ドルは110円台回復期待も、FOMCを注視
〇ドル円は先週週末にかけて堅調に推移週末は109円台後半へ
〇米中の対立と米国におけるデモ活動が市場の話題に
〇5月の米雇用統計が想定外の好数字になったことでドル買いが加速
〇テクニカルには心理抵抗である110円が次のターゲット、上値めどはフィボナッチ76.4%の110.35
〇今週のドル円予想レンジ108.30-110.80
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドル堅調裡。週間を通して2円を大きく超える上昇をたどっただけでなく、「週初安・週末高」の様相を呈していた。
前週末は、トランプ米大統領の発した「WHO離脱」話がそこここで思惑を呼ぶ。また、同じくトランプ氏が提案した「G7開催を9月に延期にする」との発言も、話題になっていたようだ。そのほか、「香港情勢」に関するニュースも数多く取り沙汰されている。
そうした状況下、週明けのドル/円は107.60-65円で取引開始。しばらくは107.35-85円といったレンジ取引、冴えない値動きをたどるも、上抜けするとそのまま108円台を回復しただけでなく109円台まで大幅に上伸した。週末には、注目されていた5月の米雇用統計が想定外の好数字になったことで、109.85円の週間高値を示現し、結局そのままNYは109.60円前後のドル高値圏で取引を終え、越週している。
なお、先週の為替相場は、ドル/円だけでなくクロスでも円は全面安に推移。ユーロ/円や豪ドル/円は1週間で5円以上の上昇をたどったほか、ポンド/円に至っては7円強の上昇が観測されていた。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「米中の対立」と「米国におけるデモ活動」について。
前者は、香港情勢を中心とした米中対立が激しさを増すなか、双方とも辛うじて最後の一歩を踏み止まっていた感が見られたが、ついに中国サイドが「大豆など米農産物輸入を一時停止するよう求めた」との報道が観測され物議を醸す。実際、措置を受けてロイターでは「米中第1段階通商合意破棄」の可能性について言及した記事を配信していた。また、それとは別に、狙いが「対中包囲網にある」とされるトランプ氏の指摘した「拡大G7」について中国が噛み付くと、「中国を狙ったグループづくりは人々の支持を得られない」との発言も聞かれている。
対して後者は、黒人差別に対する抗議デモが全米に広がるなか、ホワイトハウス近くでもデモが実施されており、「周辺のデモ隊に催涙ガスが発射された」などといった報道も。そうしたなかトランプ氏は、州知事らとの電話会談を行い、デモ参加者への対応や一斉逮捕のほか、国旗を燃やす行為を禁止する条例の制定などを求めたほか、のちの会見では「自治体や州政府が行動しないならば軍を動員」する可能性を指摘するなど、強硬スタンスを前面に押し出している。ただ、以降もデモは止まらず、週末にはついに12日連続実施となるなど、今週もその動きには引き続き要注意だ。
<< 今週の見通し >>
欧米諸国における新型コロナの感染拡大が一服するなか、「米中対立」と「全米に広がるデモ活動」が市場の話題の中心となっている。それぞれ、ドルの弱材料と考えても間違いなさそうだが、マーケットはというと、それより経済活動再開を受けた経済回復期待が強く、米株やドルの強い支援材料となっている感を否めない。そして実際、先週末に発表された5月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が想定外のプラスになるなど、市場の期待を裏付けるような内容だった。クロスを中心に、短期的にはやや行き過ぎている感もあるものの、リスクは上方向。ドル/円も続伸には要注意だ。
材料的に見た場合、「貿易問題のほか香港情勢などを含めた米中の対立」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「新型コロナウイルス」、「米大統領選」、「全米に広がるデモ活動」など、注目要因は依然として目白押し。そうしたなか、前述した「米中対立」と「全米に広がるデモ活動」以外で注視されているのは、今週は9-10日に開催されるFOMCだろう。ちなみに、FOMCにおいて「マイナス金利導入」の行方が警戒されているものの、先週末に発表された米雇用統計の好数字もあり、パウエル議長は否定的な見解を示すとの見方が有力だ。米金利の先安観後退となれば、ドルを積極的には売りにくいのかもしれない。
テクニカルに見た場合、ドル/円は先週末の東京時間には4月6日高値109.38円前後で上げ渋りの感も見られたが、その後の欧米時間には続伸すると一時109.85円へ。ポジションの偏りを考慮しなければ、リスクは間違いなく上方向にバイアスで、心理抵抗である110円レベルが次のターゲットに。また、3月高値111.71円を起点としたフィボナッチでは、下げ幅の61.8%戻し(109.55円)をすでに上抜けており、76.4%戻しにあたる110.35円が上値メドとなりそうだ。
今週は、5月の消費者物価指数や6月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値といった米経済指標が発表される予定となっている。何度も指摘しているように、先週末に発表された5月の米雇用統計は驚異的な好数字で、米景気回復を期待する声がさらに強まってきた。期待をさらに後押しするような指標発表が続くのか否かにまずは注目だ。
また、米財務省による米債入札や、FOMCならびにFRB議長の会見などにも要注意。
そんな今週のドル/円予想レンジは、108.30-110.80円。ドル高・円安については、先週末に示現したドル高値109.85円をめぐる攻防に注目。上抜けると心理抵抗の110円、あるいはフィボナッチによるテクニカルポイントの110.35円がターゲットに。
対するドル安・円高方向は、109.20円前後に弱いサポートが位置しているものの、強いポイントとなると、移動平均の200日線が位置する108.40円レベル。ただ、ドルは底堅く、大崩れは予想しにくいとの見方が取り敢えずは有力か。
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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