110円を目前に調整が入りやすい
〇先週のドル円、株高とユーロ円の上昇に108円台前半を上抜け、週末強い米雇用統計109.85に達する
〇実体経済を考えると株高がそこまで正当化できるのか理解に苦しむ
〇いまだ回復途上にある中で米ナスダック指数は金曜に史上最高値を更新
〇相場の世界は美人投票納得はできないがついていくしかない
〇今週は108.50レベルをサポート、大台110.00レベルをレジスタンスとする週か
今週の週間見通し
先週のドル円は、動きが見られなかったのは月曜のみで火曜には株高とユーロ円の上昇をきっかけに、それまでレジスタンスとなっていた108円台前半を上抜け、ストップオーダーとテクニカルな新規買い仕掛けも加わって一段高となりました。その後も堅調な株価とともにじりじりと水準を切り上げていましたが、金曜の米国雇用統計が予想よりもかなり強い数字となったことから109.85レベルの高値をつけ、110円の大台を伺う週末クローズとなりました。
火曜に108円台前半を明確に上抜けたことは、これまでのもみあいを上放れしたことを意味しますので、そこからのテクニカルな上昇は理解できますが、株高を背景にしたリスクオンというのも理由付けとしては理解できるものの、現在の実体経済の状況を考えると株高がそこまで正当化できるのかは正直理解に苦しみます。
金曜の米国雇用統計では、失業率は予想が19.8%(前回14.7%)に対して13.3%、NFPに至っては予想がー800万(前回−2068.7万)に対して+250.9万と、どちらも前月に比べると改善しています。失業者増加のピークは過ぎたということは間違いなさそうですが、依然として失業率は二桁でリーマンショック後の10%を大きく上回っています。
当然個人消費の回復には時間がかかりますし、企業収益も大底は見たのでしょうがコロナ前の状況に戻るのはまだ先のことですし、世界的な状況を見ていると第二波、第三波の懸念がある中で今年中にコロナ前の状況に戻るとはとても思えない状況です。そうしたいまだ回復途上にある中で米国の主要株価指数のひとつナスダックは金曜に史上最高値を更新という驚くべき値動きを見せています。以下のチャートはナスダック先物で、紫の四角が1か月です。
ナスダックのPER(株価収益率)は金曜終値時点で39.8倍となっていて、2月の史上最高値字を上回っています。4・5月に比べれば企業の業績は回復しているでしょうが、冷静に考えてコロナ前の1・2月とは状況が違いますし、果たしてここまでの倍率が正当化できるのかとなるといくらハイテク株とはいえ、個人的には理解を超える株高現象としか思えません。
なんとか理由付けをしようとすると、ミネアポリスの警官による黒人暴行致死問題のデモが全米に広がり11月の大統領選に暗雲が漂い始めたトランプ大統領(政治)とFRB(金融)の協調による実体経済から乖離したプチバブル演出というならば、それもあるだろうというところですが、3・4月の反転から5月以降の明確な上昇トレンドになると、そこまで強気でいいのかという感じしかしません。機関投資家も個人投資家も乗り遅れたら大変ということで反落の可能性は考えずに買いに回っているのでしょうが、不思議としか言えない相場です。
ただ、そうは言っても相場の世界は美人投票と言われるように流れに乗らないと勝つチャンスを逃しますし、実体経済の不調に注目して空売りしようものなら大きな負けとなってしまいます。まったく今の動きには納得できないのですが、ついていくしかないというのが、現在の株式相ですし、それに円相場がリスクオンでついていくならば、これもついていくしかありません。
テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
4月中旬以降の106〜108円レンジを明確に上抜けてきたことから、現状は以前のレジスタンス108円がサポートとなってきます。一方で、3月高値と5月高値の61.8%戻し109.53と4月高値109.38は似た水準にあり、それぞれのターゲットを達成した次のテクニカルなターゲットとしては3月高値と5月高値の78.6%(61.8%の平方根)戻しとなる110.49があげられます。
しかし、その手前に大台110円があることや、6月に入ってからの円安の速度がやや速いことも考えると、いったん110円の大台水準では売りが出やすい地合いになるでしょう。そうした動きの速さも考慮して今週は108.50レベルをサポートに、大台110.00レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
6月8日(月)
**:** シドニー市場休場
08:50 本邦1〜3月期GDP改定値
08:50 本邦4月貿易収支(国際収支)
15:00 ドイツ4月鉱工業生産
6月9日(火)
08:01 英国5月小売売上高
10:30 豪州5月企業景況感
15:00 ドイツ4月貿易収支
15:45 フランス4月貿易収支
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP確報値
23:00 米国4月卸売売上高・在庫
**:** OPEC総会
**:** FOMC(〜10日)
6月10日(水)
07:45 NZ1〜3月期製造業売上高
09:30 豪州6月消費者信頼感
10:30 中国5月CPI・PPI
15:45 フランス4月鉱工業生産
16:00 トルコ3月失業率
19:00 南ア4〜6月期企業信頼感
21:30 米国5月CPI
23:30 週間原油在庫統計
**:** OPECプラス
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見
6月11日(木)
08:01 英国5月住宅価格
18:30 南ア3月鉱工業生産
20:00 南ア4月製造業生産
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国5月PPI
**:** ユーロ圏財務相会合
6月12日(金)
15:00 英国4月貿易収支
15:45 フランス5月CPI
16:00 トルコ4月経常収支、鉱工業生産
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産
21:30 米国5月輸入物価指数
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感速報値
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
6月1日(月)
東京市場では先週に続いてユーロドルでのドル売りが目立ち、ユーロドルが欧州市場序盤に前週高値を上抜ける動きとともにドル円も一時107.38レベルの安値をつけました。材料的には中国による米国産大豆輸入停止を考えているとの話がきっかけでした。その後もユーロ主導の相場が続き、ドル買い戻し後に引けにかけては売られるという流れになりましたが、特段目立った材料は無く、107円台後半で上値の重たいもみあいの一日となりました。
6月2日(火)
東京市場では最近の日経平均株価の強さも手伝って107円台半ばから後半へとじり高の流れとなっていました。欧州市場では中国が昨日出ていた米国産大豆輸入停止を否定したこととユーロ円の一段高から更に下固めをする動きとなり、NY市場ではドル円が直近の高値を上抜けたことからストップオーダーも巻き込みながら大幅高、後場には108.77レベルの高値をつけそのまま高値圏での引けとなりました。
6月3日(水)
ドル円はNY市場までは108円台後半でもみあいつつも日経平均株価の動きに沿って上下する展開を続けていました。NY市場に入り発表されたADP全国雇用者数が予想に比べてマイナスが小さかったことをきっかけにNYダウが上昇、リスクオンの動きからドル円は更に円安の動きとなりNY昼前には108.98レベルの高値をつけました。引けにかけては109円手前で足踏み状態を続けました。
6月4日(木)
ドル円は東京前場は株価の上値が重たかったことから高値圏でのもみあいとなっていたものの、後場に入り再び円安の動きとなり109.15レベルまで上昇。欧州市場からNY朝方まではユーロ大幅高の動きから一時108.61レベルの安値をつけましたが、ユーロ高の動きがユーロ円にも波及しドル円は引け間際に109.19レベルと日中高値を更新しそのまま高値圏での引けとなりました。
6月5日(金)
東京前場は静かな展開でしたが後場に入りユーロが前日高値を抜けるとユーロ円、ドル円と波及しドル円も欧州市場序盤には109.43レベルまで水準を切り上げました。その後米国雇用統計を前にNY市場まではポジション調整の押しが見られましたが、米国雇用統計の結果は予想よりも大幅に改善しリスクオンの動きから株高、円安となり109.85レベルの高値をつけた後やや押しての引けとなりました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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