今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、17・18日のEUサミットに向け英国とEUとの合意がほぼ確実との思惑からポンド買いに追随してのユーロ買いとなりました。火曜以降は安値高値とも切り上げる上昇相場となり、火曜安値から金曜高値(=終値)まで180pipsほどの上昇を見せる週となりました。
先週初の段階では英国政府とEUとの間で修正合意となったとしても、果たして英国議会ではそれが通るのかという懸念が示されていました。金曜時点では過半数を取れないという見方がある一方で、ジョンソン首相は過半数を抑えたといった観測発言も出て楽観的な週末クローズでした。結局、土曜の英国議会では懸念通りとなり、そもそも関連法案が整備するまで採決延期ということとなりました。その結果を受けジョンソン首相はEUに対して来年1月末までの離脱延期を要請しています。
しかし、こうした事態はEU側も想定はしていたでしょうから、英国の要請に対してEUは協議することにはなるものの、フランスのマクロン大統領のように延期を認める必要はないと切り捨てる発言もあり、英国のブレグジット問題は再び不透明な状況へと逆戻りです。英国とEUとの合意は済んでいるため、ジョンソン首相は10月末までの離脱を目指して議会を説得する姿勢を崩していませんが、これまでの経緯を見てもそう簡単に議会で可決されるとは思えません。
こうした事態を受け週明けのポンド相場は朝方に金曜の水準から100pipsほど下げた後に買いも出て、欧州市場待ちといった状況です。先週半ばから週明けまでの動きを考えると、英国とEUとの間で合意がもたれたという点は素直にポジティブで欧州通貨買いはわかるのですが、週明け早朝の下げ以降の動きは思った以上に落ちついていて、ブレグジットに対しての懸念を感じていない様子です。
冷静に考えると、与党保守党は過半数を割り込んでいますし、閣外協力の北アイルランドDUPも反対に回っているため、保守党以外の票を切り崩さないといけません。メイ前首相以降、英国議会では数の論理からして当然ではあるものの英国政府保守党の議案はことごとく否決されてきています。今回も離脱関連法案整備までは良いとして、英国とEUとの間の合意案が英国議会で可決されるかどうかはまったく不透明な状況ですし、仮に来年1月まで期限を延期しても3か月の間に事態が好転する保証はありません。最悪のケースではEU側が延期を認めず合意無き離脱の可能性さえありますので、こうしたことを考えると、現時点でのポンドの水準も、それに引っ張られてきたユーロの水準も高いのではないか、個人的にはそのように考えています。
他には今週は欧州主要国のPMI速報値、ECB理事会とその後のドラギ総裁会見が注目材料となりますが、PMIでは特にドイツの数字に改善が見られるのか引き続き弱い状況なのかを見極めることとなるでしょう。ただ、弱いとなるとドイツの財政出動が見えてくることもあって、経済指標による相場の振れは一時的なものと留まると見ています。またECB理事会は既に包括的な追加緩和を実施した後ですし、ドラギ総裁にとっては今週のECB理事会が最後となって、10月末に8年間の任期終了です。今回の理事会では特に材料となるような動きは出ないと考えられます。
テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートを見てみましょう。
6月高値からの下降チャンネルが終わり上昇トレンドに転じたことは先週確認しましたが、現時点で明確に引けるのはピンクの太線で示したサポートライン程度です。そしてこのサポートラインとローソク足との位置を見ると、先週のブレグジット期待で上昇スピードが強まり、いったん上値のターゲットを探す段階にあると考えられます。
中期的な観点から6月高値と10月安値のフィボナッチ・リトレースメントを考えると既に半値戻しは金曜に達成し、次のターゲットとして61.8%戻しの1.1209という水準をテクニカルには意識する流れです。しかし、材料的にはここからの一段高を考えることは困難で、経済指標等で一時的に上ヒゲが試す可能性はあるものの、1.12台を見るほどの勢いがあるとは思えず、1.11台後半では上値が重たくなりやすいと見ています。
サポートについては、今週はサポートラインが本日時点で1.10台前半、週末には1.10台後半へと比較的急角度で上がってきます。今週は1.1050レベルをサポートに1.1190レベルをレジスタンスとする流れを考えておきます。
今週のコラム
今週はポンドドルの週足チャートを見ます。
以前とりあげた時のライン等をそのまま残してありますが、昨年高値と今年高値を結んだレジスタンスは先週の上げで上抜けています。また、昨年高値と今年安値の38.2%戻しも先週の急上昇で達成しました。英国議会で合意案が可決されていれば一段高の半値戻しも視野に入れる流れであったと思いますが、結果は上述の通りですから、これまでの楽観的な思惑で動いてきたポジションの調整が入ってもおかしくないどころか、その方が自然に思えます。
高値トライはいったんお預けで、現状はどの水準まで押しが入るのかを考えるべきだと思います。
その場合は抜けたレジスタンスはサポートとなりますので、今後の展開次第ではラインの位置する1.27水準まで調整の売りを想定しておく必要がありそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
10月21日(月)
15:00 ドイツ9月PPI
24:40 デギンドスECB副総裁講演
10月22日(火)
**:** 東京市場休場
10月23日(水)
15:45 フランス10月企業景況感
23:00 ユーロ圏10月消費者信頼感速報値
10月24日(木)
16:15 フランス10月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ10月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏10月製造業・サービス業PMI速報値
20:45 ECB理事会
21:30 ドラギECB総裁会見
10月25日(金)
15:00 ドイツ11月GFK消費者信頼感
15:45 フランス9月PPI
17:00 ドイツ10月ifo企業景況感
23:30 フランス中銀総裁講演
10月27日(日)
**:** 欧州冬時間移行
**:** ドイツ地方選
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
10月14日(月)
東京市場とNY市場が休場となる中、EUサミットに向けブレグジット案が英国議会で通るかといった懸念も示されポンドはNY市場までじり安となりました。しかし、ユーロドルは一時的な上下の動きは見られたものの、方向感無くNYの引けまでもみあいを続けました。
10月15日(火)
ユーロドルは、欧州市場序盤に改めて英国とEUの離脱担当相が合意に向け協議が前進しているとの発言にポンドが一段高、その動きにつられてユーロ高となったものの、その後はユーロポンドでのポンド高がユーロを押し下げる展開。しかし、NY市場に入り改めてポンド買いが強まる中でユーロも徐々に水準を戻し、米国株高のリスクオンによるユーロ円買いも入ったことからユーロドルも高値圏に戻し、そのままもみあっての引けとなりました。
10月16日(水)
ユーロドルは、東京市場では動かず、欧州市場序盤にドイツの財政出動検討のニュースに一時的に買われたもののすぐに元の水準に押してNY市場入り。ジョンソン首相が閣僚に対して合意が近いと伝えたことからポンド上昇ととものユーロも上昇、1.1086レベルの高値をつけ高値圏での引けとなりました。
10月17日(木)
ユーロドルは、欧州市場序盤までは様子見姿勢が強まりほとんど動意のない展開となっていましたが、欧州市場に入り早い段階でブレグジット合意のニュースが流れポンド高に引っ張られてのユーロ高となりました。その後、北アイルランドの閣外協力政党DUPからは支持しないとの発言がありポンドは下げて行って来い。しかしポンド買いも根強く再びじり高へと戻し、ユーロドルは高値圏で膠着状態での引けとなりました。
10月18日(金)
ユーロドルは東京市場ではまったく動きが見られませんでしたが、欧州市場では前日高値を上抜けた水準でストップ買いが見られました。その後のNY市場ではダウの下げによるドル売りの動きとなり、ユーロは1.1172レベルまで高値を切り上げそのまま高値引けとなりました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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