ユーロ買い材料の方が多い流れに(週報12月第二週)

先週のユーロドルは週を通してユーロ安の動きが続きました。ドルの材料としては最近は米国の税制改革法案への期待だけが先行して

ユーロ買い材料の方が多い流れに(週報12月第二週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは週を通してユーロ安の動きが続きました。ドルの材料としては最近は米国の税制改革法案への期待だけが先行して株高からのドル高という動きがあるいっぽうで、欧州ではブレグジット協議が遅れていることやドイツの連立に向けてSPD党大会を見守りたいという動きがユーロ安材料となっていました。

しかし、税制改革法案も最終的に上院と下院とのすり合わせにより年内にも合意がもたれる流れが確実視されていますが、合意に至るまでにはまだ紆余曲折がありそうです。一方的にリスクオンでドル買いという動きはそろそろ使い古されてきた感があります。

また、ブレグジットの交渉は遅れてはいるものの着実に進んでいるとのニュースが出ています。メイ首相とユンケル欧州委員長が共同で、離脱にあたっての清算金、在英EU市民と在EU英国民の権利、アイルランド国境問題の3点で合意したとの内容です。アイルランド国境問題はもう少し揉めるかと思っていましたが、思いのほかすんなりと決まったことで今後は離脱に向けての交渉が進んでいくものと思われます。これはユーロにとっても好材料です。

また、SPD党大会ではCDUとの連立協議入りが決定されました。これまでにもSPD内では連立賛成派と連立反対派に分かれていましたが、大統領の説得と世論から外堀を埋められる格好で連立協議入りへと方針を180度転換することとなりました。シュルツ党首は「与党に入る必要はないが与党入りを拒む理由もない」と述べ、党大会でも連立に賛成する党員が多数となりました。今後の協議次第では連立ではなく閣外協力という可能性もゼロではないのでしょうか、与党となることのメリットをいう党幹部もいるようですから、時間はかかっても連立でのスタートはほぼ間違いない流れです。これもユーロにとって好材料です。
また先週は思わぬところでトランプ大統領の公約実現としてエルサレムに大使館を置くとのエルサレムを首都として認める発言が飛び出しました。米国には金融をはじめ力を持ったユダヤ系米国人が多く、彼らのロビイ活動に屈したとも言えますが、どうも大統領としては逆にそれを利用して、米国民だけでなく世界の目を中東和平の危機へと向けさせたのではないかと勘繰りたくなる面もあります。

大統領周辺では依然としてロシアゲート問題の捜査が続いていますし、税制改革法案こそ進展しているもののその他の公約はなかなか進まぬままに今年が終わろうというタイミングです。どの国でも政権の常とう手段ですが目を外に向けさせるという動きに出ている可能性も否定できません。いずれにしても、このエルサレム問題はドル売り材料ですが、中東は欧州に近くこれまでも欧州内でのテロ活動があったことを考えると、ドル売りでもあり、ユーロ売りでもある材料となります。これについてはニュートラルと言えそうです。

また、今週はECB理事会と英中銀のMPCがありますが、どちらもサプライズは考えられませんので、動きが出るとするとECB’理事会後のドラギ総裁の会見です。来年からの債券購入縮小についても質問が出て来るでしょうから、それに関連して何らかの発言があるかどうか、ドラギ総裁自身は意図せずですが、しばしば市場を振れさせる発言が飛び出しますので、一時的な材料としては注意が必要です。

ここしばらくユーロ買いの流れを考える中、ユーロはじり安の流れを辿ってきましたが、さすがにそろそろユーロ買いへと動きが出てきてもおかしくありません。材料的には上記の通りで、基本的にドル売り材料やユーロ買い材料が多いと考えられます。テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

これまでの短期的な上昇平行チャンネルの動きも先週の下げで下抜けし、方向性としては中期的に横向きへの動きとなってきた感じです。そうなると各種トレンドラインはチャート見難くするので今週は全て消して、9月からの値幅観測のラインを表示しました。

9月高値から11月安値までの下げに対して11月の上げはほぼ78.6%で止められました(赤のターゲット)。同水準を抜けられなかったことから、まだ本格的な上昇には早かったとも考えられ、その後の下げでは11月安値と高値との半値戻しの水準でいったん止められた印象です。下げが強ければ11月後半の押しと重なる61.8%押しも考えられますので、今回の下げは、この61.8%押しにあたる1.1709で下げ止まるものと見ています(青のターゲット)。

今週は、このターゲットに近い1.1700レベルをサポートに、先週ギャップダウンして始まった水準に近い1.1900レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週のコラム

今週はイスラエルシェケルのチャートを見てみます。

イスラエルの通貨がシェケルであるということを知らない方の方が多いと思いますが、以前私の職業が元インターバンクディーラであることを知らない人に、クイズと言って自身の出身国であるイスラエルの通貨はと聞かれ、即座にシェケルと答えたら、答えられた人は初めてだ、何で知っているのかと驚かれたことがあります。前職を話したら納得はしたもののほとんどの方はイスラエルの通貨がどのような動きをしているかなど全く興味の無いところだと思います。

しかし、イスラエルは一人あたりのGDP(2016年)は世界25位と、日本の22位、フランス24位、イタリア27位とG7の主要国とほぼ同水準にあることがわかり、いわゆる先進国にあたります。主要産業は、ハイテク産業、ダイヤモンド関連などで、農業も盛んです。当然、為替市場もあり、日々変動していますが、どのような動きをしているのか、今年4月中旬以降の動きをご覧ください。参考までにドルインデックスを下段に示しました。

ドル/イスラエルシェケルとドルインデックス

ドル/イスラエルシェケルとドルインデックス

ドルインデックスは比較的ユーロドルと似た動き(上下逆なだけに近い)をしていますが、7月以降の動きを見るとドルの動きとして、乖離した動きをしていることがわかります。さすがにイスラエルシェケルの為替相場のファンダメンタルまでは見ていませんが、先週後半の動きを見るとインデックスよりはドル高(シェケル安)に動いているようです。

エルサレム問題が直結しているとは言い切れないものの、中東での緊張が高まるとドルよりも弱い動きをする可能性はありそうですね。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

12月11日(月)
18:00 オーストリア中銀総裁金融安定化報告

12月12日(火)
18:30 英国11月CPI、PPI
19:00 ドイツ12月ZEW景気期待指数
19:00 ユーロ圏12月ZEW景気期待指数

12月13日(水)
16;00 ドイツ11月CPI確報値
18:30 英国11月失業率
19:00 ユーロ圏10月鉱工業生産
21:00 メイ首相議会で質疑応答
28:00 FOMC結果公表

12月14日(木)
**:** EU首脳会議(〜15日)
17:00 フランス12月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ12月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏12月製造業・サービス業PMI速報値
18:30 英国11月小売売上高
21:00 英中銀MPC結果公表
21:45 ECB理事会結果公表
22:30 ドラギECB総裁会見

12月15日(金)
**:** ドイツCSU党大会(〜16日)
18:00 オーストリア中銀総裁GDP見通し公表
19:00 ユーロ圏10月貿易収支

前週のユーロレンジ

        始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.1857 1.1878 1.1730 1.1774
ユーロ円  133.86 134.05 132.25 133.59

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

12月11日(月)
 週明けは上院で税制改革法案が可決されたことを好感してル全面高、ユーロドルも東京市場でドル買いの動きからギャップダウンしてユーロ安でスタートしました。その後の足取りも基本的にドル円と同様、NY市場で1.1830レベルまで下げた後に、やや戻しての引けとなりました。ユーロ円の売りがユーロドルの上値を抑えたため、反発は限定的なものとなりました。

12月12日(火)
 ユーロドルは中断したブレグジットの協議を警戒してポンドに売りが広がる中、ドイツの連立協議もSPD党大会を前に当面は小休止とならざるを得ないことから、欧州通貨が全体に弱い動きとなりました。ユーロドルは先週安値を割り込み1.1801レベルまで水準を下げたものの、1.18割れでは買いも見られやや戻しての引けとなりました。

12月11日(月)
 週明けは上院で税制改革法案が可決されたことを好感してル全面高、ユーロドルも東京市場でドル買いの動きからギャップダウンしてユーロ安でスタートしました。その後の足取りも基本的にドル円と同様、NY市場で1.1830レベルまで下げた後に、やや戻しての引けとなりました。ユーロ円の売りがユーロドルの上値を抑えたため、反発は限定的なものとなりました。

12月12日(火)
 ユーロドルは中断したブレグジットの協議を警戒してポンドに売りが広がる中、ドイツの連立協議もSPD党大会を前に当面は小休止とならざるを得ないことから、欧州通貨が全体に弱い動きとなりました。ユーロドルは先週安値を割り込み1.1801レベルまで水準を下げたものの、1.18割れでは買いも見られやや戻しての引けとなりました。

12月15日(金)
 雇用統計を前に東京前場からドル高の動きとなり、ユーロドルもドル高に追随し雇用統計前には1.1730レベルへと水準を切り下げました。雇用統計後にドルが下げる動きにはユーロ買いで反応したものの、その後はドル円と動きを分けそのままユーロ高の地合いを継続し、1.1772レベルへと上昇後そのまま一日の高値圏でのクローズとなりました。

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