今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、週初のドイツ製造業PMIの予想以上の悪さがユーロ売りのきっかけとなりました。前回の43.5から一段と悪化し41.4と2009年以来10年ぶりの低い数字となり、同時に発表されたサービス業PMIも52.5と予想以上の弱さとなりました。製造業からサービス業へと景気減速の波が及んできていることになりますが、これらの結果を受け、ドイツの長期金利は低下、それがユーロ売りへとつながっての週明け相場となりました。
また英国では最高裁の判断を受け議会が再開しましたが、ジョンソン首相は合意の有無に関係なく10月末の離脱を目指すいっぽうで、議会は合意無き離脱はしないという、閉会前と何ら変わらない立場で対立しています。この変化の無さに嫌気したポンド売りもユーロの上値を抑える結果となり、ユーロドルは金曜には1.0904レベルへと年初来安値を更新することとなりました。
今週は欧州主要国の製造業PMI確報値が火曜に、サービス業PMI確報値が金曜に発表されますが、先週月曜の速報値から改善するのか悪化するのか、もし悪化して下方修正されるようなことがあればユーロ売りにつながりやすく、特にドイツの数字が注目されます。
また、英国とEUとの協議進展がどうなるかも気になるところです。英国内の状態は変わらず上記の通りですが、英国が合意ある離脱をするために必要な代替案、つまりバックストップ条項の削除についてEU側がどのように考えているのか、少なくとも英国側はその一点が解決されれば合意ある離脱となり、ジョンソン首相は手応えを感じている様子です。これは8月のジョンソン・メルケル首脳会談で代替案に対してポジティブな意見がドイツから出たことが大きいでしょう。
しかし、当事者のアイルランドからは英国の主張は理不尽であるという発言がありましたし、ユンケル委員長も代替案に関してはEU内でどうなるかわからないといった発言をしていますので、全会一致での決定を行うEU内での意見調整が10月17・18日のEUサミット(欧州理事会)までに進むかどうか次第と言えます。
おそらくギリギリまで意見がまとまらないと思いますが、EU側の意見がまとまれば10月末に合意ある離脱へと進みそうですが、まとまらない場合は離脱延期、あるいは合意無き離脱、現状ではどれも3分の1ずつの可能性がありそうに思えます。当面はポンドの動きがユーロに影響を与える流れは続きそうです。
他には米国雇用統計もありますが、個人的には一時的な振れにつながることはあってもドル円週報にも書いた通りで材料視はしていません。どちらかと言えば、米欧の通商協議もこれからですから、同時刻に発表される貿易収支の方を気にした方が良いと思っています。
テクニカルな点について日足チャートを見てみます。
ユーロ日足
これまで同様6月高値と8月高値を結んだレジスタンスライン(ピンクの太線)がよく効いていて、このラインと平行に引いたライン(ピンクの細線)との間での推移を継続中という見方でよさそうです。9月3度目のトライで1.0927を下抜けた割には下押しが弱かったこと、ただその後も戻りは鈍いことを考えると、これもこれまで同様に少しずつ下値を切り下げる展開を続けそうであると考えられます。
そこで、直近高値の前の高値(8月後半)を起点に、9月最初の安値、その後の9月高値を3点とした逆N波動(ピンク)を考えると、フィボナッチ・エクスパンションで100%エクスパンションが1.0872、127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションが1.0807(どちらも青のターゲット)となっていて、今週は少なくとも前者、材料次第では後者の下げもありうるという見方でいます。また上値に関しては1.10の大台が心理的にも強いレジスタンスです。
今週は下は2つのターゲットの間を目途に、1.0850レベルをサポートに、1.0980レベルをレジスタンスとする流れを見ておきたいと思います。
今週のコラム
今週はポンドの日足チャートを見ます。
ポンド/ドル日足
9月初めに安値をつけた後は、それまでの下降トレンドから上昇トレンドに転じたということを以前のポンドの見通しで書きましたが、英国議会再開後の下げで上昇トレンドにもまた終止符を打ったチャートとなってきました。
ユーロも上値が重たい流れを続けると考える以上に、ポンドは離脱期限まであと1か月いよいよ大詰めとなっています。しかも代替案による合意への時間はかかりそうですし、合意無き離脱の可能性もあることを考えると、当面は下値を探りやすくなります。
9月安値と高値との61.8%押しとなり1.2197を次のターゲットとし、状況次第では78.6%(61.8%の平方根)押しとなる1.2092も視野に入れておくべきでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
9月30日(月)
16:55 ドイツ9月雇用統計
17:30 英国4〜6月期GDP改定値
17:30 英国4〜6月期経常収支
18:00 ユーロ圏8月失業率
21:00 ドイツ9月CPI速報値
10月1日(火)
10:00 フィンランド中銀総裁講演
16:50 フランス9月製造業PMI
16:55 ドイツ9月製造業PMI
17:00 ユーロ圏9月製造業PMI
17:30 英国9月製造業PMI
18:00 ユーロ圏9月CPI速報値
26:30 ドイツ連銀総裁講演
10月2日(水)
17:30 英国9月建設業PMI
10月3日(木)
16:45 デギンドスECB副総裁講演
16:50 フランス9月サービス業PMI
16:55 ドイツ9月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏9月サービス業PMI
17:00 フィンランド中銀総裁講演
17:30 英国9月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏8月PPI、小売売上高
10月4日(金)
21:30 米国9月雇用統計
27:00 パウエルFRB議長講演
10月6日(日)
**:** ポルトガル総選挙
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時からNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
9月23日(月)
ユーロドルは欧州市場序盤に発表されたフランスとドイツのPMI速報値が予想よりも弱かったことをきっかけにユーロドルは1.0966レベル、ユーロ円も117.76レベルまで下値を広げました。特にドイツ製造業の弱さが注目され、ブレグジットに関してもEUの首席交渉官がバックストップ削除に否定的な見解を示したこともユーロの上値を抑えました。その後NYの引けにかけては、ポジション調整の買い戻しも出てじり高での引けとなりました。
9月24日(火)
ユーロドルは、欧州市場序盤までは動意薄で静かな展開が続きました。その後、英国最高裁がジョンソン首相の議会閉会を違法と判断し、本日から議会が再開することとなったことがポンド買いの材料となり、その動きがユーロにも波及、NY市場のドル売りの動きも加わって1.1024レベルまで上昇後に高値圏での引けとなりました。
9月25日(水)
ユーロドルは英国議会再開後もこれまでと何ら変化が見られないことを悪材料としてのポンド売り、その影響がユーロ売りとなりましたが、月曜のドイツの指標で下げた後に火曜で買いが一巡、あらためて1.0927トライを目指す流れが感じられました。材料的には目立ったものはありませんでしたが、テクニカルには短期下降トレンドを継続しやすい地合いとり、NY市場では1.0938レベルまで水準を下げ安値圏で引けました。
9月26日(木)
ユーロドルは、東京前場は買いが先行したものの上値は重く欧州市場の序盤には今月3度目のトライで1.0927レベルを下抜けました。しかし、にわかショートが多かったこともありその後は1.0967まで反発、NY市場後場には改めて売りが強まり1.0909レベルと2017年5月以来の安値をつけ若干戻しての引けとなりました。
9月27日(金)
ユーロドルは東京市場では上値が重く、一時1.0904レベルの安値をつけました。欧州市場序盤にも売りが強まる場面が見られましたが、東京前場の安値はトライしきれずじり高。その後ECBのエコノミストが欧州景気に対して強気の見方を示したこともあって上昇に転じ、NY市場では1.0959レベルまで水準を切り上げました。その後、引けにかけては高値圏でもみあいのまま引けました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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