5月末の総選挙に対する不透明感がランドの重しに
【先週の南アフリカ・ランド】
先週のランドは、週初に2022年6月以来となる8.5円台をつけた後、日本当局による円買い介入観測を受けて売り優勢の展開となった。
週初は、4月26日の日銀金融政策決定会合後に円が主要通貨に対して総じて売られたことから、2022円6月以来となる8.5円台までランドは上昇した。ただ、29日午後、日本当局による円買い介入(対ドル)観測を受けて、円高ランド安が加速し8.2円台まで押し戻された。30日に発表された3月貿易収支が前回及び市場予想を大幅に下回ったこともネガティブ材料となった。
ただ、5月2日に発表された4月製造業PMIは54.0と市場予想(50.5)、前回(49.2)をともに大きく上回ったことで、ランドは8.2円台を維持して取引を終えた。
ランド・円(東京時間:4月29日―5月3日)
※Investing.comの日足を参照
始値:8.4017円
高値:8.5126円
安値:8.2310円
終値:8.2622円
【先週と今週の重要指標】
※時間は東京時間
4月30日
15時00分、3月マネーサプライ(前年比)、前回:5.71%、市場予想:5.70%、結果:6.85%
21時00分、3月貿易収支、前回:133億ランド、市場予想:165億ランド、結果:73億ランド
5月2日
18時00分、4月製造業PMI、前回:49.2、市場予想:50.5、結果:54.0
5月9日
20時00分、3月製造業生産(季調前)(前年比)、前回:4.1%、市場予想:0.8%
20時00分、3月製造業生産(季調済)(前月比)、前回:−0.3%、市場予想:0.6%
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のランド円は、他の通貨同様、日本当局による円買い介入観測という需給面に振らされる展開となりそうだ。また、5月29日の総選挙が間近に迫っていることから、選挙に対する様々な思惑もランドの売買材料となろう。
南アフリカは 1994年の民主化以降、現在の与党であるアフリカ民族会議(ANC)が政権の座についていた。一方、汚職のまん延や党内対立のほか、電力不足問題の深刻化などからANCの支持率は低下しており、今回の選挙では「単独過半数の維持は困難」との声が多い。実際、2021年に行われた統一地方選での ANC の得票率は 50%を割り込み民主化後の最低を更新していた。
また、4月初旬に、選挙裁判所は、選挙管理委員会が過去の有罪判決を理由に立候補不可としていたズマ前大統領の総選挙への出馬を認めるとの判決を下した。既にズマ氏はANCを離党し「民族の槍(MK)」というANCと思想的に似た政党を率いていることから、ANCへの票がMKに流れる可能性が非常に高い。
2月世論調査の結果は、ANCの支持率が39%、「民主同盟(DA)」が27%、MKが13%、左派の「経済的開放の闘志(EFF)」が10%とANC単独政権の樹立は難しい状況にある。思想的に近いANCとMKが連立政権を目指す可能性はあるが、2018年にANCから罷免されたことで大統領を辞任したズマ氏がANCと組むことは無いだろう。むしろ、中道派で自由主義のDAが政権に加わった場合、これまでのANC単独政権に対する不透明感などが和らぎ、南アフリカの政治が安定に向かう可能性もある。
どちらにしても、総選挙後にANCが連立政権を模索し政権空白期間が長期化するリスクが高いとみられている。こうした政治リスクが根強いことから、ランドの上値を抑えると考える。
一方、テクニカルでは、日足の一目均衡表の雲上限を大きく上放れており、強いトレンドが見られる。4月29日の陰線及び上影(上ヒゲ)が、今後の重しとなる可能性はあるが、短期的なテクニカルは強いと判断できよう。長期的にも、22年6月以来となる8.5円台をいったんつけたことで、22年高値8.8153円を意識した動きも期待できるなどテクニカル面は短期、長期ともに強いと考える。
今週も、強いテクニカル VS 南アフリカ政治の不透明感という構図が続くなか、日本当局による円買い観測という需給面を睨んだ神経質な展開を予想する。
南アランド円日足
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