ユーロドル レンジ内でのもみあい継続(11月第1週)

ブレグジット協議の遅れ、イタリア予算案への懸念、メルケル首相の求心力低下が、ユーロの一段安を誘い8月安値1.1301に迫る1.1302まで水準を切り下げました。

ユーロドル レンジ内でのもみあい継続(11月第1週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、欧州にとっての3重苦ともいえるブレグジット協議の遅れ、イタリア予算案への懸念、メルケル首相の求心力低下が、ユーロの一段安を誘い8月安値1.1301に迫る1.1302まで水準を切り下げました。しかし、1.13にはオプションがあることから、今回も下抜け出来ず反転上昇。週間高値を更新後にECBの長期資金供給オペの思惑からやや押して一週間を終わることとなりました。

欧州の悪材料はどれも中長期的なテーマで、今のところは何ら好転する兆しが見えません。ブレグジット協議も進展しているといった話が出てきては否定されと、結局は何も決まっていないのと同じです。協議延長という案も出てはいますが、それでも合意に至らなければハードブレグジット(合意無き離脱)の可能性が着実に高まっているということになります。

イタリアの予算案は、いまは欧州からイタリアへとボールが投げられ、再提出の期限が来週13日に迫っています。イタリアは修正する意思は無さそうですが、本日5日にブリュッセルで非公式のユーロ圏財務相会合が開かれます。イタリアに対して再考を促し、それに対してどのような対応をするのか、あるいはまったく再考の余地なしのまま期限を迎えるのか、念のためチェックしておきましょう。その後は、もし修正案が出るならば更にEUがそれに対して可否の判断をする最終期限が12月4日となっていますが、ある意味、それまでは続くテーマとも言えます。

また、ドイツでは地方選挙で与党CDU/CSUが2連敗したことからメルケル首相は12月に開かれる党首選には出ないとしています。2000年から18年にわたって党首を務めてきましたが、党首でない人物が首相を続けるのかどうか首相の任期は2021年まであり、メルケル首相は続けると言っているものの12月に向けて予断は許さないかもしれません。ただ、あくまでも与党内での人事ともいえ、党首選間近までは材料視しなくてよい気もします。

どれもすぐに結果が出てこないものばかりで、こうした材料がユーロの上値を重たくせざるを得ません。いっぽうで、下値もまた悩ましい状況です。8月にトランプ大統領がユーロ安をけん制したのが1.1301の安値を付けた直後のことですが、1.1300にオプションがあることは間違いなさそうですから、最終的に抜ける可能性は高いとは思うものの1.13台前半ではまだまだユーロ買いが出てくると思われます。どうも現状は1.13と1.15に挟まれたレンジの中で、どちらにも抜け切れない状況となっています。

テクニカルな面はどうか、日足チャートを見てみましょう。

ユーロドル日足

ユーロドル日足

日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

9月下旬の高値と10月中旬の高値を結んだレジスタンスライン(ピンク)の位置で金曜は反落する動きとなりました。これは長期資金供給オペの思惑によるユーロ売りでしたが、テクニカルにはまさにレジスタンスで反落していることがわかります。さらにこの反落したポイントは10月中旬の高値と先週安値との半値戻し1.1462(赤のターゲット)ともほぼ一致していることから、一回は下げてもおかしくない水準でした。次回上げてきた場合には61.8%戻しの1.1499(赤のターゲット)がありますが、これはちょうど1.15の大台と重なります。

下値1.13はオプションから、上値1.15はテクニカルな面から補強されていますが、当面はこれらに挟まれるレンジの中での動きを継続しやすく、特に上述のレジスタンスラインとの位置関係は日々見ておきたいところです。明日は米国中間選挙がありますが、ドル円の週報に書いた通り番狂わせが無ければ為替市場に与える影響はあまり大きくはないと見ています。今週はレンジ継続を前提に1.1320レベルをサポートに1.1450レベルをレジスタンスと先週より更に狭いレンジを提示しておきます。

今週のコラム

ユーロ円日足

ユーロ円日足

チャートを見るとわかる通り、9月下旬の高値から10月下旬の安値までレジスタンスを上ヒゲで抜いた一日を除いてピンクの平行線で示した下降チャンネルの中での推移を続けていました。しかしドル円が株価を見ながらリスクオンの円売り、いっぽうユーロドルは1.13をトライしきれず8月安値とほぼ同レートで反転とユーロ円は2つの動きに支えられ、この下降チャンネルを上抜けすることとなりました。

10月の安値は8月安値と9月高値の78.6%(61.8%の平方根)押しの126.67(赤のターゲット)で止まりました。次に9月高値と実際の安値126.64を使って戻しを計算すると半値戻しが129.88(青のターゲット)とほぼ130円の大台と重なります。ドル円も113円台前半はドル高警戒感が出やすい水準であることを考えると、ユーロ円もここから上がっても130円の大台は上値が重たくなってくると考えられます。

また、安値は既に中期的に10月安値で終わったと見ていますので、現行水準からの下げは127円台後半(10月末前後の安値圏)で止められやすいといえるでしょう。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

11月5日(月)
18:30 英国10月サービス業PMI
21:45 デギンドスECB副総裁講演

11月6日(火)
16:00 ドイツ9月製造業受注
16:30 プラートECB理事講演
17:50 フランス10月製造業PMI改定値
17:55 ドイツ10月製造業PMI改定値
18:00 ユーロ圏10月製造業PMI改定値
19:00 ユーロ圏9月PPI
20:15 クーレECB理事講演
21:00 ラウテンシュレーガーRCB理事講演
**:** 米国中間選挙

11月7日(水)
16:00 ドイツ9月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏小売売上高

11月8日(木)
16:00 ドイツ9月貿易収支
16:45 フランス9月貿易収支
18:00 ECB月報
29:00 FOMC結果公表

11月9日(金)
18:30 英国7〜9月期GDP速報値
18:30 英国9月貿易収支

前週のユーロレンジ

        始値   高値   安値   終値
ユーロドル  1.1398  1.1456  1.1302   1.1389
ユーロ円   127.57  129.32   127.25   128.94

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

10月29日(月)
ユーロドルは東京市場では動きが見られませんでしたが、欧州市場に入りメルケル首相が年末の党首選に出ないとのニュースに売りが先行、その後は株高の動きとともに一転上昇と神経質な動きとなりました。その後は全般的なドル買いの動きから上値は重たくなりましたが、特段目立った動きともならずに引けました。

10月30日(火)
ユーロドルは、ブレグジット、イタリア予算、ドイツ政局とまったく同じことを材料として、相変わらず上値の重たい展開となりました。NY市場の朝方にいったん買い戻しが入った後は再び下げに転じ、金曜安値こそ下回らなかったものの一日の安値圏での引けとなりました。

10月31日(水)
ユーロドルは東京市場では全く動かず。欧州市場では序盤は底堅い動きとなっていたものの、上値もこれまで同様に重く先週安値を割り込むと一段安の流れとなりました。NY市場ではブレグジットに関連した発言でポンドが上下する動きにつれてユーロも上下に振れる場面は見られましたが、じり安となり1.1302レベルと8月安値にほぼ並ぶ水準まで下押し。1.13ではオプション絡みの買いオーダーもあることから、その後は若干戻しての引けとなりました。

11月1日(木)
ユーロドルは大幅高となりました。ブレグジットの協議が進展しているとする観測記事がきっかけとなり、ポンドもユーロも上昇する流れが東京市場からNY市場まで断続的に続きました。前日高値を上抜けてからはストップオーダーも巻き込みながらの上昇となり、ユーロドルはNY後場に1.1424レベルと週間高値を更新、ユーロ円も欧州市場で128.77レベルの高値をつけ、それぞれ底堅い地合いのままで引けました。

11月2日(金)
ユーロドルは、ユーロ円での買いの動きも手伝ってNY市場までは底堅い展開を続けました。前日高値を上抜けるとストップオーダーも巻き込みながら1.1456レベルまで高値を切り上げましたが、ECBが長期資金供給オペを検討しているとの観測記事をきっかけに反転下落、1.1372レベルと東京安値を下回る動きとなり、引けにかけてはやや戻しての週末クローズとなりました。

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