Brexit レポートBrexit レポート(山中さん第二回「その他の離脱指標」)
世論調査とオッズは離脱支持の増加
まずは1回目に書いた世論調査のその後とブックメーカーのオッズの変化から。
最新の6月7日のネット調査の結果は以下のようになっています。カッコ内は、前回5月31日からの変化です。
残留支持=43%(−1) 離脱支持=48%(+1) 未定=9%(±0)
未定を除いて計算すると残留47%(−1)に対して離脱53%(+1)とこちらもそれぞれ1%ずつ離脱支持が増えています。
ブックメーカーのオッズ(6月9日現在)は以下の通りです。フラクショナル表示の意味は前回の記事をご覧ください。
残留 3/10 =1.30倍
離脱 11/4 =3.75倍
と前週から変化はありません。ベットしている人の割合は残留に6割、離脱に4割といったところのようです。
離脱支持増加でユーロ売りポンド買いも
さて、阪谷さんの第2回の記事ではブレグジットの影響について書かれています。これは一般的に言われていることがまとめられていますが、大きくはポンドの下落、英国経済への長期的な影響といった点に触れています。
しかし、英国のEUからの離脱は英国のみならずEUに与える影響も大きく、昨日の海外市場でユーロが売られた理由は英国の離脱によるEU圏経済への影響という説明がなされています。実際にユーロポンドの動きをチャートで見ていただいてもわかりますが、昨日はユーロ売りポンド買いの動きとなりました。
ただ、冷静に考えると少なくとも短期的な市場の反応は、英国の離脱は英国にとっての悪材料とみなされる可能性が高いと言えます。
そこで、世論調査の結果とユーロポンドの動きについて相関が見られるのかどうかを試しに前回表示したDI(残留支持から離脱支持を引いた値。プラスは、残留>離脱を示し、マイナスは、残留<離脱を示します)を並べて表示してみることとしました。
世論調査の結果とユーロポンドの動き
下部はDI
(残留支持から離脱支持を引いた値。プラスは、残留>離脱を示し、マイナスは、残留<離脱を示します)
Brexitの影響はポンドとユーロどちらが大きい?
こうして見ると、世論調査の結果では離脱支持が着実に増えているにもかかわらず、4月7日のユーロ高値(ポンド安値)以降は傾向としてユーロが売られてポンドが買われています。ただ、直近のところでは再びユーロ買い(ポンド売り)となっていることを考えると、まさに英国対EUという構図では、どちらにとってダメージが大きいのか、為替市場の参加者には迷いが見られるということではないかと思います。
しかし、先に書いた通りで短期的な影響は英国にとってのネガティブ要因であり、仮に離脱となった場合には、ポンドは全ての通貨に対して売られる可能性が高いと考えられます。
ブレグジット・インデックス
他にも多くの分野で影響甚大であることから、いくつかの会社がブレグジット・インデックスなるものを考案し提示しています。
例として、トムソンロイターでは、英国EU間の輸送量、貿易収支、フランスワインとドイツ車の輸入量、ユーロポンドの水準、亡命希望者数、英国消費者信頼感、日々のヘッドライン数、ブックメーカーの賭け率と、いった複数の数字から英国の離脱可能性を出そうとしていたことがあります。内容的には真面目に出しているのか、半分ジョークなのかは判断に苦しみます。同じようなものは他にも見られますが、世論調査よりもブックメーカーの予想に近いものが多いと考えています。
ブレグジット・インデックスとしてのDAX−FT倍率
私も離脱の可能性は低いのではないかと思っている派ですが、何か簡単に参考になるようなものは無いかと考えていたところ、経済と言えば株価が重要ではないか、またEUの主要株価指数であるDAX(ドイツ)と英国の代表的株価指数であるFT100の比較はどうかと思い、DAX−FT倍率を計算してみました。株価指数の世界でNT倍率(日経平均株価とTOPIXとの比率)のように株価指数どうしの比率を計算することは一般的です。また主要株価指数は経済状況に対する思惑を敏感に織り込みますので、簡易的なブレグジット・インデックス代わりになるのではないかと考えます。
もちろん、指数に採用されている銘柄の英国とEUとの間の影響までは考慮できませんし、採用銘柄数も違うのですが、見てみましょう。先ほどのユーロポンドと同期間の株価指数で上段がDAX、下段がFT100となっています
DAXとFT100(上段がDAX、下段がFT100)
DAX/FT
仮に昨日のそれぞれの終値で計算すると10088.87÷6231.8=1.619倍となります。今度はこの倍率チャートをメインにして、今年の年初(1月4日)の倍率との比較をサブチャートに表示してみます。
DAX−FT倍率 及び 比率の年初との比較
倍率上昇はDAXの上昇がFTより大きいか、DAXの下落がFTより小さいかを示し、倍率下落はDAXの上昇がFTより小さいか、DAXの下落がFTより大きいかを示します。
直近のところでは倍率が上昇していますので、DAX有利から英国離脱可能性がやや上昇と見ることが出来ると同時に、年初比では大まかな傾向としてそれほど変化は無いと見ることは出来ないでしょうか。
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