今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、月曜早朝市場に年初来安値となる1.0636(東京市場以降は1.0658)をつけ、その後は週を通してユーロ買いが続き金曜NY市場には1.1147レベルの高値をつけました。500pips以上の値幅を週足で見れば寄り付き安値の高値引けという大陽線ということになります。
材料としては欧州における新型コロナウイルスによる景気大幅悪化懸念やドル資金ひっ迫の状態が月曜でピークを迎えたということになりますが、主要中銀が協調しての緩和と流動性供給においてECBも無制限のQE(数値はあるが緊急時見直しを確約)を実行に移したことでひとまず金融市場は安定を取り戻しました。
また、感染者が急増するパンデミックはこれまでのEC域内の移動の自由に制限を与える結果となりましたが、現在進行中の景気減速に加え、パンデミックが収まった後でも一度閉じた国境が再び元に戻るには時間がかかるのではないかという懸念を示す人もいます。ただ、ここを否定してしまうとEUの大きな柱を失うことになるため、個人的には状況が収まれば元に戻るものと思います。
問題は金融市場のおける対応や各国政府による景気対策は良いとして、いつまで今の状況が続くのかという点ですが、中国では感染源と考えられる武漢市が封鎖されたのが1月23日、その後中国国内では約1か月で感染者数拡大が止まり、その後1か月の感染者数は微増に留まっていました。武漢市が封鎖の部分解除を行ったのが3月28日ですから2か月というのは大きな目安です。
しかし、感染者が急増してから2か月というのは、欧州に当てはめると5月初め頃までを意味します。実際に欧州各国ではこれまで実施していた外出制限の期限を延長し、フランスでは4月15日まで延長して様子を見ることとしています。その時点の状況次第では更なる延長もあるでしょうし、平時の経済状況に戻るにはかなりの時間が必要なことも確かです。EU全体としておそらく四半期分近い生産性が失われるであろうことを考えると通貨にとっても悪影響は出てくるでしょう。
もちろんEUだけでなく米国も日本もどこもかしこも影響を受けるのですが、今回のパンデミック前の状況を比較するとやはり欧州の景気が一番弱かったと思いますので、5月以降を見据えた場合にはユーロはどこかで相対的に弱くなる流れに戻るのではないかと考えられます。
今週に限って言うと先週発表された主要国のPMI改定値が発表されます。速報値でも十分に悪く特にサービス業の悪化が目立ちましたが、1日の製造業PMI、3日のサービス業PMIが速報値から更なる下方修正となるのかは確認しておきたいところです。また31日にはドイツの3月失業率等が発表されますが、予想ではあまり悪化予想とはなっていません。このあたりも実際にどうなのかはチェックでしょうか。
今週は先週からのドル需給緩和によるドル売りと欧州材料を見てのユーロ売りとの綱引きを考えていますが、テクニカルにはどうでしょうか。チャートをご覧ください。
3月につけた年初来高値と安値が当面のレンジとなることは間違いなさそうですが、安値からの反発は既に61.8%戻しに近い水準にまで来ています。ドル資金の調達が行われ為替市場でのドル売りが出たにしてもかなり調整が進んだのではないかと思わせる値幅となっていて、1.12を超える水準ではユーロ売りを考える向きが出てきてもおかしくありません。
また下値は先週金曜の安値圏を下回るユーロ安もまた考えにくいと思いますので、今週は1.0975レベルをサポートに1.1225レベルをレジスタンスとするレンジを見ておきます。
今週のコラム
今週はユーロ円日足を見てみます。
直近のユーロ円はドル円よりもユーロドルにおけるドル売りの勢いが強かったこともあって、一週間で117円台後半から121円台前半へとユーロ高の動きとなっていました。
しかし、チャートを見るとわかりますが、121円水準(黄色のラインマーカー)は、ここ2カ月ほど何度か試して反落した水準で、今回も同水準はレジスタンスとなったことがわかります。また現状は先週の上げに対してやや下押ししやすい局面にあると見ていますが、その場合の目途として、3月安値と高値の半値押しにあたる118円台半ばが視野に入ってくると考えられます。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
3月30日(月)
**:** 欧州市場夏時間移行
18:00 ユーロ圏3月消費者信頼感確報値
21:00 ドイツ3月CPI速報値
3月31日(火)
08:01 英国3月GFK消費者信頼感
15:00 英国10〜12月期GDP改定値
15:45 フランス3月CPI速報値
16:55 ドイツ3月失業率
18:00 ユーロ圏3月CPI速報値
4月1日(水)
16:50 フランス3月製造業PMI改定値
16:55 ドイツ3月製造業PMI改定値
17:00 ユーロ圏3月製造業PMI改定値
17:30 英国3月製造業PMI改定値
18:00 ユーロ圏2月失業率
4月2日(木)
18:00 ユーロ圏2月PPI
21:30 米国新規失業保険申請件数
4月3日(金)
16:50 フランス3月サービス業PMI改定値
16:55 ドイツ3月サービス業PMI改定値
17:00 ユーロ圏3月サービス業PMI改定値
17:30 英国3月サービス業PMI改定値
18:00 ユーロ圏2月小売売上高
21:30 米国3月雇用統計
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
3月23日(月)
ユーロドルはNY市場まではドル円と歩調を揃えて前週ポジションの利食いによるドル売りの動きからユーロ買いが先行後にユーロ売りという流れでNY市場入り。NY市場ではダウが買われる動きにユーロ円が反応しユーロ円での買いがユーロドルの買いにもつながりました。引けにかけてはドル円同様にドル買いの動きが出たことからユーロ売り、そして引けはやや戻すという展開となりました。
3月24日(火)
ユーロドルは東京市場ではドル需給緩和によるドル売りからのユーロ買いで、欧州市場一連のPMI速報値の発表待ちとなりました。製造業は予想よりも強くサービス業はかなり悪いという結果でしたが、為替市場への影響も特段見られず、ユーロ買いの流れが続きました。NY市場ではドル買いの動きからユーロは反転下落、東京前場の水準へと下押しした後に若干戻して引けました。
3月25日(水)
ユーロドルは底堅い流れが続いていましたが、NY市場に入りECBによる無制限債券買い入れ思惑が高まり、引けにかけてユーロは1.0894レベルまで水準を切り上げ、そのまま高値圏での引けとなりました。
3月26日(木)
ユーロドルも為替市場全般に見られたドル売りの動きに素直に反応し1.10の大台を超える大幅高となりました。これは以前のドル買いに対する調整が対ユーロでも大きかったことによりますが、ECBによる債券購入開始やFRBの発言も重なり資金市場の逼迫は落ち着きを取り戻してきました。ただユーロドルは1.10の大台では売買が交錯し、いったん踊り場といった動きでの引けとなりました。
3月27日(金)
前日の流れを継続してドル売りが先行、株価の上値が重たかったことも従来のリスクオフへとつながりドル安の流れを後押しすることとなりました。東京昼前には下げ止まり欧州市場序盤には買い戻しも見られましたが、109円台に戻すのがせいぜいでNY市場では改めてドル売りの動きが広がりました。経済指標もある程度わかってはいても予想より悪い数字となったことが売り材料となり107.75レベルまで下押し後も安値圏での引けとなりました。
いっぽう、ユーロドルは東京市場ではドル売りの動きからユーロ買いが先行していたものの、欧州市場に入り欧州株式市場の下げとともにユーロドルにも売りが入りました。NY市場ではドル売りの動きが強まったことから一転ユーロは買い戻しの動きとなり1.1147レベルまで上昇し高値圏での引けとなりました。
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