ドル円 中間選挙が予想通りなら動かず(11月第1週)

一週間を振り返ると先週も株式市場の動きに追随する傾向が強く、株高が円安の動きをリードした動きでした。

ドル円 中間選挙が予想通りなら動かず(11月第1週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、週前半は一貫してドル高・円安、木曜にいったん押しが入ったものの既に112円台半ばでドル買いオーダーが見え、週末にかけて再びドル買いが強まっての引けとなりました。一週間を振り返ると先週も株式市場の動きに追随する傾向が強く、株高が円安の動きをリードした動きでした。


今週は火曜に米国中間選挙が行われますので、まずはそのことから始めましょう。

米国中間選挙は、大統領選挙の間に行われる議会選挙ですが、米国の連邦議会選挙は2年ごとに上院の3分の1と下院の全議席が改選されます。特に大統領選の2年後に行われる中間選挙では2年間の政策に対して与党(現在共和党)が厳しい目で見られることが多く、比較的野党(現在民主党)が有利になる傾向が見られます。今回も同様で、下院においては民主党が過半数を取るという予想がコンセンサスです。

現在はトランプ大統領が共和党で、上下両院とも共和党が過半数のため、共和党ペースで運営を進めやすい状況にありますが、中間選挙後には可能性としては以下の4つが考えられます。

今週の週間見通し

9月以降のコンセンサスは、下院において民主党が過半数を取るというもので、金融市場でもこの可能性を織り込んでここまで動いてきたと言えます。常識的には上院と下院でねじれが起きることで、共和党がリードしての政治を進めにくくなるという点で、株式市場、為替市場ともややリスクオフに動くことが自然です。株式市場は比較的その傾向が見られますが、為替市場はどちらかといえばドル高傾向が変化していません。ただ、その大きな理由にユーロ安が進んだということがありますので、この結果となった場合には、選挙後も大きな動きには繋がらないと言えそうです。


また、共和党が一時期よりは選挙戦で盛り返しているとの見方もあり、現在と同じ両院共和党という可能性もサブシナリオとしてあげられます。この場合には、今まで通り共和党が有利な状態で政治を行うことが出来、これまでの政策運営からも株高、ドル高の傾向を続けやすくなると考えられます。一時的に大きく株高、ドル高といった動きもあり得るかもしれません。可能性としてもゼロではありませんのでリスクオンの動きになるシナリオとして注意はしておく必要があります。

また、上院を民主党が取るということは困難であるというのがコンセンサスで、3分の1の改選で逆転が起きる可能性がほぼゼロとなっているため、残り2つのシナリオはあまり考える必要はないのですが、おなじねじれでも上院が民主というねじれは一時的に株安、ドル安といった動きになると思われます。また両院とも民主という可能性もほぼゼロなのですが、万が一、両院とも民主にとられるということになると、ホワイトハウスとしてはまったく動きが取れなくなるリスクがありますし、場合によってはトランプ大統領が辞任に追い込まれるという可能性もありえます。このパターンでは、株価急落、為替も大きくドル安というリスクオフ全開の市場となるのではないかと考えています。

結果がわかるのは、差がついていれば日本時間7日の昼過ぎ頃でしょうか、僅差ということになると日本時間の7日欧州市場序盤といったあたりまでずれ込むかもしれません。また選挙のコンセンサスというのは最近よくはずれますので、意外と両院とも共和党が維持するというサブシナリオのほうを見ることになるのではないか、個人的にはそんなことを考え、以下のようなシナリオを想定しています。

両院とも共和党となれば、トランプ大統領はこれまでの実績の成果を強調するでしょうし、今後の政策運営も進めやすくなり、さらには2年後の大統領選でも2期目のトランプ大統領と政治的には継続が保証されるパターンです。おそらく、最初の反応は株高、そしてドル高となりそうですが、政治が継続するということは米国第一主義も継続しますし、これまで前進が見られなかった日米間、米欧間の通商協議においても米国は強気でくると思われます。

そして、金融政策自体には政治は関係ありませんので、木曜のFOMCでは12月利上げのコースが見えてくることもほぼ確定的です。そうなると、金利上昇が株式市場にあらためて悪材料ととられるでしょうし、為替も金利高によるドル買いよりも株安によるリスクオフのドル売りに反応しやすいと見ています。
通商協議でも強すぎるドルは米国にとって大きな懸念材料ですから、過去2年間と同じように114円台半ばが大きなレジスタンスになるものと考えられます。

色々と思うところを書きましたが、果たして結果がどうなるか?
コンセンサス通りであればあまり動きが出ず、共和党支配が続けば一時的にリスクオンの動きは強まるものの、その後はやはり下げるのではないか、こうしたことを考え今週は以下の2つにレンジをあげておきます。

 コンセンサス通り下院が民主 = 112.00〜113.50
 これまで通り両院とも共和党 = 112.50〜114.50

最後に簡単にドル円の日足チャートも見ておきます。

10月下旬に安値更新に失敗し、その後はダブルボトムのようなチャートパターンを形成、113円レベルのネックラインを上抜けたものの中間選挙を前に足踏みといったチャートです。ただ上述の通り、通商協議が控えている以上積極的には円安を見込みにくく長期チャートでも114円台半ばから後半は強力なレジスタンスです。上記どちらのシナリオでも114円台後半に位置するレジスタンスは今後も有効と見ておいてよいでしょう。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。
FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。
また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

11月5日(月)
**:** 米国が冬時間
08:50 日銀会合(9月19日)議事要旨公表
10:00 黒田日銀総裁挨拶
10:45 中国10月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ10月CPI
18:30 英国10月サービス業PMI
21:45 デギンドスECB副総裁講演
22:45 カナダ中銀総裁講演
23:45 米国10月サービス業PMI改定値
24:00 米国10月ISM非製造業指数

11月6日(火)
12:30 豪中銀政策金利発表
16:00 ドイツ9月製造業受注
16:30 プラートECB理事講演
17:50 フランス10月製造業PMI改定値
17:55 ドイツ10月製造業PMI改定値
18:00 ユーロ圏10月製造業PMI改定値
19:00 ユーロ圏9月PPI
20:15 クーレECB理事講演
21:00 ラウテンシュレーガーRCB理事講演
**:** 米国中間選挙

11月7日(水)
06:45 NZ7〜9月期失業率
16:00 ドイツ9月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏小売売上高
24:30 原油週間在庫統計
29:00 NZ中銀政策金利発表
**:** FOMC(〜8日)

11月8日(木)
08:50 日銀会合(10月31日)主な意見公表
08:50 本邦9月国際収支(貿易収支)
16:00 ドイツ9月貿易収支
16:45 フランス9月貿易収支
18:00 ECB月報
22:30 米国新規失業保険申請件数
24:30 原油週間在庫統計
29:00 FOMC結果公表

11月9日(金)
09:30 豪中銀四半期報告
10:30 中国10月CPI・PPI
18:30 英国7〜9月期GDP速報値
18:30 英国9月貿易収支
22:30 米国10月PPI
23:00 クオールズFRB副議長講演
24:00 米国11月ミシガン大消費者信頼感速報値
24:00 米国9月卸売売上高・在庫

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

10月29日(月)
東京時間は111.90近辺でほとんど動きの見られなかったドル円でしたが、欧州市場に入りダウ先物と日経先物が夜間取引で上昇する動きから112円台前半へと上昇しました。その後も日計り組のストップオーダーを巻き込みながら株価とともに一段高、NY前場には112.56レベルの高値をつけました。NY市場のダウは昼前から上値が重くなっていましたが新たな対中関税の可能性を嫌気して引け間際に急落、ドル円もやや下げたものの影響は限定的で底堅い地合いのまま引けました。

10月30日(火)
夜間取引で下げていた日経先物が反転上昇する動きに沿って朝からリスクオンの動きが目立ちました。NY市場に入り113円手前でいったん押しが入ったものの、後場に入りNYダウが大幅高となったことやユーロドルでのユーロ売りの動きも重なってから113円台に乗せ、高値圏での引けとなりました。

10月31日(水)
東京市場のドル円は株高の動きに引っ張られてしっかりと113円台乗せ、113円台前半で高値圏のもみあいを続けました。日銀会合も黒田総裁会見も無風通過で海外市場入り。欧州市場では利食い売りも出てやや上値が重たい展開も見られましたが、NY市場に入り予想よりも強いADP全国雇用者数、そしてNYダウの買いが強まったことから、前場には一時113.39レベルの高値をつけました。その後、NYダウは続伸するも113円台前半では引き続きドル高警戒感も残ることや、ユーロが対円でも売られる動きとなったことで113円を割り込んでの引けとなりました。

11月1日(木)
ドル円は目立った材料が無い中、ユーロドルの上昇に引っ張られてのドル売りとなったものの、112円台後半で方向感がはっきりしない流れが終日続きました。欧州市場で一時的にドル買いが出た際も113円ワンタッチで反転したところを見ると、113円台のドル売りオーダーが改めて出てきている感じでした。

11月2日(金)
東京前場では動意薄だったものの、後場に入りトランプ大統領が米中間の通商協議での合意に言及したことをきっかけにリスクオンの動きが強まり113円台乗せ。その後も上下しながらも強い米国雇用統計なども材料にしながら、NY後場には113.33レベルまで水準を切り上げ高値圏での引けとなりました。

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