1日の変動幅が±2.25%)がありましたが、わずか1日でその幅を下回り、2日後にはERMを脱退し完全変動相場制となりました。

実際のレートで見てみると、9月15日のポンド高値は1.9100、その日の安値は1.8610と490ポイントの下げ、割合にして2.57%と管理変動相場の変動幅を超えました。ERMを脱退した17日の安値は1.7280、15日高値から1820ポイントの下げ、割合にして9.5%です。その後、1992年の年末にはポンドは1.50を割り込み1.4975の安値を付けました。これは9月15日から考えると4125ポイントの下げ、割合にして約22%です。

今回離脱が決まると為替の変動は短期10%、中期20%程度か

個人的には、スイスフランショックよりは変動幅が小さいであろうものの、1992年のポンドショック程度の下げ幅はあり得るのではないか、つまり短期的に10%程度の下落、中期的には20%の下落は考えてもよいのではないかという見方です。仮に本日のポンドの水準(1.4257)から考えると、それぞれ1.28台、1.14台と想像が困難な水準ではありますが、ブレグジットの影響として離脱の場合のひとつの目安として考えておいて良い水準です。

流動性低下に注意

来週に入ると、急激に流動性が低下する可能性がありますので、ポンドの取引には十分な注意をしてください。次回は1週間後、国民投票の結果が出た24日に振り返ってみることにしましょう。

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