今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、年末のユーロ高の動きから底堅い動きは続いたものの、週間レンジは1.2001から1.2089と週を通して90pipsにも満たない狭いレンジ内で冴えない一週間となりました。1.2089の高値は2017年の高値1.2092まであとわずかという水準でしたが結果としては抜けられず、やや上値の重たい週末クローズとなりました。
ユーロ買いの材料としては、ECBが1月から債券購入額を300億ユーロへと半減させ、現在の欧州の景気を考えると、9月以降は債券購入を停止する可能性が高く、ユーロ圏の金利上昇圧力にもつながっています。また、ドラギECB総裁は9月以降も状況次第では債券購入を続ける可能性を示唆しているものの、これはもっともハト派である同総裁ゆえの考え方と捉えた方がよさそうです。
いっぽうでユーロ売りの材料としては、短期的ではありますが、これまでユーロ買いの材料として考えられていたドイツの大連立です。CDUとSPDによる連立協議がこの週末から始まりましたが、難民問題、社会保障を中心に政策の違いがいまだ大きく、合意にはかなりの時間がかかるとの見通しです。ニュースによれば3月との見通しも含め、最悪の場合には再選挙という悲観的な見方まで出ている状況です。
しかしながら、SPD出身の大統領による説得や世論からのプレッシャーを考えると、メルケル首相は「うまくいく」と楽観的な見通しを示し、SPDのシュルツ党首も「国民は迅速な協議を求めている」と、これまでの3党連立決裂から大連立へと至る動きを崩さない姿勢を示しています。おそらくは双方の大幅な譲歩による妥協点探しという動きになってくると言えるでしょう。
もうひとつのユーロ売り材料としては、年末に大きく膨らんだユーロ買いポジションです。2日時点のシカゴの通貨先物のポジションを見ると、127,868枚のユーロ買いと昨年5月にユーロ売りからユーロ買いに転じて以降で最高のユーロ買いとなっています。これまでも高水準なユーロ買いが続いていましたが、現状のポジションは買いに傾き過ぎていると言わざるを得ません。
今週は材料的にもポジション的にもこれまでのユーロ買いの流れに対して調整が入りやすい一週間になりやすいと言えます。
テクニカルに、日足チャートも見てみましょう。
*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
中期的にはいまだピンクの上昇チャンネルで示したユーロ高の中にありますが、昨年高値をトライできず反落したことから、市高値トライはいったん先送りです。短期的には目先の高値を1.2089でつけ、12月安値1.1718からの上げに対してどこまで押すかという段階にあると考えられます。
現在の水準は、ほぼ38.2%押しの1.1947に近いのですが、半値押しが1.1903と12月後半の最初の上げと一致した水準にあることから、少なくとも同水準、動き次第では61.8%押しにあたる1.1860レベルまでを考えておいたほうが良さそうです。いっぽうで、買いが出た場合でも1.20の大台に乗せて来るところでは着実に売りが出て来ると考えられます。
今週は1.1875レベルをサポートに、1.2025レベルをレジスタンスとする一週間を見ておこうと思います。
今週のコラム
米国の主要株価指数は軒並み史上最高値、日経平均株価も大発会から大幅高となり今朝は先物で一時24,000円をつける動きとなりました。ユーロドルを考える際に、最近ではファンダメンタルに加え、ドイツの長期金利の話はよく聞くようになりましたが、思いのほか聞こえてこないのはドイツ株価指数であるDAXです。今回は最近のDAXの動きについて見てみることにします。
まずはDAXの日足チャートをご覧ください。
DAX日足
年明け以降は連騰していることはわかりますが、そもそも年明け2日の取引ではザラバに12月安値を割り込み9月末以来の安値を付けたところからの上げです。昨日には12月高値こそ抜いたものの昨年11月の高値にはまだかなり距離があり、ドイツ株は米国株や日本株にかなり遅れを取っていると言えます。
ドイツの連立協議、ドイツ長期金利上昇といったあたりが株価の重石となっていますが、世界的な株高の動きの中で景気が良いはずのドイツ株がかなり出遅れているということは気になるところですし、昨年高値を超えられず下げる動きが出て来ると、こうしたこともユーロの売り要因とされる可能性もあります。
高値圏に近いけれど抜けられなかったというのは先週のユーロドルで見た動きですが、当面はドイツ株の動きも見て行くとよさそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
1月8日(月)
**:** 東京市場休場
16:00 ドイツ11月製造業受注
19:00 ユーロ圏12月消費者信頼感確報値
19:00 ユーロ圏11月小売売上高
1月9日(火)
16:00 ドイツ11月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏11月失業率
1月10日(水)
10:30 中国12月CPI、PPI
18:30 英国11月鉱工業生産
18:30 英国11月貿易収支
1月11日(木)
18:00 ドイツ2017年GDP
19:00 ユーロ圏11月鉱工業生産
21:30 ECB理事会(12月14日)議事要旨
1月12日(金)
**:** 中国12月貿易収支
25:30 ドイツ連銀総裁講演
前週のユーロレンジ
始値 高値 安値 終値
ユーロドル 1.2010 1.2089 1.2001 1.2029
ユーロ円 135.44 136.62 134.81 136.02
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
前週のユーロ
1月1日(月)
全市場休場
1月2日(火)
ユーロドルはアジア市場で昨年末高値を上抜けその後も上昇、1月もユーロ高が続くとの思惑も強く欧州市場では1.2081レベルと2017年高値に10pips程度へと迫りました。しかし後が続かずにトライしきれずに反落後に、引けにかけてはやや戻しての引けとなりました。
1月3日(水)
前日に2017年高値を超えられなかったことが尾を引いて、アジア市場では利食いを中心とした売りが目立ちました。NY市場では全般的にドル買いの動きとなる中、1.20の大台こそ割り込みませんでしたが、2日かけての行ってこいの動きで引けることとなりました。
1月4日(木)
ユーロドルは東京市場から買いが先行し、NY市場前場には2日高値を超え1.2089レベルの高値をつけました。ユーロ円も一段高となり136.37レベルの高値をつけ、ユーロドルとともに高値圏での引けとなりました。
1月5日(金)
ユーロドルは、ドル円のドル買いに引っ張られる格好で終日じり安の展開、ただ下げも限定的で1.20の大台は維持しました。雇用統計直後こそ動きはあったものの比較的落ち着いた動きとなっていました。また、ユーロ円は136.62レベルの高値をつけ、その後は136円水準まで押しての引けとなりました。
ディスクレーマー
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