米CPI発表後の下落一巡で戻すも5月14日高値に届かず
〇先週のドル円、米4月CPI鈍化から16日に153.60まで下落するも、売り一巡後17日に155.97まで戻す
〇米景況感が悪化する一方で、インフレ鈍化に確信持てないとしてFRB関係者に利下げ躊躇の発言目立つ
〇米債利回り、米CPI発表後の急低下幅の解消には至らず、上昇一巡して低下期に入っているとの印象
〇NYダウ週末終値は40,003.59ドル、史上最高値を更新
〇155.97を超えて156円台へ乗せる場合は、5/14高値156.75試し、高値更新からは158円を目指すか
〇155円を割り込む場合は戻り一巡による下落期入り、5/16安値153.60割れからは151.85試しへ向かう
【概況】
ドル円は4月29日に160.16円を付けて1990年4月2日高値160.36円以来の160円台到達としたところから二度の市場介入により5月3日夜安値151.85円まで下げ幅8.31円の大幅下落に見舞われたが、介入ショックによる売り一巡で買い戻され、5月14日夜の米4月PPI発表直後に156.75円へ上昇して半値戻しの156円を超え戻り幅を4.90円とした。
5月15日夜の米4月CPI鈍化から米長期債利回りが大幅に低下したために16日午前に153.60円まで下落して5月14日夜からの下げ幅を3.15円としたが、米長期債利回りが反発に転じてCPIショックによる売りが一巡したために16日夜には155.52円へ戻し、17日夕刻には155.97円まで切り返した。17日深夜に155.24円まで小反落したところは買われて155.61円で先週を終えた。
【米景況感の悪化傾向とFRBの利下げ躊躇】
5月17日深夜発表の米4月CB景気先行指数は前月比マイナス0.6%となり市場予想及び3月のマイナス0.3%を下回った。4月米雇用統計や3月JOLTS求人件数等の労働指標の減速感に加え、直近のISM景況指数やNY連銀及びフィラデルフィア連銀の景況指数の悪化及びミシガン大消費者信頼感指数の悪化など景況感を示す米指標は米国の利下げを躊躇し過ぎることに対するリスクを示している。
パウエルFRB議長は14日にインフレ鈍化見通しについては以前よりも確信が低下した、確信が持てるまで時間がかかると述べ、5月17日にはFRBのボウマン理事はインフレ再燃なら「利上げをためらわない」、「基本的な見通しでは金利を現行水準で維持していればインフレは一段と鈍化する」と述べている。
FOMC参加者による利下げ想定は3月会合時点で年3回予想が2回予想をわずかに上回っていたものの現時点では2回利下げないしはそれ以下へと下方修正されていると思われる。次回のFOMC(6月11-12日開催)で年内2回利下げ想定が参加者の中央値となれば9月利下げ開始の可能性が高まり、1回利下げなら12月会合まで先延ばしされる可能性が高まると思われるが、利下げを躊躇することによる景気下振れリスクを踏まえれば6月と7月のインフレ鈍化が顕著なら9月利下げ開始は十分にあり得ると思われる。
今週は5月22日に公開されるFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨(4月30日〜5月1日開催分)での議論内容に注目が集まる。
【米長期債利回りは連騰するも5月15日の低下解消には至らず、株高基調は継続】
先週の米長期債利回りは5月15日のCPI発表後に大幅低下したところから16日、17日と連騰で戻したものの15日の低下幅解消には至らなかった。
長期金利指標の10年債利回りは5月15日に前日比0.10%低下の4.34%となり、4月25日に付けたこの間のピークである4.74%以降の最低を更新し、16日は4.31%まで続落してから持ち直して前日比0.04%上昇の4.38%としたが、17日も連騰して前日比0.04%の4.42%で週を終えた。週間では5月10日終値4.50%から0.08%低下した。
30年債利回りは5月15日に前日比0.09%低下の4.50%となり4月25日に付けた4.85%以降の最低を更新し、16日は4.47%まで低下してから持ち直して前日比0.01%上昇の4.51%としたが、17日も連騰で前日比0.05%上昇の4.56%で週を終えた。週間では5月10日終値4.64%から0.08%低下した。
2年債利回りは5月15日に前日比0.09%低下の4.73%となり4月30日に付けた5.05%以降の最低を更新し、16日は4.71%まで続落してから戻して前日比0.07%高の4.80%とし、17日も連騰で前日比0.03%上昇の4.83%で週を終えた。週間では5月10日終値4.87%から0.04%低下した。
一方でNYダウは前日比134.21ドル高の40,003.59ドルとなり史上最高値を更新した。コモディティ市場でゴールドやプラチナが急伸しているが、ドル安傾向による上昇に加えて中国の景気対策が貴金属や非鉄、原油等の需要を拡大するとの期待で資源株が買われたようだ。ナスダック総合指数は米長期債利回り上昇を嫌って12.35ポイント安と小幅下落したが5月16日に史上最高値を更新した後も高値圏を維持している。
【市場介入通過後のリバウンド一巡】
4月29日に160円台へ到達したところでの市場介入は5兆円規模とされ、5月2日早朝のFOMC通過後に157円台後半から戻り売りを誘う3兆円規模の二度目介入から一段安したために、三度目の介入を警戒しながら戻りを試す流れが続いてきたが、今のところは三度目介入は見られない。
@イエレン米財務長官が市場介入にネガティブな発言をしたことで政府・日銀も介入しづらい状況ではないかとの見方もあるが二度の市場介入後に神田財務官がいつでもいくらでも市場介入できるとしたことと一度目の介入水準以下で二度目の介入を行ったこと、A4月後半からのユーロ、ポンド、豪ドル、南アランド等の上昇によりドルストレートでのドル安基調が続いていること、B5月16日から17日へ米長期債利回りが反騰したものの5月15日の米CPI発表後の急低下幅の解消には至らず年初からの利回り上昇が一巡して低下期に入っているとの印象、
CFRB高官や地区連銀総裁らによる利下げ判断への慎重姿勢を示す発言が繰り返されているものの米国の9月と12月の利下げ期待度は高まっていること、D1990年4月以来の160円台を付けた当面の高値達成感により4月29日高値を超えるのはかなりハードルが高いとの市場心理が今後の上値を抑えやすくしているのではないかと思われる。
【5月14日高値超えへ進むか、5月16日安値割れから一段安するか試される】
ドル円は5月16日午前安値153.60円から17日夕高値155.97円まで戻したものの5月3日夜安値151.85円以降の高値である5月14日夜高値156.75円には届かずにいる。
5月14日夜高値156.75円を超えれば5月3日夜安値を起点とした上昇が二段上げに入るため、5月2日早朝に二度目の市場介入を行った時の直前高値157.58円を試しに向かうと思われる。介入水準へ戻すことを拒絶するように三度目の介入があれば前2回の介入時と同様に直前の水準から5円前後規模の急落反応を招くと思われるが、三度目の介入がみられないようなら4月29日の一度目介入前高値160.16円を試す流れへ進み、さらに4月29日高値も超えて円安基調が長期化するとの見方も強まると思われる。
5月14日夜高値を超えずに5月16日安値を割り込む場合は5月3日安値をもう一度試す流れへ進みやすくなると思われる。円の独歩安感よりも4月後半からのドルストレートにおけるドル安感が勝る場合はこのケースと考えるが、5月3日夜からのドル円の反騰よりもクロス円全般の反騰の勢いが勝っており、すでに南アランド円は4月29日の介入時を超えて一段高に入っているため、市場介入がなく主要なクロス円が総じて4月29日高値を超える場合にはドル円もクロス円からの円安圧力により5月14日高値を超えて4月29日高値へ迫ってゆく可能性が高まると注意したい。
以上を踏まえて中勢のポイントを示す。
(1)当面、5月16日安値153.60円を下値支持線、5月14日高値156.75円を上値抵抗線とする。
(2)5月17日夕高値155.97円を超えて156円台へ乗せる場合は5月14日高値試しとし、高値更新からは158円を目指す上昇を想定する。157.50円以上は市場介入も含めて反落警戒水準とみるが、介入なければ1円から2円弱の反落を入れながら徐々に4月29日高値160.16円へ迫ってゆく流れと考える。
(3)5月14日高値を超えずに155円を割り込む場合は戻り一巡による下落期入りとし、5月16日安値153.60円割れからは5月3日安値151.85円試しへ向かうとみる。途中で1円から2円弱の戻りを入れながら一段安を繰り返すパターンと考える。円の独歩安感が薄れてドルストレートでのドル安が勢いを増す場合はこのケースとし、先行きは150円割れへ向かう流れと考える。
【当面の予定】
5/20(月)
休場 ノルウェー、スイス、カナダ
21:45 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、会議挨拶
22:00 (米) バーFRB副議長、講演
5/21(火)
08:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁裁、会議司会
09:30 (豪) 5月 ウエストパック消費者信頼感指数 (4月 82.4)
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨公表
13:30 (日) 日銀「金融政策の多角的レビュー」第2回ワークショップ
15:00 (独) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 0.2%)
17:00 (欧) 3月 経常収支・季調済 (2月 295億ユーロ)
17:00 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、イベント出席
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調済 (2月 179億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調前 (2月 236億ユーロ)
22:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、挨拶
22:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
22:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、挨拶
22:10 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、挨拶
24:45 (米) バーFRB副議長、談話会
26:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
5/22(水)
休場 シンガポール
08:00 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、メスター・クリーブランド連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会
08:50 (日) 4月 通関貿易収支・季調前 (3月 3665億、予想 -1030億円)
08:50 (日) 4月 通関貿易収支・季調済 (3月 -7015億円)
08:50 (日) 3月 機械受注 前月比 (2月 7.7%)
08:50 (日) 3月 機械受注 前年同月比 (2月 -1.8%)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%)
15:00 (英) 4月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (3月 0.6%)
15:00 (英) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 3.2%)
15:00 (英) 4月 コアCPI 前年同月比 (3月 4.2%)
15:00 (英) 4月 RPI(小売物価指数)前年同月比 (3月 4.3%)
22:40 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、挨拶
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数・年率換算 (3月 419万件、予想 416万件)
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数 前月比 (3月 -4.3%、予想 -0.7%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC議事要旨・4月30日-5月1日分
5/23(木)
休場 インドネシア
G7財務相・中央銀行総裁会議(5月25日まで)
07:45 (NZ) 1-3月期 小売売上高 前期比 (10-12月 -1.9%)
16:30 (独) 5月 製造業PMI速報値 (4月 42.5)
16:30 (独) 5月 サービス業PMI速報値 (4月 53.2)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI速報値 (4月 45.7)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI速報値 (4月 53.3)
17:30 (英) 5月 製造業PMI速報値 (4月 49.1)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI速報値 (4月 55.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.4万人)
22:45 (米) 5月 製造業PMI速報値 (4月 50.0)
22:45 (米) 5月 サービス業PMI速報値 (4月 51.3)
23:00 (欧) 5月 消費者信頼感速報値 (4月 -14.7)
23:00 (米) 4月 新築住宅販売件数・年率換算 (3月 69.3万件、予想 68.0万件)
23:00 (米) 4月 新築住宅販売件数 前月比 (3月 8.8%、予想 -1.9%)
28:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、質疑応答
5/24(金)
休場 インドネシア
07:45 (NZ) 4月 貿易収支 (3月 5.88億NZドル)
08:01 (英) 5月 GFK消費者信頼感 (4月 -19)
08:30 (日) 4月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 2.7%、予想 2.4%)
08:30 (日) 4月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (3月 2.6%)
08:30 (日) 4月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (3月 2.9%)
15:00 (英) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.0%)
15:00 (英) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 0.8%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.2%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP改定値・季調済 前年同期比 (速報 -0.2%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP改定値・季調前 前年同期比 (速報 -0.9%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注 前月比 (3月 2.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (3月 0.2%、予想 0.2%)
22:35 (米) ウォラーFRB理事、講演
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 67.4、予想 67.4)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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