来週の為替相場見通し:『ドル円はアップサイドリスクに警戒』(5/18朝)

ドル円は5/3に一時151.87まで急落しましたが、その後は再び騰勢を取り戻し、今週は一時156.76まで急伸する動きとなりました。

来週の為替相場見通し:『ドル円はアップサイドリスクに警戒』(5/18朝)

『ドル円はアップサイドリスクに警戒』

〇今週のドル円、イエレン財務長官の介入牽制、米指標の好調、PPIの上ブレ等に156.76まで上昇
〇買い一巡後は米4月CPI、小売売上高等の不冴え等に週後半153.60まで下落
〇週末にかけては、本邦1-3月GDPの不冴え、米輸出入物価指数の上昇等に155円台後半を回復
〇ユーロドル、欧州指標の好調と米金利低下に週後半にかけ一時1.0896まで上昇、底堅く推移
〇ドル円、テクニカルには主要テクニカルポイントの上で推移、強い買いシグナルも継続、地合い強い
〇円キャリートレードの長期化期待、米政府によるドル高容認姿勢、株価の堅調等もドル円をサポート
〇ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇ユーロドルに関する相場見通しを従来までのベア(弱気)からブル(強気)へと変更
〇来週の予想レンジ(USDJPY):154.00ー157.00、(EURUSD):1.0750−1.1000

今週のレビュー(5/13−5/17)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初155.84で寄り付いた後、(1)ジェファーソンFRB副議長による「インフレの緩和が明らかとなるまで政策金利を据え置くことを支持する」とのタカ派的な発言や、(2)米4月ニューヨーク連銀1年先期待インフレ(結果3.3%、前回3.0%)および、同5年先期待インフレ(結果2.8%、前回2.6%)の伸び率加速、(3)イエレン米財務長官による「為替介入はまれな行為であるべき」「G7国の通貨は市場で決定されるべき」との牽制発言、(4)日米金利差に着目した円キャリートレードの長期化期待、(5)フィボナッチ半値戻し達成に伴うテクニカル的なドル買い・円売り、(6)米4月生産者物価指数(結果+0.5%、予想+0.3%)および、同コア指数(結果+0.5%、予想+0.2%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、週間高値156.76まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(7)上記6(生産者物価指数)の前月分の下方修正(+0.2%→▲0.1%)および、米当局が重視するPCE価格指数の算出に用いられる主要カテゴリー(外来医療費や航空運賃など)の鈍化が意識されたことや、(8)パウエルFRB議長による「次の動きが利上げになる可能性は低い」「インフレが持続するかどうかは分からない」とのハト派的な発言、(9)米4月消費者物価指数(結果+3.4%、予想+3.4%、前回+3.5%)の伸び率鈍化、(10)米4月小売売上高(結果±0.0%、予想+0.4%、前回+0.7%)の市場予想を下回る結果、(11)米5月ニューヨーク連銀製造業景況指数(結果▲15.6、予想▲10.0)の冴えない結果、(12)米5月NAHB住宅市場指数(結果45、予想50)の市場予想を下回る結果、(13)米FRBによる利下げ開始時期の前倒し観測(米長期金利急低下→米ドル売り)が重石となり、週後半にかけて、週間安値153.60まで急落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(14)急ピッチな下落に対する反動買い(押し目買い)や、(15)本邦1ー3月期実質GDP(結果▲2.0%、予想▲1.2%)の市場予想を下回る結果(日銀による追加利上げ観測後退)、(16)米4月輸入物価指数(前月比+0.7%、予想+0.4%)の市場予想を上回る結果、(17)米4月輸出物価指数(結果▲1.0%、予想▲1.1%)の市場予想を上回る結果、(18)リッチモンド連銀バーキン総裁による「CPIはまだFRBが目指す目標には達していない」とのタカ派的な発言、(19)クリーブランド連銀メスター総裁による「インフレ率が2%に向かうという確信を得るにはさらに時間がかかるだろう」とのタカ派的な発言が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間5/18午前2時00分現在)では、155.59前後まで持ち直す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0774で寄り付いた後、早々に週間安値1.0766まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)ドイツ5月ZEW景況感指数(結果47.1、予想45.9、前回42.9)の市場予想を上回る結果や、(2)ユーロ圏5月ZEW景況感指数(結果47.0、前回43.9)の良好な結果、(3)ユーロ圏3月鉱工業生産(結果▲1.0%、予想▲1.2%)の市場予想を上回る結果、(4)米経済指標(米4月消費者物価指数、米4月小売売上高、米5月ニューヨーク連銀製造業景況指数、米5月NAHB住宅市場指数)の冴えない結果、(5)上記4を背景とした米長期金利の急低下が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0896まで急伸しました。

週末にかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間5/18午前2時00分現在)では、1.0869前後で推移しております。尚、今週はスペイン中銀デコス総裁による「メインシナリオは6月の利下げ」との発言や、ポルトガル中銀センテノ総裁による「我々は6月の利下げ開始を期待している」との発言、ラトビア中銀カザークス総裁による「ECBは6月に利下げを開始する見込み」との発言が相次ぎましたが、7月以降の利下げについてヒントを与えなかったことから、ユーロ売りでの反応は限られました。

来週の見通し(5/20−5/24)

<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は4/29に記録した約34年振り高値160.24をトップに反落に転じると、5/3に一時151.87まで急落しましたが、その後は再び騰勢を取り戻し、今週は一時156.76まで急伸する動きとなりました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、雲上限)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続点灯していること、フィボナッチ38.2%戻しと半値戻しを達成したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日米金利差に着目した円キャリートレードの長期化期待(米FRBによる利下げ観測が再燃しつつあるものの、日米金利差は当面縮まらないとの思惑から、投資家によるドル買い・円売りスタンスは変わらず)や、(2)日本政府・日銀による為替介入観測の後退(米国はインフレ抑制に繋がるドル高を容認する構え→イエレン米財務長官は政府・日銀が4/29に実施した為替介入を容認しつつも、5/2実施の為替介入については「介入はまれであるべき」と強く牽制)、(3)株式市場の堅調推移(米金利低下→株高・リスクアセット上昇→リスク選好の円売り圧力)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(来週は米当局者発言が複数予定されているものの、サプライズ的な発言が出てくる可能性は乏しく、また、米国経済イベントの発表も少ないことから、日米金利差に着目した円キャリートレードの再開が意識され易い)。

来週の予想レンジ(USDJPY):154.00ー157.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は4/16に記録した安値1.0601(昨年11/2以来、約5カ月ぶり安値)をボトムに切り返すと、今週後半にかけて、一時1.0896(3/21以来、約2カ月ぶり高値圏)まで上昇しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限)を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の復調期待(今週発表されたドイツ5月ZEW景況感指数、ユーロ圏5月ZEW景況感指数、ユーロ圏3月鉱工業生産はいずれも良好な結果)や、(2)ECBによる7月以降の利下げ観測後退(ECB高官は6月利下げの可能性を肯定しつつも7月以降の利下げ判断は「データ次第で不透明」との見方を改めて強調)、(3)米FRBによる利下げ開始時期の前倒し観測(5/3の米雇用統計、5/15の米CPIおよび米小売売上高を受けて、米FRBによる早期利下げ観測再燃→米金利低下→米ドル売り)など、ユーロドル相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。

こうした中、来週は上記1を見極める目的で、ユーロ圏5月製造業PMI速報値や、ユーロ圏5月サービス業PMI速報値、ユーロ圏5月消費者信頼感指数速報値に注目が集まる他、上記2を見極める目的で、ユーロ圏1−3月期妥結賃金やECB高官発言(ラガルドECB総裁、シュナーベルECB専務理事、スロベニア中銀バスレ総裁、エストニア中銀ミュラー総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、ポルトガル中銀センテノ総裁など)に注目が集まります。ユーロ圏5月製造業PMI速報値や、ユーロ圏5月サービス業PMI速報値、ユーロ圏5月消費者信頼感指数速報値が市場予想を上回る場合には、欧州経済の復調を好感する形でユーロドルに上昇圧力が加わると考えられます。一方、ユーロ圏1−3月期妥結賃金については既に鈍化が織り込まれているため、余程大きなサプライズが見られない限り、ユーロ売りでの反応は限られそうです。

同様にECB高官による「6月利下げ発言」も既に織り込まれているため、7月以降の利下げ可能性について触れてこない限り、市場はユーロ売りで反応しないと考えられます(来週はECB高官発言が複数予定されているものの、敢えてこのタイミングで6月・7月連続利下げの可能性を滲ませてく可能性は乏しい)。以上を踏まえ、当方はユーロドルに関する相場見通しを従来までのベア(弱気)からブル(強気)へと変更いたします(目先は心理的節目1.1000を試すシナリオを想定)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0750−1.1000

注:ポイント要約は編集部

『ドル円はアップサイドリスクに警戒』

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