ユーロはポンドとともに続落しやすい(週報6月第3週)

今週は上値の重たい流れを継続し、先週の安値を試しやすい流れを想定して1.1160レベルをサポートに、1.1340レベルをレジスタンスとする週を見ておくことにします。

ユーロはポンドとともに続落しやすい(週報6月第3週)

ユーロはポンドとともに続落しやすい



〇先週のユーロドル、水曜のFOMCから木曜のダウ急落まではドル売りの動きにユーロ買いが目立つ
〇その後はダウ急落のユーロ円売りに押されてユーロ安に
〇英国が年末までの移行期間を延長しないとEUに表明したことも欧州通貨の売り材料となった
〇今週はリスクオフの動きとともにポンドの動きが気になる週
〇ユーロの安値を試しやすい流れを想定、1.1160レベルをサポート、1.1340レベルをレジスタンスと見る

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、ドル円での円高の動きがユーロ円でもほぼ同様の動きが見られたことで、ユーロ円の円買いの動きがユーロの上値も抑えるという動きと、FOMCにおいてイールドカーブ・コントロールが議論されるとの思惑から米金利低下によるユーロドルでのユーロ買い・ドル売りの動きとが交錯する週初となりましたが、水曜のFOMCから木曜のダウ急落までは全般的なドル売りの動きからユーロ買いが目立ちました。

その後、ダウ急落の動きから改めてユーロ円の売りが強まったこと、また金曜には英国が年末までの移行期間を延長しないとEUに表明したことからポンド売りの動きとともにユーロは週間安値を更新し、6月4日のECB理事会前の水準へと押す動きとなりました。

ユーロドルでは株安によるリスクオフからユーロ円でのユーロ売りが週を通して目立ちましたが、6月に入ってからのユーロ円は119円台半ばから124円台半ばまでちょうど5円の上昇幅を見ましたので、そのポジション調整がドル円の動きとともに一気に出たポジション調整の影響が大きかったように思えます。

先週初まではECB理事会における大規模追加緩和を好感する動きがありましたし、英国も移行期間の延長に柔軟な姿勢を見せるといった状況で特に対円での欧州通貨買いを進めやすかった面がありました。しかし、米国の株安から始まり英国の延長無しに終わった先週はその巻き返しと見れば、比較的理解しやすいところです。

今週は英中銀のMPCがありますが、英国経済も低迷している中で今週もしくは次回(8月6日)のMPCのどちらかで追加緩和が行われるという見方となっています。ただ、政策金利が0.1%に下がっている現状、今週は現状維持となるであろうという見方の方が多いのですが、MPC委員の中にもマイナス金利を肯定する委員がいることや、ECBが追加緩和に動いた後ということから、今回の緩和の可能性は若干高まった印象です。更に移行期間中に英国とEUとの協議がまとまらないリスクについて英中銀関係者が発言していたところに、英政府が移行期間の延長をしないと発言したこともMPCで議論されるはずです。

いつものギリギリまで強気でEUから妥協案を引き出すという作戦の可能性も否定はできませんが、英国が正式にEUへ通知する期限は6月末ですから、それまでに発言を撤回して移行期間を延期する可能性は一気に低くなったように見えます。あとは、移行期間中の英国とEUとの協議がまとまるかどうかにかかっていますが、金曜の発言と合わせて9月まで集中して協議を行うこと、本日15日にジョンソン首相と欧州委員長の電話会議が行われますので、ここで今後のある程度の状況は見えてきそうです。

今週は引き続きリスクオフの動きとともにポンドの動きが気になる週となりますが、今後の協議日程の中で、もし協議がまとまらなかった場合、実質的に合意無きブレグジットと変わらないため、ポンドとユーロの下値不安を抱えることは間違いありません。材料的にはポンドとともにユーロ売り材料のほうが気になるというところでしょうか。

テクニカルにも見ていきます。日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

テクニカルには3月下旬の戻り高値(1.1147レベル、ピンクの水平線)を上抜けたところからユーロ高に弾みがついたことは先週書いた通りですが、いったん1.14台で目先の高値をつけたことから今度はこのピンクの水平線が下値の目途となってきます。1.11台半ばまでの下押しの可能性は考えておきたいところです。

上値については、金曜の戻り高値(1.1341レベル)が水曜から木曜にかけての高値圏での動きとなっていた際の安値圏と重なっていますので、同水準はレジスタンスと見てよさそうです。今週は上値の重たい流れを継続し、先週の安値を試しやすい流れを想定して1.1160レベルをサポートに、1.1340レベルをレジスタンスとする週を見ておくことにします。

今週のコラム

今週はポンドドルの週足チャートを見てみましょう。

今週のコラム

主要通貨では2月・3月の大相場が年初来のレンジとなっているケースが多いのですが、ポンドは年初1月2日が年初来高値(1.3231、赤のターゲット)となっていて、他の通貨に比べると下げが目立ったというのが年前半の印象です。

そして、6月の高値は年初来高値と年初来安値の78.6%(61.8%の平方根)戻しにほぼ一致していることから、戻り高値を見たと考えてもよさそうです。すると、ここからの展開は5月安値と先週高値を押しを考えることとなりますが、半値押しは1.2445、61.8%押しが1.2358となっていて(それぞれ青のターゲット)、前者は近すぎることもあり後者の1.23台半ばがサポート兼ターゲットとなってくると考えています。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

6月15日(月)
08:01 英国6月住宅価格
18:00 ユーロ圏4月貿易収支
**:** EUサミット

6月16日(火)
15:00 英国5月失業率
15:00 ドイツ5月CPI
18:00 ドイツ6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏6月ZEW景況感
23:00 パウエルFRB議長議会証言(上院)

6月17日(水)
15:00 英国5月CPI・PPI
18:00 ユーロ圏5月CPI
18:00 ユーロ圏4月建設支出
**:** 英中銀MPC(〜18日)

6月18日(木)
16:30 スイス中銀政策金利発表
20:00 英中銀政策金利発表、MPC議事要旨公表

6月19日(金)
15:00 英国5月小売売上高
17:00 ユーロ圏4月経常収支

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月8日(月)
ユーロドルは終日狭い値幅での取引が続きました。ドル円はFOMCにおけるイールドカーブ・コントロールの思惑によるポジション調整から急速にドル安が進みましたが、ユーロドルではユーロ円でのポジション調整も大きくユーロ売りの動きがドル売り(ユーロ買い)とぶつかったことで値幅は狭いままでの取引が続くこととなりました。

6月9日(火)
ユーロドルは、東京市場では株安による円高の動きがユーロ円に波及、その動きからユーロドルも売られる展開となり欧州市場序盤には1.1241レベルの安値をつけました。その後はFOMCにおいてイールドカーブ・コントロール導入等の追加緩和策が示されるとの思惑から対ユーロでもドル安が進み、ユーロドルは1.1364レベルまで上伸後にやや押して引けました。

6月10日(水)
ユーロドルはFOMCを前にドル安・ユーロ高の流れが続き先週金曜高値をわずかに上回る1.1389レベルをつけたところで利食いの売りも出て東京昼頃の水準に押してFOMC待ちとなりました。FOMCではイールドカーブ・コントロールは見送りとなり当初はドル買い・ユーロ売りの動きで1.1321レベルまで水準を下げましたが、金利見通しで2022年までゼロ金利となっていたことからすぐに買い戻され1.1423レベルと100pips以上の急反騰を見せ、その後はFOMC後のレンジ半ばで引けました。

6月11日(木)
ユーロドルはNY市場後場まではある程度の上下は見られたものの方向感がはっきりしない動きを続けていました。しかし、どちらかと言えば1.14で上値を抑えられている感が強く、NY後場にはダウ急落の影響を受けたユーロ円の下げがきっかけとなってユーロドルは1.13を割れての引けとなりました。

6月12日(金)
ユーロドルは東京市場では後場にユーロ円の買い戻しが目立ったことからユーロドルも上昇。欧州市場序盤にはドイツの減税の話が出て欧州株が強く一時1.1341レベルの高値をつけました。その後はNY市場までもみあいとなっていましたが、実需売りと思われるユーロ売りと英国がEUに移行期間の延期をしないことを表明したことで、ポンド売りとユーロ売り地合いでの週末クローズとなりました。

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