ランド円レポート月曜版
まず、先週の振り返り(ショートコメント)ですが、7円の大台を視野に入れ始め「7.40レベルをレジスタンスに、大台7.00をサポートとする週」を見ていました。実際のレンジは、安値が7.24レベル、高値が7.65レベルと40銭幅のレンジが20銭ほど上方にシフトしたイメージで思いのほか強い動きを見せました。
先週のランド円が上昇した理由としては、週初から株高の動きによる円安が進んだこと、13日木曜のトルコ中銀政策金利が市場の思惑を大きく超える上げ幅となったこと、そして同日にムーディーズは「南アフリカの格付け見通し安定的は格下げの可能性がほぼないことを意味する」と少なくともジャンク債になることがほぼ無いことに前もって言及したことが大きかったと言えます。
ドル円の円安についてはドル円の週報に書きましたのでそちらを見ていただくとして、トルコ中銀のサプライズとも言える大幅な政策金利引き上げが、新興国通貨市場に立ち込めていた暗雲にやや晴れ間をもたらしたことは大きかったと思います。他国の金融政策に助けられたとはいえランドは対ドル、対円とも週初からランド買いの動きが続き、週間高値をつけた後に若干押しての引けとなりました。
今週の南アフリカは20日木曜に政策金利の発表があり、その前日に8月CPIが発表されます。現在の政策金利は6.50%ですが前週に発表されたGDPを見ても分かる通り、現在に南アフリカは2期連続のマイナス成長、つまりリセッション局面にありますので、さすがにこの状態での利上げは考え難く、今回は市場参加者のコンセンサスも現状維持となっています。前日のCPIが与える影響も単月では無視していいと思います。
それ以外では、円が与える影響として先週のようなリスクオンの動きは、今週21日に予定されている第2回日米通商協議を前にして難しいと考えられるどころか、逆に先週のポジション調整が入る可能性もありランド円を支える状況にはなりません。また南アフリカにとって輸出入ともに最大の貿易国である中国は米国との対話を再開することとなりそうですが、米国は実際の結果を見るまでは報復関税を続けると言っていることから、すぐに改善することは難しく、こちらも今後の中国の景気鈍化に繋がっていくかどいうか見極めるまで全く安心は出来ないと言えます。
また、前週のGDPも含め南アフリカ自体の景気が低迷していることは中長期的にランドの上値を抑える要因となりますし、材料出尽くし感のあるトルコについても次に出て来るとすると悪材料の可能性、と考えると新興国通貨全般に資金が向かうことは難しそうです。FXだけでなく広く個人投資家の動きとして新興国通貨に投資する投資信託についての状況が日経土曜版に出ていましたので、こちらも簡単に紹介しておきます。
同記事によると、昨年末と比較して8月末の新興国投信720本の合計は6兆円弱と残高を8000億減らしたとあります。金額ベースで最も減ったのがブラジル、次が中国、また割合で見るとトルコ向けは年初から半減したとあります。南アフリカについては具体的な数字はありませんが、昨年のズマ大統領のごたごたで減少して以降は、トルコの減少と時を合わせてそれなりに減少したことは間違いありません。
しかし、投資国によって違いはあるものの8000億円の減少は全体から見れば13%に過ぎず、まだかなりの金額の投資が行われていることも事実です。特に南アフリカは次回の格付け引き下げこそ無さそうですが、見通しがネガティブになる可能性は高く、今後の南アフリカ経済の改善が見られない場合には、ジャンク債になるリスクが消えたわけではありません。その場合の同国からの資金流出は相当規模のものになるでしょうから、長期的に安心して買えるという状況からは程遠いと言わざるを得ません。
いつもの4時間足チャート(上からランド円、ドルランド、ドル円)をご覧ください。
ランド円 ドルランド ドル円 四時間足
こうして見ると、テクニカルには3週前に高値を先々週に安値をつけ、現状はそのレンジの中で上下ともに抑えられやすい流れにあると考えられます。またここまで書いてきたように、今週は上値が重たくなりやすくなる可能性が高く、先週高値を超えてきた場合でも78.6%(61.8%の平方根)戻し(赤のターゲット)に近い7.70水準がレジスタンスとなりやすいと見ています。いっぽうで下値は先週の安値圏、これは3週前高値を起点として先々週の安値、そして13日に高値を見たと仮定しての逆N波動ですが、50%エクスパンションが同じ水準となっています。
今週は先週の調整から上値が重たくなりやすいと考え、7.70レベルをレジスタンスに7.25レベルをサポートとする週を見ておきます。
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