ユーロ高継続も目先は調整局面
〇ユーロドル、先週EUサミット以降ユーロ買い地合いを継続、7/31に一時1.1909レベルの高値つける
〇米国の新型コロナ感染者が急増、再び雇用の懸念からドル以外の資産へ資金の動き強まる
〇今週欧州は目新しい材料なく、米国雇用関連経済指標に影響される可能性
〇欧州は新型コロナ感染者をある程度抑制、ユーロ買いが出やすい流れに変化なし
〇今週は1.1625レベルをサポート、1.1875レベルをレジスタンスと想定
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、EUサミット以降の強い地合いを継続し、金曜東京市場では一時1.1909レベルと2018年5月以来の高値をつけることとなりました。為替市場に限らず、金やビットコインなどドルから他の資産への動きが見られますが、その背景には米国における新型コロナの新規感染者が急増し再び雇用の懸念が出てきていることが主要因となります。
また7月末で切れた失業給付加算が米国議会で協議中ですが、早ければ本日中に決まるとはいうものの、それをもってドルが買われる流れに戻るとも思えません。積極的に財政出動をする中で米国の財政赤字や長期化するであろう超低金利政策を考えると、これまでのドル安の流れは今後も継続しやすいと考えた方がよさそうです。
今週は欧州ではPMIの改定値と英国MPCが材料とはなるものの、改定値ということで目新しさは無いことや英国も金融政策については現状維持であることから、どちらかといえば米国材料である一連の雇用関連の経済指標の方が影響は大きそうです。特に2週連続で増加している新規失業保険申請数は今週も注目材料となりますし、雇用統計本番のNFPもプラスの数字が大幅に縮小するであろう予想となっています。
現在の感染者の状況を考えると、どの国も経済活動再開後は懸念すべき情勢が続いていますが、特に米国の感染者増は他地域に比べて今後の経済活動に影響必至という状況です。欧州も増加はしているもののある程度抑えられていますし、EUサミット後の欧米の対比からユーロ買いが出やすい流れには大きな変化は見られません。
詳細は今週のコラムをご覧いただければと思いますが、短期的にはユーロ買いポジションが過去20年で最高水準に膨らんでいたことから先週金曜の動きは短期的に月末と重なる週末を前にしたポジション調整に過ぎないと考えてよさそうです。
テクニカルには2018年5月以来の高値ですから、まず週足チャートから見ていきます。
2018年高値1.2555と2020年安値1.0638からフィボナッチ・リトレースメントを計算すると61.8%戻しが1.1823、また2020年安値を起点に上昇N波動(ピンク)を考えるとフィボナッチ・エクスパンションの100%エクスパンション(均衡表のN計算値と同じ)が1.1954となっていて、金曜の高値はそれぞれのターゲットに比較的近く、1.20の大台トライ前にいったん止まりやすい水準と見ることができます。
しかし2018年高値からの下降トレンドは明らかに今年安値からの反発で上抜け上昇トレンドに転じていますので。先週金曜からの調整はあくまでも短期的な調整に過ぎないと考えて良いでしょう。調整が終わったら、その時は改めて1.20の大台を目指す展開になってくると見ています。
日足チャートもご覧ください。
上値は今週に関しては先週金曜の高値がレジスタンスとなってきますが、ここまでの上昇が速かったことから下値は多少余裕を見た方がよさそうです。その場合参考にすべきは3月高値の1.1496でしょう。つまり大台1.15は当面は鉄板のサポートとなりますが、それでもやや距離があります。
その手前では、6月後半の押しとなった1.1168を起点に先週高値とのフィボナッチ・リトレースメントですが、こちらの38.2%押しは1.1626(青のターゲット)となっていて、今週中にも押しておかしくない水準となっています。今週はこのターゲットと重なる1.1625レベルをサポートに、先週高値よりは手前となる1.1875レベルをレジスタンスとする週を見ておくことにします。
今週のコラム
今週はユーロのポジションについてです。
FXの場合、OTC取引ということもあって正確なポジションなどわかりようがありませんが、それでもシカゴの通貨先物のポジションは為替市場の縮図として多くの人に参考にされています。毎週火曜の引け時点のポジションが金曜の引け後に発表されています。
そして先週金曜引け後に発表された7月28日時点のユーロのポジションのうち、ネット非商業ポジション(いわゆる大口投機ポジション)が15万枚を超えるユーロ買いとなり、これは過去最大のユーロポジションとなります。
サブチャートがその数字ですが、2018年に高値をつけた時の買いポジションを超えていることがわかると思います。適正サイズのポジションというものがあるわけではありませんが、やはり過去最大のサイズの買いポジションにふくらんでいるという事実は要注意です。
次の上昇の前にいったんポジション調整が入りやすいであろうシグナルと取ってよいでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
8月3日(月)
16:50 フランス7月製造業PMI
16:55 ドイツ7月製造業PMI
17:00 ユーロ圏7月製造業PMI
17:30 英国7月製造業PMI
8月4日(火)
18:00 ユーロ圏6月PPI
8月5日(水)
16:50 フランス7月サービス業PMI
16:55 ドイツ7月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏7月サービス業PMI
17:30 英国7月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏6月小売売上高
**:** 英中銀MPC(〜6日)
8月6日(木)
15:00 ドイツ6月製造業新規受注
15:00 英中銀MPC結果公表
15:00 英中銀総裁会見
17:30 英国7月建設業PMI
8月7日(金)
15:00 ドイツ6月貿易収支、鉱工業生産
15:45 フランス6月貿易収支、鉱工業生産
21:30 米国7月雇用統計
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
7月27日(月)
ユーロドルは前週からのユーロ高ドル安の流れを続け、特に目立った材料は無いもののNY市場では1.1782レベルまで高値を伸ばしました。引けにかけては若干押しも挟んだものの高値圏でもみあいのまま引けました。
7月28日(火)
ユーロドルは、東京市場ではドル円同様にドル買い(ユーロ売り)となっていましたが、売りの勢い自体は弱く、東京後場以降は1.17台前半でのもみあいのまま一日を終わりました。
7月29日(水)
ユーロドルは欧州市場までは動かず、欧州市場入りとともに上下する動きはあったものの高値圏でFOMCを前に積極的な取引は手控えられていました。NY市場に入り改めてユーロが底堅い動きとなりFOMC後には1.1806レベルの高値をつけましたが引けにかけては若干押しての引けとなりました。
7月30日(木)
ユーロドルは東京市場では利食いと見られるユーロ売りが先行しましたが、下がったところではまだまだ買いたい向きも多くNY市場では弱い米国GDPの結果を受けてユーロ買いが再燃、1.1848レベルまで上伸し高値引けとなりました。
7月31日(金)
ユーロドルもドル円と同様に東京市場ではドル売り・ユーロ買い、海外市場ではドル買い戻し(ユーロ売り)となりました。月末実需でのユーロ売りが出ていたこと、NY市場ではドル円での買い戻しが大きかったことが要因ですが、ドル円とのスピード差からユーロ円は125.21レベルまで高値を切り上げるなど、ユーロ自体の底堅さには変化は感じられませんでした。
注:ポイント要約は編集部
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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