英国国民投票次第(週報2016年6月第三週)

1月の日銀会合以降、会合のたびに円高が進行を繰り返し、先週の会合後には安値103.55レベルとGW中の安値を大幅に更新する年初来安値をつけるに至っています。

英国国民投票次第(週報2016年6月第三週)

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値    高値   安値   終値

ドル円   106.48   106.64   103.55  104.14
ユーロ円  119.66   120.32  115.50   117.41
ユーロドル 1.1238   1.1303  1.1131  1.1278
日経平均 16319.11 16335.38 15395.98 15599.66

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

6月13日(月)

週明けの東京市場では、株価が大幅安となったことを嫌気してドル円は105円台を見る展開となりました。ドル円のドル売りの動きからユーロはユーロ買いの動きとなっていましたが、英国の国民投票に向けての不透明感は高まりからポンドは下げ、結果としてポンド円は欧州市場序盤に一時149.47レベルと2013年8月以来の安値を付けました。NY市場では、ダウ、WTI原油先物が反発する動きからいったんはリスクオフの巻き返しの動きとなりましたが、引けにかけては再び下落し、引き続き英国のEU離脱懸念が重くにしかかっている市場となりました。

6月14日(火)

東京市場では日経平均株価が続落した動きから円買いが先行、また前日の英国世論調査結果において一段と離脱支持が増えていたことからポンドが売られ、これらの動きに引っ張られユーロドルが下げ、ユーロ円は大幅安という動きになりました。ポンドは海外市場に移ってからも弱い動きを続け、ポンド売り(ドル買い)の動きからドル円は東京市場安値105.63レベルから反発し、106円台に戻しての引けとなりました。

6月15日(水)

東京市場では、夜間取引で225先物が安値から上昇に転じた動きから買いが先行、為替市場も同様に前日の下げに対する買い戻しが先行しました。しかしこの動きも長続きせず、海外市場に移ると英国のEU離脱懸念が戻り売りを誘発、FOMCを前に再びドルの上値が重い展開でNY市場入りとなりました。FOMCでは大方の予想通り現状維持、また内容的にもこれまでのスタンスから目立った変化は見られず、ドル円は一時的に105.44レベルと年初来安値を下回ったものの急速に回復し、FOMC前の水準に戻してのクローズ。ユーロドルは終日買い戻しが続き、FOMC後には一時1.1298レベルの高値を付け、その後やや押して引けました。

6月16日(木)

東京市場では、日銀の金融政策決定会合結果発表を前に既にじりじりと円高の動きとなり105円台前半での発表待ちとなりました。結果は大方の予想通り現状維持となりましたが、一部で追加緩和の思惑もあり、ストップオーダーを巻き込みながら後場には103.55レベルの安値とNY終値から2円50銭近い円急騰劇を演じました。急激な円高の動きから株式市場も大幅安。欧州市場では英国の世論調査で引き続き離脱支持が多いとの結果からポンドに売りが入り、ユーロも追随して大幅安。結果として、ユーロ円は115.50まで売り込まれ、その後ユーロドルの反発とともに117円台乗せと大荒れの展開となりました。ドル円も急激な動きの返しで114円台半ばまで戻しました。

6月17日(金)

金曜の東京市場では、株価が底堅い動きとなったこと、また前日安値103.55レベルで短期的な底打ちとなった動きの流れを受け、ドル円はドル買い先行の動きとなりました。しかし、105円の大台手前では戻り売りを考える向きも多く、寄付き後すぐに上値が重たくなった株価とともにじり安の展開。しかし、週末を前にして積極的な取引は手控えられ、海外市場では104円台前半の狭いレンジ内での取引に終始しました。ユーロドルは、前日の流れを継続し、細かく上下しながらも底堅い展開、前日高値圏へ戻してのクローズとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月20日(月)
08:50 本邦5月貿易収支
16:50 黒田日銀総裁講演
25:15 (ミネアポリス連銀総裁講演)

6月23日(木)
15:00 英国国民投票開始(〜30:00、出口調査は行われない)
15:45 フランス6月企業景況感
16:00 フランス6月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ6月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏6月製造業・サービス業PMI速報値
21:30 米国5月シカゴ連銀全米活動指数
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国6月MarkIt製造業PMI速報値
23:00 米国5月新築住宅販売件数

6月24日(金)
06:00 英国国民投票開票開始(10:00〜12:00大勢判明)
08:00 (ダラス連銀総裁講演)
15:00頃 英国国民投票確定結果発表(確定で再集計は行われない)
15:45 フランス1〜3月期GDP確報値
17:00 ドイツ6月ifo景気期待指数
21:30 米国5月耐久財受注
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感指数確報値

今週の週間見通し

蓋を開ける前の段階で不用意な相場観を持つことの危険

1月の日銀会合以降、会合のたびに円高が進行を繰り返し、先週の会合後には安値103.55レベルとGW中の安値を大幅に更新する年初来安値をつけるに至っています。材料的には今週の英国国民投票に向け離脱の際の避難通貨として円が買われやすい地合いとなっていたこと、また、テクニカルにも史上最円高値75.58と昨年のドル高値125.86の半値にあたる100.72を最終的なターゲットとしていることは先週のFX羅針盤にも書いた通りです。

今週も地合いとしては円高トレンドは継続と考えられますが、23日には世界中が注目する英国国民投票が行われ、その結果次第では「何でもあり」の大荒れ相場となる可能性があり、蓋を開ける前の段階で不用意な相場観を持つことの方が危険であることを最初に書いておきたいと思います。

市場参加者も投票を厳重警戒

各FX業者では今週からポンドに絡む通貨ペアのレバレッジを25倍から10〜15倍程度へと下げたり、また国民投票の当日以降の流動性低下に備えて、ポジション管理には十分な警告したり、といったメールが先週までに続々と届きました。投資家だけでなく、FX業者、そしてそのカバー先である金融機関、すべての市場参加者が警戒しています。

国民投票後に残留となればポンド買いとリスクオン、離脱となればポンド売りとリスクオフとなりますが、それぞれどの程度動くのかについては、残留の場合は最近の高値を参考にし、離脱の場合は過去の大相場を参考にするのが良いのではないかという記事もFX羅針盤に書きましたので、併せてご覧いただければと思います。
Brexit第3回「投票後の相場」

英国国民投票に関するスケジュール 24日東京市場前場が最大の焦点

さて、今週の予定にも書きましたが、23日から24日までの英国国民投票に関するスケジュールを今一度書き抜いておきます。
6月23日(木)
15:00 「投票開始」
30:00 投票締切(この間、出口調査は行われない)
6月24日(金)
06:00 「開票開始」
10:00〜12:00 「大勢判明」
15:00頃 「確定結果」発表(確定で再集計は行われない)

こうして見てみると、24日東京市場前場が最大の焦点となることがわかります。

直近は残留支持派が巻き返す動き

直近のところでは、残留支持のコックス議員が先週殺害されたことを受け、残留支持派が巻き返す動きが見られました。週末に発表された大衆紙「メールオブサンデー」の世論調査結果では、離脱42%に対し残留45%と最近にしては珍しく残留支持がリードする結果となっていて、週明けの早朝市場ではリスクオンの動きからポンド買い、ドル円買い、クロス円買いと先週までのリスクオフ相場が後退する値動きを見せました。

国民投票まで残すところあと3日、24日東京市場前場の大勢判明までは何が起きるかわかりませんが、本日以降も世論調査の結果が出てきますので、それらを参考にしながらも思惑が渦巻く相場が続きそうです。ただ、前回のスコットランド独立の是非を問う投票の際も、そうでしたが直前までは独立支持が優勢と伝えられていたものの、最終的には現実路線である残留という結果となりました。

大勢判明後にドル円もドル高円安?

英国人は最終的には理性的な判断を下すとよく言われますし、コックス議員の弔い合戦という動きから、態度を決めかねている層や投票率が低い若年層(もともと残留支持が多いと言われる)が残留支持に回り、僅差でも残留が決まるのではないかという見方が増えてきているように思えます。その点では、大勢判明後にドル円もドル高円安という動きになると見ていますが、果たしてどのような動きとなるのか?

ドル円の予想レンジ  英国EU残留: 103.50 〜 108.00  英国EU離脱: 100.00 〜 105.50

今週は2つのシナリオとともにドル円の予想レンジを示しておくことにしましょう。
 英国EU残留: 103.50 〜 108.00
 英国EU離脱: 100.00 〜 105.50

EU離脱の場合は協調介入の可能性

なお、EU離脱によるリスクオフ相場となった際は「協調介入の可能性がある」ことを最後に付記しておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

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