短期的にはスピード調整のユーロ売りが出やすい
〇先週のユーロは5/25安値1.0871から先週金曜高値1.1384まで500pipsを超える大幅上昇
〇金曜には米国雇用統計の大幅改善でいったんドル買いの動きに
〇この2週間のユーロの上昇はテクニカルな要因が強かったか
〇今週は調整が入りやすく1.1200レベルをサポートに、1.1375レベルをレジスタンスとする週か
〇ユーロ円もここ2週間の大幅上昇で高値124.43レベルと125円を伺うほどの水準へと切りあがる
〇長期下降トレンドに大きな転換を迎えているとみられるチャート、ユーロ円の上昇否定は難しい
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、前週に続いてユーロ高の流れが継続したことで、5月25日の安値1.0871レベルから先週金曜高値1.1384レベルまでの上昇幅は500pipsを超える大幅上昇となってきました。前週は欧州委員会による経済復興資金の話がユーロ買い材料とされていましたが、今週は米国内における警官による暴行致死のデモが全米に広がる動きによるドル売りが対ユーロで見られたこと、またECB理事会において緊急プログラムを6000億ユーロ増額し1兆3500億ユーロへと、期間も2021年6月へと延長、その後の再投資も2022年末まで継続するとの発表がユーロを下支えしました。
金曜には米国雇用統計の大幅改善でいったんドル買いの動きとなったことや、EUと英国との移行期間後の協議に前進が見られなかったことも週末前の調整売りとなりました。また、株式市場の大幅高の動きがリスクオンとなってドル円、ユーロ円の買いになっている動きとなっていますが、ドル円の週報に書いたように金曜にはナスダックが史上最高値更新という驚くべき流れになり、そろそろ達成感が出てきそうなことがユーロ円の下げにつながるかどうか、ユーロ、ドル、円のそれぞれの動きが絡み合って見通しにくい流れになってきました。
今週は月初の1週間が過ぎて経済指標は全般に重要度の低いものが多いのですが、先週のECB理事会に続いてFOMCも注目材料となりますが、特に金融政策を調整するような予想は無いもののECBに続いて何らかの支援拡充が示される可能性も否定できません。その場合には好感されて改めて米国株高となるのでしょうが、今回は経済見通しの発表も行われますので、支援拡充は無しかつ見通しが厳しいものであれば、株安という動きが予想されます。
FOMCについてはドルの動きと、株式市場への影響から円の動きが出てきそうです。いっぽうでユーロの材料はこの2週間でかなり出尽くした感があり、欧州委員会とECBを材料にしたユーロ高、そこにブレグジットの話に前進が無いことによる若干のユーロ売りというところです。今週はどちらかと言えば目立った材料が出にくい中で、先週のユーロ高の動きに対して調整を考える週となりやすいという見方をしています。
テクニカルには次の日足チャートをご覧ください。
先週火曜に3月下旬の戻り高値(ピンクの水平線)を上抜けたところからユーロ高に弾みがついたことがわかりますが、前週も4・5月の高値圏を抜けてから買いが強まったと考えると、この2週間のユーロの上昇は多分にテクニカルな要因が強かったのではないかと見ることもできます。
シカゴ通貨先物のポジション的にも3月中旬以降は安定したユーロ買いのポジションが続いていて、先週時点でもかなり高水準のロングとなっています。金曜の引けで発表された数字が2日火曜時点のものですから、そこからも更に買いが増えている可能性もあることを考えると、このままユーロ買いの流れが続くのかとなると悩ましいところです。
チャートに戻ると既に3月高値と安値のフィボナッチ・リトレースメントは全てのターゲットを達成していますので、残すは100%戻しの1.1495しかありませんが、上述の通りで今週はそこまでの動きにはならず、目先の高値は先週見た可能性が高いと考えています。その場合、ここ2週間の上げに対する調整を考えますので、前週安値と先週高値に対するフィボナッチ・リトレースメントのうち38.2%押しとなる1.1188レベルに近い1.12水準への押しを考えます。現行水準からはかなり距離がある感じはしますが、ここまでの上げ幅が大きくたかだか先週水曜の水準に過ぎません。
ある程度の値幅を考え、今週は調整が入りやすいというシナリオを考えると、1.1200レベルをサポートに、1.1375レベルをレジスタンスとする週を見ておくことが妥当だと思います。
今週のコラム
今週はユーロ円の週足チャートを見てみましょう。
ユーロ円もここ2週間の大幅上昇で高値124.43レベルと125円を伺うほどの水準へと切りあがってきました。ユーロドルのコメントで書いた通り短期的にはスピードの調整から売りが出やすいと見ていますが、テクニカルには2018年9月からのレジスタンス(青)も2018年高値からのレジスタンス(ピンク)も上抜けたことで長期下降トレンドに大きな転換を迎えていると見なくてはならないチャートです。
そこまでユーロ円を買う材料も無さそうなのですが、テクニカルには長期的にユーロ円の上昇を否定することは難しいでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
6月8日(月)
15:00 ドイツ4月鉱工業生産
6月9日(火)
08:01 英国5月小売売上高
15:00 ドイツ4月貿易収支
15:45 フランス4月貿易収支
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP確報値
**:** OPEC総会
6月10日(水)
15:45 フランス4月鉱工業生産
**:** OPECプラス
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見
6月11日(木)
08:01 英国5月住宅価格
**:** ユーロ圏財務相会合
6月12日(金)
15:00 英国4月貿易収支
15:45 フランス5月CPI
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
6月1日(月)
ユーロドルは前週のユーロ高の流れを継続し一時1.1154レベルと前週高値を更新する動きを見せました。米中対立懸念や米国内で広がるデモ活動を背景としたドル売りの動きが対ユーロで進んでいるという印象でした。他のクロスを見ると逆にユーロは資源国通貨やポンドに対して売られていることから、ユーロ高ということでも無く直近のドル売り材料が対ユーロで反応しているという見方をされている様子でした。
6月2日(火)
ユーロドルは東京市場ではまったく動きが見られませんでしたが、欧州市場前場に月曜高値を上抜けるとストップオーダーを引っ掛けて上昇、対ドルだけでなく対円でも上昇する動きとなりました。その後もユーロは底堅い動きを続け、NY市場ではユーロドルが1.1196レベル、ユーロ円は121.63レベルの高値をつけそれぞれ高値圏で引けました。
6月3日(水)
ユーロドルは、最近の流れを継続しじり高の流れを続けていましたが、欧州市場の昼ころにはいったん動きが止まり東京朝方の水準へと押しました。しかし、NY市場ではダウ上昇の動きとともに3主要通貨ペアともに上昇を再開し、後場には1.1258レベルの高値をつけ、そのまま高値圏での引けとなりました。
6月4日(木)
ユーロドルは東京市場から欧州市場朝方まではじり安の展開となり、ECB理事会の直前には1.1194レベルの安値をつけていました。しかしECB理事会において緊急プログラムを6000億ユーロへと増額、期間も2021年6月へと延長するとの発表にユーロは上昇、1.1273レベルの高値をつけました。その後ユーロは対ドル、対円で一段高となりNY昼前にはユーロドルが1.1362レベル、ユーロ円も後場に123.96レベルの高値をつけ、それぞれ高値圏での引けとなりました。
6月5日(金)
ユーロドルは、東京後場に特に材料が無い中で前日高値を抜けたことによるテクニカルな買いがユーロを対ドル、対円で上昇させる動きとなりました。しかし、前日ECB理事会後の買いに加えイベント前にやや買いが先行しすぎたこともあったのか、その後はポジション調整とEU・英国の協議に前進が見られなかったことも重なって東京朝方の水準を下回ってのNY市場入り。NY市場では雇用統計後のドル買いの動きからユーロは一段安となり、安値1.1279レベルとほぼ前日ECB理事会前の水準へと押し安値圏での引けとなりました。
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