上値の重たいもみあいが続く(週報6月第3週)

ドル円は週明けに急速に値を下げる展開となり、金曜日に107.55レベルの高値をつけたものの、週末前のポジション調整もあり狭い値幅でのもみあいで引けました。

上値の重たいもみあいが続く(週報6月第3週)

上値の重たいもみあいが続く

〇先週のドル円はFOMC前のポジション調整で円高へ
〇週末の警官による黒人射殺事件、それに伴うコロナ感染第二波懸念が新たな懸念材料に
〇当面は実体経済から乖離した株高の調整進行によりリスクオフの円高になりやすい
〇16-17のパウエル議長の議会証言に注目
〇106.60レベルをサポート107.80レベルをレジスタンスとする週か

今週の週間見通し

先週のドル円は円高が目立った一週間となりましたが、週初からFOMCにおいてイールドカーブ・コントロールの検討が行われるとの思惑から米金利低下によるドル安というシナリオが広がりました。ただ、それ以上に前週のドル高の動きに対して大台を試せなかったことからFOMCを前にしたポジション調整の動きが大きかったように思えます。

そして木曜には東京市場から水準を下げていたダウ先物でしたが、NY市場に入ってからも売りが強く前日から1800ドルを超える史上4番目の下げ幅を演じ、ドル円も週間安値となる106.58レベルを見ましたが、週初からの下げが3円を超えたこともあり週末にはやや戻しての引けとなりました。

そこにまた出てきたのが米国での警官による黒人射殺事件です。ミネアポリスでの暴行致死のデモが広がる中での事件発生ですから、更なるデモ拡大は必至でしょうしそれに伴ってのコロナウイルス感染者拡大で第二波懸念も更に広がりそうです。前回も書いたことですが、先週前半までの株式市場は個人的には2月以上に理由なき楽観に覆われ、実体経済から乖離した株高であったと考えていますので、当面は調整局面入りとなりやすく、それによって為替市場でもリスクオフによる円買いの動きとなりやすいと見てよいでしょう。

今週も経済指標は色々と出てきますが、現状の市場参加者の反応は悪くて当たり前、予想よりも良い数字が出ると好材料という反応を見せています。先々週金曜の米国雇用統計などは良い例だと思いますが、今後改善する流れであるとしても現状の失業率は13.3%とリーマンショック時を上回っていますし、パウエルFRB議長の発言(実態を表していない可能性)が正解とは限りませんが、実態はもっと悪い可能性もあるわけです。そして13.3%だとしても7〜8人に1人は失業状態なわけですから、今の株式市場は過熱していると思いますし、短期的には高値をつけた可能性が高そうです。

今週はそのパウエル議長の議会証言が16・17日に予定されていますので、最初の上院における発言には大きな注目が集まります。先週のFOMCではイールドカーブ・コントロールは見送られましたが、協議は継続されるとも発言しましたので今後の金融政策と米国経済の見通しについてFOMCを補足するようなヒントが示される可能性もあるでしょう。他にも各地区連銀総裁等の講演もFOMC直後で大きな変化は見られないでしょうが、念の為注意しておきたいところです。

テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

最近の上下は比較的フィボナッチ・リトレースメントの計算値と大きくはズレない展開が続いています。前週金曜高値は3月高値と5月安値の61.8%戻し109.53(赤のターゲット)と重なりますし、先週安値は5月安値と前週金曜高値の78.6%(61.8%の平方根)押し(青のターゲット)と重なります。金曜に目先の安値をつけたとすると、現在の戻しは前週高値と先週安値の38.2%戻しの107.83か半値戻しの108.21(それぞれ青緑のターゲット)となりますが、引き続き戻りが弱いとなると、前者のターゲットのほうが妥当です。

いっぽうで下値については先週安値の106.57がサポートとなりますが、ここを抜けて5月安値を試すには米国株がもう一度急落でも見せないと難しいと思いますので、中期的にはトライする可能性は高いものの、今週のところはサポートとなりやすいと見てよいでしょう。今週は先週大きく動いた後だけに先週のレンジの下半分の中でのもみあいを考え、106.60レベルをサポートに、107.80レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月15日(月)
**:** 日銀会合(〜16日)
08:01 英国6月住宅価格
11:00 中国5月鉱工業生産、小売売上高
17:00 トルコ5月財政収支
18:00 ユーロ圏4月貿易収支
21:30 米国6月NY連銀製造業景況指数
24:00 ダラス連銀総裁講演
25:30 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
**:** EUサミット

6月16日(火)
**:** 南ア市場休場
06:00 NZ4〜6月期消費者信頼感
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
10:30 豪州1〜3月期住宅価格指数
**:** 日銀会合結果発表
15:00 英国5月失業率
15:00 ドイツ5月CPI
15:30 黒田日銀総裁会見
18:00 ドイツ6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏6月ZEW景況感
21:30 米国5月小売売上高
22:15 米国5月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 パウエルFRB議長議会証言(上院)
23:00 米国4月企業在庫
23:00 米国6月NAHB住宅市場指数
29:00 クラリダFRB議長講演

6月17日(水)
07:45 NZ1〜3月期経常収支
08:50 本邦5月貿易収支(通関)
15:00 英国5月CPI・PPI
18:00 ユーロ圏5月CPI
18:00 ユーロ圏4月建設支出
20:00 南ア4月小売売上高
21:30 米国5月住宅着工・建築許可件数
23:30 週間原油在庫統計
25:00 パウエルFRB議長議会証言(下院)
29:00 クリーブランド連銀総裁講演
**:** 英中銀MPC(〜18日)

6月18日(木)
07:45 NZ1〜3月期GDP
10:30 豪州5月失業率
16:30 スイス中銀政策金利発表
20:00 英中銀政策金利発表、MPC議事要旨公表
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 フィラデルフィア連銀製造業景況指数
23:00 米国5月景気先行指数

6月19日(金)
08:30 本邦5月CPI
08:50 日銀会合(4月・5月)議事要旨公表
15:00 英国5月小売売上高
17:00 ユーロ圏4月経常収支
21:30 米国1〜3月期経常収支
23:15 (ボストン連銀総裁講演)
26:00 パウエルFRB議長講演

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月8日(月)
 ドル円はNY市場まで上値は重たい流れとなっていたものの109円台半ばの狭いレンジでの取引が続いていました。NY市場に入りFOMCにおいてイールドカーブ・コントロールが議論されるとの話が蒸し返され米長期金利が低下、ドル売りが入り始めたところで、短期的にドル円でドル買いが膨らんでいたことからストップオーダーを巻き込んで急速に値を下げる展開となりました。後場には108.24レベルまで安値を切り下げそのまま安値圏での引けとなりました。

6月9日(火)
 ドル円は株式市場の下げとともに円高の動きが先行し、前日安値を下回るとストップオーダーも加わって東京前場から108円を割り込む動きとなりました。その後も株価とともに上値の重たい流れが続き、NY市場が始まる前には一時的な買い戻しも見られたものの後が続かず。NY市場の昼過ぎには107.62レベルへと下値を広げそのまま安値圏での引けとなりました。

6月10日(水)
 ドル円はFOMCでイールドカーブ・コントロールが議論されるとの思惑が続き、欧州市場で107.16レベルの安値をつけた後もFOMCまでドル安地合いを続けました。FOMCではイールドカーブ・コントロールに触れなかったことで107.46レベルまで買い戻しも出たものの、金利見通しでは2022年まで現状の実質ゼロ金利を続ける見通しとなっていたことから再びドル売りの動きとなり、106.99レベルの安値をつけ、そのまま安値圏での引けとなりました。

6月11日(木)
 ドル円は東京市場から売りが先行する株式市場の動きを見ながら上値の重たい展開を続けました。NYの昼前にはダウが急落する動きとともに106.57レベルの安値をつけ、引けにかけてはやや戻しての引けとなりました。

6月12日(金)
 ドル円は東京後場に入ってから堅調な株価に引っ張られてリスクオンの動きとなりました。海外市場に移ってからはダウ先物を中心に株高の動きが継続しドル円は107.55レベルの高値をつけたもののそこまで。NY市場でのダウは改めて上値を抑えられる動きとなり、ドル円も上値は重たいものの引けまで週末前のポジション調整もあり狭い値幅でのもみあいで引けました。

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