今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは同じ欧州通貨のポンドがブレグジット代替案の合意期待から一本調子で上がる中、水曜まではもみあいで方向感無し、木曜はECB理事会後のドラギ総裁会見で下押しする動きはあったものの後から振り返るとダマシとなりました。金曜のユーロは最終的にポンド買いの動きと歩調を揃え、テクニカルな買いが短期筋のストップを巻き込んでの上昇となっています。
1.12台に押した後の1.14台ということで、かなり上がった感じもするのですが、1.14台は1月中旬の水準に戻したにすぎず、これまで下げてきた動きに対して調整が入ったという見方で良さそうです。今週はFOMC、雇用統計と米国のイベントが目立ちますが、欧州からも連日のように経済指標が発表されますし、中銀総裁の発言も週初から多いため内容次第ではどちらにも振れる可能性があります。
さらに、火曜のNY時間にはメイ首相によるブレグジット代替案の採決が予定されています。閣外協力している北アイルランド与党DUPがメイ首相支持に回ることがほぼ決まっていますが、それでも与党議員全てがメイ首相による代替案に賛成というわけではありません。与党議員あるいは与党議員も含めた野党議員から出ている修正案も複数あり、期限延期、離脱権限を政府から議会に移譲、合意無き離脱の削除、バックストップの早期失効等、かなりの数に上る案が提出されている状態です。
メイ首相の修正案と、その他の案を29日の英国議会で採決にかけていきますが、一部の修正案の提出者に与党議員が含まれているということを考えると、すんなりと可決されるとは限りません。その場合、最近のブレグジットに対する楽観的な思惑によるポンド買いが一気にひっくり返る可能性もありますので、29日は欧州通貨にとっては要注意の日となってきます。
先週も書いた通りで、代替案が否決された場合は議会側が代替案を作成、そしてその議会側の代替案も通らない場合、各委員会の委員長で検討する可能性と再び不透明な状況へと戻るリスクが比較的高いため、EU側の対応次第ではありますがハードブレグジットとなる可能性が拭い去れません。先週木曜にはエリザベス女王も国民に共通点を見出すようにとの発言が出ていることを考えると、採決直前でもいまだ共通の案に到達するのが困難な状況にあるということであると考えられます。
既にここに至るまでのポンド買いで、昨年9・10月の高値圏にまで水準を回復しています。これは合意を織り込んでの買い戻しと考えられ、仮に合意となっても上値は限定的、逆に再度否決となった場合にはポンドもユーロも売られる可能性を考えておいたほうがよいでしょう。ブレグジット案については最終的に結論が出るまでは何があってもおかしくはないこと、また長期的には英国の離脱は英国にも欧州にも悪材料となる可能性が高いことを考えると、ポンドもユーロも現行水準から上を買っていくのは難しいと思います。
テクニカルにはどうでしょうか。先週と同じラインを残した日足チャートをご覧ください。
日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
悩ましいのが黄色のラインマーカーで示した部分で、それまでのサポートを抜けたと思ったら切り返しと大きなダマシを見せています。サポートはピンクのラインから青のラインへと引き直さざるを得ませんが、これまで書いてきた通り果たしてユーロが上がるのかと考えると難しいと見ています。明日の採決次第ですが再び1.13をトライする流れの可能性は高いと見ています。
その場合、戻し高値は1月高値と安値の61.8%戻しにあたる1.1463(青のターゲット)が考えられます。今週は戻り売りの動きを考え、1.1465レベルをレジスタンスに、1.1300レベルをサポートとする流れを見ておきます。
今週のコラム
先週に引き続きブレグジットとポンドが市場の関心を集めていますので、今週もポンドドルのチャートを見てみましょう。
こちらも先週と同じラインを残しながら、いくつか新たな水平線を引いてあります。
既に1月3日安値を無視した上昇チャンネルも9月からのレジスタンスラインも上抜け、テクニカルには強い地合いと言わざるを得ませんが、不確定要因での思惑買いという点が気になります。ここから上では10月高値、9月高値といった水準が残っていますが、1月中旬以降の急速な上げ相場を見ていると、仮に上がるとしてもいったん調整を挟んだ方が自然な上昇です。
明日の結果を見る前に何を書いても空しいのですが、ポンドドルは短期的には高値圏に近い水準にあるとみたいところで、1.30の大台近いところまでの押しは可能性として考えておきたいところです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
1月28日(月)
17:45 オーストリア中銀総裁講演
23:00 ドラギECB総裁欧州議会証言
23:30 英中銀総裁講演
1月29日(火)
16:45 フランス1月消費者信頼感
**:** 英国議会ブレグジット代替案採決
1月30日(水)
15:30 フランス10〜12月期GDP速報値
16:00 ドイツ2月GFK消費者信頼感
16:45 フランス12月PPI
19:00 ユーロ圏1月消費者信頼感確報値
22:00 ドイツ1月CPI速報値
28:00 FOMC結果発表
28:30 パウエルFRB議長会見
1月31日(木)
09:01 英国1月GFK消費者信頼感
16:45 フランス1月CPI速報値
17:55 ドイツ1月失業率
19:00 ユーロ圏12月失業率
19:15 メルシュECB理事講演
25:00 ドイツ連銀総裁講演
2月1日(金)
17:50 フランス1月製造業PMI改定値
17:55 ドイツ1月製造業PMI改定値
18:00 ユーロ圏1月製造業PMI改定値
18:30 英国1月製造業PMI
19:00 ユーロ圏1月CPI速報値
22:30 米国1月雇用統計
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
1月21日(月)
週明けはメイ首相によるブレグジットの代替案待ち、NY市場が休場となることもあってほとんど動かないままNY市場入りとなりました。しかし代替案が与党内での合意を得ることで過半数を取ることが目的で、これまでと大きな変化が無かったことで肩透かしをくらった感じでした。ポンドも反応は鈍くやや買われた程度、ユーロドルも30pips強と次の材料待ちでの引けとなりました。
1月22日(火)
ユーロドルはユーロ円がドル円とともに株価を見ながらリスクオフの流れで売られたことで上値が重たい展開が続きました。NY市場では1.1335レベルまで下げましたが、引けにかけてはドル売りの動きから急速に買い戻され、ユーロ自体の材料には反応しないままに終わりました。
1月23日(水)
ユーロドルはNY市場まではもみあいを継続し、ポンドの上昇にも影響が見られませんでした。NY市場では前場のダウ上昇には反応が鈍かったものの、その後の下げではドル円同様にドル売りとなり、ユーロは買われ1.13台後半へとやや水準を切り上げての引けとなりました。
1月24日(木)
ユーロドルは、欧州市場序盤は弱い経済指標に反応してユーロ売りが先行、その後ECB理事会後のドラギ総裁会見で下振れ懸念に言及したことをきっかけにユーロが一段安、一時1.1307レベルへと水準を切り下げました。その後、ロス商務長官が米中通商協議が進展していないことに言及し、ドル売りユーロ買いで反応したものの、引けにかけては再びユーロ売りの動きとなり1.1289レベルまで下値を伸ばしたのちに、やや戻しての引けとなりました。
1月25日(金)
ユーロドルは終日ユーロ買いが続きましたが、NY市場まではリスクオンの円売りの動きがユーロ円でも目立っていたことがきっかけとなってのユーロ買いとなりました。その後のNY市場ではFRBがバランスシート縮小停止の議論をしているとのニュースがドル売りのきっかけとされました。またポンド買いがユーロにも影響していました。NY後場のトランプ大統領による政府機関再開のアナウンスがありましたが、こちらは反応薄。ユーロドルは週末前のテクニカルなストップオーダーも巻き込んで1.1418レベルまで水準を切り上げて高値圏での引けとなりました。
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