ユーロ週報 上値が重く下押しが入りやすい(9月第1週)

一週間を通してみると短期的な高値圏でのリバーサルパターンを形成する動きとなりました。

ユーロ週報 上値が重く下押しが入りやすい(9月第1週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、月曜に上昇後は火曜から木曜までの高値圏もみ合いを経て金曜に下げと、一週間を通してみると短期的な高値圏でのリバーサルパターンを形成する動きとなりました。材料としては、相変わらずブレグジットの協議進展の有無、そしてここに来て浮上したのがイタリアの財政規律問題、さらに週末のトランプ大統領の欧州に向けての貿易摩擦発言と続いています。

まず、ブレグジット協議については多少の進展はあるのでしょうが、EUの主席交渉官の発言通りで最悪の事態として合意なき離脱も可能性として検討しているという事実のみを現段階では考えておくべきと思います。10月末の公式の交渉期限に間に合わないとの見方が大勢で、11月中に臨時首脳会議が開かれ、手続きは12月に遅れるというスケジュール感です。仮に11月末までとすると正味3か月を切っていますが、12月に手続きを始めて3月29日の離脱に間に合うかも含め、どうしても懸念材料が目につきます。今後も当然協議は進展するのでしょうが、そのことでユーロを買うという動きは現状は後退していると思います。

次に、イタリアの財政規律(財政赤字がGDPの3%を超えないこと)ですが、首相からは”懸念している”、財務相は”いや大丈夫”といった発言が出ている感じです。しかし厳密に見ると現状では超える可能性が高く、今後の予算計画でいかに財政規律を守るようにするかを検討している段階だと思います。イタリア政府は9月中に財政目標を発表し10月に承認後の予算案をEUへ提出するスケジュールです。当面はイタリアからのニュースを気にしつつ、市場参加者の思惑を測るにはドイツとイタリアとの国債利回りのスプレッドを見て行くと良いでしょう。ただ、どちらかというと悪材料が先行しやすいイメージです。

そして、貿易摩擦ですが、トランプ大統領は中国に加え欧州も標的に加えたと思わせる発言を行いました。欧州は中国と同じくらい問題があると、さすがに中国とは全く違うだろうと多くの人が思っている中での発言です。これは通貨安誘導の話と合わせるとユーロ高・ドル安という動きになりますが、欧州株安がユーロ安に繋がる可能性もあり、これまでのところはユーロ高ユーロ安どちら、とは明確に言えない状況です。ただ、世界的に株価が下がるのであれば、リスクオフによるユーロ円安がユーロ安にもなるため、現状は若干ユーロ安材料となる可能性があるかなと考えています。

今週もこれら3つの材料を含めてユーロが下げやすい環境の中、どのような動きを見せるのか、米国雇用統計もありますが欧州内からのニュースにより反応しやすいという状況が続くと見ています。

今週の週間見通しと予想レンジ

チャートをご覧ください。

日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

8月安値からの反転で中期的な安値をつけたことは確認できますが、現状の短期的な高値からの反落がどの程度まであるのか、そしてそこから次の動きは上なのか下なのかというあたりがテクニカルに考えたいところです。まず8月安値から8月高値までの上昇に対する押しを考えると、38.2%押しが1.1568、半値押しが1.1517(それぞれ赤のターゲット)と1.15台前半までは想定できるユーロの反落です。

しかし、EU側は反論していますがトランプ大統領の先の欧州は通貨安誘導をしているといった発言を考えると、1.15の大台を割り込むまでの動きは考えにくく、5・6月の安値圏だった1.1508/10レベルを考えると、同水準で反発し再びユーロが買われる可能性が湧いてくるとチャートの形としては面白い展開です。今はそこまで考える必要は無く、下押しの限界点として1.15台前半を考えておくとよいでしょう。

いっぽう上値ですが、短期的に8月高値を上抜けることはユーロの悪材料が目立つ中で困難だと思います。1.16台後半では売りたい向きが出て来ると考えられますので、今週は1.1670レベルをレジスタンスに1.1520レベルをサポートとする週を見ておきます。

今週のコラム

ユーロの材料としてブレグジット協議の進展をあげましたが、週末のメイ首相のブレグジットに関する2度目の国民投票は無いとの発言もポンド売りの材料となり、今週は到達確率チャートを見てもわかるようにギャップダウンでの週明けスタートを切りました。テクニカルにもなかなか微妙なところで下げに反転していますので、今週はポンドドルのチャートを見てみましょう。

今週のコラム

ポンドは5月以降ピンクの平行線で示した下降チャンネル中での推移を続け、8月中旬以降はユーロドルとともに上昇、青い線で示した上昇チャンネルの中での推移となっていました。しかし、ユーロドルの下げや週初のポンドの下げも重なり、ピンクのチャンネル上限で下げに切り返し、現状は青のサポートラインを試す流れとなっています。

ユーロの上値が重く、またブレグジット協議が悪材料となりやすいと考える以上、ポンドもいったん下押しを考えることとなります。8月安値っと先週高値との61.8%押し(赤のターゲット)が1.2808となっていて、現状は1.28台前半を試しやすい流れにあると見ています。

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

8月27日(月)
ユーロドルは、東京市場ではドル円の売りがユーロ円に波及しユーロドルもじり安の展開を辿り後場には一時1.16台を割り込みました。しかし、LDN市場が休場となることもあって買い戻しも見られる中、強いドイツの経済指標をきっかけにじり高、NY市場に入ると東京高値を上抜けしテクニカルなユーロ買いが見られました。その後もユーロは対ドル、対円で買いが強まりユーロドルは1.17目前まで水準を切り上げた後、若干押してのクローズとなりました。

8月28日(火)
ユーロドルは、東京市場でこそドル買いから上値が重たい展開となりましたが、その後は上昇トレンドを回復。イタリアからのEU財政規律を超える可能性といった発言にも目立った反応はなく、ハードブレグジットの懸念が再燃しユーロポンドでの買いをきっかけにユーロは上昇しました。その後イタリア財務相の財政規律を守れるとの発言もユーロ買いに寄与し、1.1734レベルの高値をつけた後にやや押して引けました。

8月29日(水)
ユーロドルは、前日NY後場以降の上値の重たい流れを継続し、イタリアの財政規律に対する懸念も再燃したことからNY市場までじり安の展開を辿りました。1.16台半ばまで水準を切り下げていましたが、EUのブレグジット主席交渉官の発言からブレグジット協議の前進を期待したポンド買いがユーロにも波及し、ユーロも対ドル、対円で上昇、それぞれ1.1710レベル、130.85レベルの高値をつけ、そのまま高値圏での引けとなりました。

8月30日(木)
 ユーロドルは東京市場から上値が重い展開となっていましたが、EUのブレグジット首席交渉官が前日の発言に加え、ハードブレグジットの場合の準備をもしていると発言したことが嫌気され欧州市場では売りが目立ちました。その後、NY市場前場まではドル円とユーロ円が下げた動きから1.1642レベルまで下げましたが、後場以降はドル売りの動きも重なり、ユーロドルはもみあいのままで引けました。

8月31日(金)
ユーロドルは欧州市場までは底堅い動きをしていたものの、弱めの経済指標と欧州株の下げがきっかけとなり売りが広がりました。その後もユーロはじり安の動きを続け、NY市場に入ってからはストップオーダーを巻き込みながら1.1585レベルまで売られ、やや戻しての月末クローズとなりました。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

9月3日(月)
**:** NY市場休場
16:50 フランス8月製造業PMI改定値
16:55 ドイツ8月製造業PMI改定値
17:00 ユーロ圏8月製造業PMI改定値
17:30 英国8月製造業PMI

9月4日(火)
17:30 英国8月建設業PMI
18:00 ユーロ圏7月PPI
21:15 英中銀総裁講演

9月5日(水)
16:50 フランス8月サービス業PMI改定値
16:55 ドイツ8月サービス業PMI改定値
17:00 ユーロ圏8月サービス業PMI改定値
17:30 英国8月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏7月小売売上高

9月6日(木)
15:00 ドイツ7月製造業新規受注
16:30 スウェーデン中銀政策金利発表

9月7日(金)
15:00 ドイツ7月貿易収支
15:00 ドイツ7月鉱工業生産
15:45 フランス7月貿易収支
15:45 フランス7月鉱工業生産
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP確報値
21:30 米国8月雇用統計
**:** ユーロ圏財務相会合(仮想通貨規制もテーマ)

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