ユーロ 今週も上値の重たい展開(週報5月第5週)

先週のユーロドルはテクニカルなターゲットを下回り、次のターゲットへと向かう一段安の展開となりました。

ユーロ 今週も上値の重たい展開(週報5月第5週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルはテクニカルなターゲットを下回り、次のターゲットへと向かう一段安の展開となりました。主な材料としてはイタリアの連立協議がまとまり、コンテ首相を軸に5つ星と同盟によるポピュリスト政権誕生、そして組閣はどうなるのかという点がイタリアの政治とユーロにとって懸念材料とされました。さらに週末にはスペイン首相の元側近が汚職に絡んで有罪判決を受けたことから、野党が不信任案を提出するとのニュースが流れ、このニュースもユーロ売りの材料とされました。

さて、今週ですがまず大きなニュースが入ってきています。臨時の南北首脳会談と米朝首脳会談開催のニュースに隠れて目立っていませんが、イタリアの首相に指名されたコンテ首相が示した組閣リストのうち、経済相候補に対してマッタレッラ大統領が拒否しました。経済相候補は反EUで目立っていたことから、大統領は対外的な問題が大きいとして組閣に対して拒否反応を示したこととなりますが、それ以外の名簿は受け入れています。

これに対しコンテ氏は組閣を断念したとの声明を出しましたが、ここに来て組閣断念とはどういうことかとなります。言われていることは暫定内閣を発足させ再選挙を行うという見方が現状の主流のようです。もともと連立協議がうまくいかない場合は再選挙という話にはなっていましたが、コンテ氏の断念イコール連立政権樹立失敗という見方で本当に良いのかは正直なところわかりません。5つ星と同盟とで再協議して経済相を入れ替えるという道は無いのだろうかと思うのですが、いまは3つの選択肢があるように思います。

まず、組閣リストを考え直すということですが、その場合首相候補を誰にするのかという振出しに戻るのか、そもそも連立2党が受け入れるのか、という点が不透明です。2つめは再選挙ですが、実際に2党以外の政党から再選挙を要請する声があり、大統領は迅速に判断するとだけ述べています。3つめは大統領弾劾ですが、実際に5つ星の党首は弾劾を求めています。現状のマスコミは2つめの再選挙を濃厚とみていますがどうなるか。

どうも政治経験の無い学者コンテ氏を首相候補としたあたりでつまずいたように思えますが、イタリア大統領の権限が思いのほか強いことに驚きました。ウィキペディアでは「概ね象徴的な元首だが、議会解散権、首相任命権、軍隊指揮権などの非常時大権(議会や内閣の助言によらずに独自の判断で行使できる権限)を持っているのが特徴的」とあり、今回は組閣リストに反対することイコール首相任命を拒否ということなのでしょう。

いずれにしても、連立の進展に関しては当初ユーロ買い、その後はその後の懸念に対してユーロ売りとなりましたが、再選挙ということになれば政局混乱は免れず、スペインの不信任案提出とともに改めてユーロ売りの材料とされる懸念があると考えています。

今週のその他の予定が霞んでしまいましたが、今週はECB当局者と各国中銀総裁の講演が多く、次回以降のECBにおける緩和縮小について何らかの意見が出て来そうです。すでに9月末までで債券購入は終了するとの見方がコンセンサスとなっていますが、それ以上のタカ派的なコメントが出て来るのかどうかが注目点でしょうか。他にも主要国の経済指標は連日出てきますので、細かな振れは出て来るでしょう。

以上、特にイタリア政局における悪材料を中心としてチャートを見て行きます。

今週の週間見通しと予想レンジ

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

すでに、昨年12月安値も逆N波動で求められる50%エクスパンションも達成し、近いところでは61.8%エクスパンションの1.1631、そして非常に重要な安値である昨年11月安値1.1554があります。この昨年11月安値は2017年を通しての大きな上昇相場の中で唯一調整らしい調整が入った動きで、仮にここを下回る動きになるとユーロは長期下降トレンド入りが確定する可能性があります。

しかも週初の現行水準(1.1690レベル)から140pips程度しか離れていないため、テクニカルには既にいいところへ来ているという考えと、もしここを下抜けたら大きな下げに繋がるリスクがあるという考えとで悩みどころでもあります。週初は米朝首脳会談の動きかによるユーロ円の買いで底堅いユーロも、本日の欧州市場以降のイタリアの動き次第では更なる下げのリスクは大きいと考えておくべきでしょう。そして、ユーロ円も今は底堅いのですが、長期的には一段の下げに注意すべきチャートパターンです。(コラム参照)

今週もユーロドルは引き続き上値の重たい地合いは継続しやすいと考えざるを得ず、昨年11月安値をトライしに行く可能性も含め、1.1590レベルをサポートに、1.1750レベルをレジスタンスとします。

今週のコラム

今週もユーロ円チャートですが週足チャートを見てみます。先週は方向感が出にくくもみあいを前提とした前週レンジ内での動きを想定しましたが、ドル円同様にリスクオフの五動きから下放れする動きとなってきました。

              ユーロ円週足

              ユーロ円週足

色々な線を引いてありますが、年初からの下げの動きが先週加速したことで昨年半ば以降のネックライン(ピンクの点線)を下抜け反転パターンを作った可能性が高いようです。中期的には今年高値と4月高値とを結んだレジスタンスラインとそれに平湖言うに引いた平行線による下降チャンネル(青)の中での推移です。

ターゲットとしては、今年高値から3月安値への下げ、その後の4月高値への戻しを各点とする逆N波動を考え、100%エクスパンションにあたる124.93(青のターゲット)、だいたい125円の大台を目指しやすい流れにあります。また、昨年安値と今年高値の半値押しの水準(緑のターゲット)である126.20がその手前にありますので、同水準が最初のターゲットとなっていると考えられます。

主要通貨は、ユーロが対ドル、対円で下降トレンドが見えてきましたが、ドル円がユーロドルでのドルの動き(ドル高)に追随するのか、ユーロ円での円の動き(円高)に追随するのか、ユーロの動きも円の動きを考える際には重要となってくるでしょう。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

5月28日(月)
**:** LDN、NY市場休場
16:00 フランス中銀総裁講演
22:00 メルケル首相講演

5月29日(火)
15:45 フランス5月消費者信頼感指数
16:45 フランス中銀総裁講演
17:30 イタリア中銀総裁講演
18:30 メルシュECB理事講演
24:30 ラウテンシュレーガーECB理事講演
25:00 クーレECB理事講演

5月30日(水)
15:45 フランス1〜3月期GDP速報値
15:55 ドイツ5月失業率
18:00 OECD経済見通し
18:00 ユーロ圏5月消費者信頼感確報値
21:00 ドイツ5月CPI速報値
23:45 スイス中銀総裁講演
27:00 ベージュブック

5月31日(木)
08:01 英国5月GFK消費者信頼感
14:45 スイス1〜3月期GDP
16:00 スペイン1〜3月期GDP確報値
18:00 ユーロ圏4月失業率
**:** G7(〜2日@カナダ)

前週のユーロレンジ

        始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.1765 1.1830 1.1647 1.1648
ユーロ円  130.47 131.35 127.15 127.42

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

5月21日(月)
 東京市場のユーロドルは米中通商交渉がまとまったドル高の動きから一段安となり、欧州市場序盤には1.1717レベルの安値をつけました。海外市場では短期筋の利食いに加え、イタリアの新首相となるコンテ教授が22日にも指名される流れで、不透明感は残るもののイタリア政局を材料としたユーロ売りも一巡した感が出ました。引けにかけては1.1796レベルまで戻しての高値引けとなりました。

5月22日(火)
 ユーロドルは、イタリアの連立政権材料が一巡したことによる買い戻しと、英中銀関係者のタカ派発言によるポンド買いの動きに引っ張られて欧州市場序盤には買いも見られました。しかし、その後の海外市場ではあらためて戻り売りを考える向きも出て東京前場の水準に戻しての引けとなりました。

5月23日(水)
ユーロドルは、米朝首脳会談延期の可能性が出てきたことからユーロ円売りの影響が大きく、東京前場から下げが先行しました。FOMC直前まで下げ続け安値を1.1676レベルまで拡大しましたが、引けにかけてはドル売りの動きに追随し1.17に近づいての引けとなりました。

5月24日(木)
ユーロドルは前日NY市場同様ドルの動きに追随し、トランプ大統領による自動車関税発言によるドル円でのドル売りの影響を受け、ユーロ買いの動きが先行しました。その後も米朝首脳会談が正式に中止となったことを受けユーロが底堅い動きとなったものの、ユーロ円の売りが出ていることもあって、1.17台半ばでは上値の重たい地合いからもみあいとなってのクローズとなりました。

5月25日(金)
ユーロドルは東京市場から上値の重たい流れとなっていましたが、欧州市場に入りスペイン首相の不信任案を野党が提出予定とのニュースから対ドル、対円ともに直近の安値を更新しました。その後もLDN、NYともに3連休を控えていることも重なってユーロ上値が重たいままでの週末クローズとなりました。

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