ドル円 そろそろ上値が抑えられるか(週報12月第二週)

先週のドル円は、週前半に下げた後に後半はリスクオンの上げという流れでしたが、振り返ると11月末に110円台後半を付けて以降は押しを挟みながらも上げ相場が

ドル円 そろそろ上値が抑えられるか(週報12月第二週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、週前半に下げた後に後半はリスクオンの上げという流れでしたが、振り返ると11月末に110円台後半を付けて以降は押しを挟みながらも上げ相場が続いています。税制改革法案もここに来てようやくゴールが見えてきた感じがしますが、個人的にはこのテーマは十分すぎるくらいに織り込んできたのではないかという印象で、先週末に至っても同じ材料で引っ張っているということには少々驚きです。

FX、特にインターバンクの市場参加者の場合、もう少しテーマ選びが頻繁で次々と材料を見つけては移っていくということが多いのですが、この引っ張り方はFXというよりも株式市場の材料視に近いリズム感のような気もします。そろそろクリスマスモードに入ってきて、徐々に動きが乏しくなってくるとは思いますが、ここに来て出てきたエルサレム問題や、税制改革法案後のことも考えながらの12月というイメージでいます。

まず、後者の税制改革法案後ですが、公約として挙げてきたものの中で重要度が高く、かつトランプ大統領のアジア歴訪のテーマのひとつでもあった不均衡是正ですが、現在進行形で表に出て来るようなものが無い段階なのでしょうが、ドル高が進んで来るとドル高をけん制するような発言が出てきてもおかしくは無いと思います。頻度こそ少ないものの、これまでも時々出てきたことを考えると、皆がドル買い材料を探している年末の薄いマーケットでは注意が必要です。

また、アノマリー的に雇用統計前後でドルが高値をつけやすいという動きも、まだ気にしておいて良いかと思います。先月は雇用統計後の週明けに一時的に高値を更新し、その後はご存知の通りのドル安の動きとなりました。今回も週明けにドル高値を更新しましたが、同じ動きを繰り返す可能性はあります。日柄的にも上下に振れやすい時期のため警戒だけはしておきたいものです。

そして、前者のエルサレム問題ですが、北朝鮮に加えて新たな地政学的なリスクを生むきっかけとなっています。エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つの宗教が聖地としている宗教上重要な場所ですが、歴史を持ち出せばもともとは最も古いユダヤ教となるのでしょうが、それを言い始めたらキリが無く現在は国連を含めてどの国も腫物には触らないというスタンスを維持していました。それがここに来て、米国がエルサレム問題を蒸し返したことで、イスラム圏を中心として猛反発となっています。

既にエルサレムではテロ活動が起きていますし、今後はテロの対象として米国内や同盟国にも飛び火する可能性も考えなくてはなりません。こうしたことを考えると、これまでのドル高バイアスを少なくともニュートラルに戻す必要があると考えます。

さて、今週ですが主要国の金融政策決定会合が続きます。13日にFOMC、14日にECB理事会と英中銀MPCがあります。13日に米国利上げは既定路線となっていますが、来年の金利見通しとイエレン議長の会見がある回となりますので、それらが注目材料です。最近では若干来年に対してハト派的な見方も出ていますが、そのあたりを見極める材料となるかどうか。

また英中銀MPCは基本的に無風通過と考えられますが、ECB理事会後のドラギ総裁会見では来年以降の債券購入額縮小の話で一時的にユーロが振れる可能性があるかもしれません。FOMCもECB理事会もドルとしての動きでどのような影響がドル円に出て来るのかは注意ではありますが、一時的な動きになるのではないかと思っています。

テクニカルには日足チャートをご覧いただくとわかりますが、短期的には11月安値からの上昇局面です。材料的にはそろそろいいところと思いたいのですが、テクニカルには11月高値と安値の78.6%戻し113.90が戻しの限界点となります。ここを超えて来ると11月高値114.73をも視野に入れる動きに繋がりますが、今週は既にここに至るまでに上げてきていることも含め、ターゲットとなる113.90を大きく超えるような動きにはつながりにくいと見ています。

しつこいですが、今週も材料的にもテクニカルにも上がったところは上値が抑えられやすい展開を考え、今月のこれまでの押しとなった112.00レベルをサポートに、114.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

12月11日(月)
16:00 トルコ7〜9月期GDP
18:00 オーストリア中銀総裁金融安定化報告

12月12日(火)
09:30 豪州11月NAB企業信頼感
09:30 豪州7〜9月期住宅価格指数
18:30 英国11月CPI、PPI
19:00 ドイツ12月ZEW景気期待指数
19:00 ユーロ圏12月ZEW景気期待指数
20:00 南ア10月製造業生産
22:30 米国11月PPI
**:** FOMC(〜13日)

12月13日(水)
07:15 豪中銀総裁講演
16;00 ドイツ11月CPI確報値
17:00 南ア11月CPI
18:00 黒田日銀総裁講演
18:30 英国11月失業率
19:00 ユーロ圏10月鉱工業生産
20:00 南ア10月小売売上高
21:00 メイ首相議会で質疑応答
22:30 米国11月CPI
24:30 米国週間原油在庫
28:00 FOMC結果公表
28:30 イエレンFRB議長会見

12月14日(木)
09:30 豪州11月失業率
11:00 中国11月小売売上高、鉱工業生産
**:** EU首脳会議(〜15日)
17:00 南ア7〜9月期経常収支
17:00 フランス12月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ12月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏12月製造業・サービス業PMI速報値
18:30 英国11月小売売上高
18:30 南ア11月PPI
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:00 英中銀MPC結果公表
21:45 ECB理事会結果公表
22:30 ドラギECB総裁会見
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国11月小売売上高
22:30 米国11月輸入物価指数
23:45 米国12月MarkIt製造業・サービス業PMI速報値
24:00 米国10月企業在庫
26:25 カナダ中銀総裁講演
30:30 NZ11月企業景況感

12月15日(金)
08:50 本邦12月日銀短観
16:00 トルコ9月失業率
**:** ドイツCSU党大会(〜16日)
18:00 オーストリア中銀総裁GDP見通し公表
19:00 ユーロ圏10月貿易収支
22:30 米国12月NY連銀製造業景況指数
23:15 米国11月鉱工業生産、設備稼働率

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値   高値   安値   終値
 
ドル円  112.87   113.59  111.99  113.45
ユーロ円 133.86  134.05  132.25  133.59
ユーロドル 1.1857 1.1878   1.1730  1.1774
日経平均 22843.53 22864.33 22119.21 22811.08

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

12月4日(月)
 週明けの東京市場では、上院で税制改革法案が可決されたことを好感してドルがギャップアップしてのスタート、ドル全面高、株式市場もリスクオンで買いが強い流れとなりました。ドル高地合いはNY市場まで続き、NYダウが続伸したことから一時113.09レベルの高値をつけたものの、ロシアゲート事件に絡んで2名の議員に調査が入るとの報道から反落。リスクオフから株式市場は安値引け、為替市場もドル安の動きから112.36レベルの安値をつけ、そのまま安値圏での引けとなりました。

12月5日(火)
 ドル円は方向感がはっきりしないものの、東京市場から欧州市場まではポンドを中心として欧州通貨が弱かった動きからドルが底堅い動きとなりました。NY市場に入り、税制改革法案の上院下院によるすり合わせがあることから上値も重くなり、ダウがじり安となった動きに連れドル円も引けにかけてやや下げる動きとなりました。

12月6日(水)
 東京市場のドル円は株式市場が大幅安となったことを受けリスクオフの円買いとなりました。きっかけはトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めたことで、これまでどの国もエルサレム問題を避けて通ってきたところに、いきなり米国から飛び出た発言により中東和平の流れが中断することを懸念した動きです。実際にイスラム圏国家はすぐに反発しましたし、欧州のみならず米国内でも現地にいる自国民に対して警戒を呼び掛ける動きとなり、新たなリスクオフの材料が突然加わりました。欧州市場序盤には一時111円台へと入り込みましたが下げ止まり、海外市場では112円台前半の狭いレンジでの取引が続きました。

12月7日(木)
ドル円は終日リスクオンの動きとなりました。東京市場では前日のトランプ大統領のエルサレム発言の巻き戻しからドル買いが先行する中、日経平均株価も前日の下げを回復する動きとなったことで金曜の雇用統計前のポジション調整が入りました。海外市場に移ってからもリスクオンの動きは続き、ドル円は週間高値を更新し113.16レベルの高値をつけ高値圏でのクローズとなりました。

12月8日(金)
雇用統計を前に東京前場からドル高の動きとなりました。米国の財政改革法案やブレグジットの進展期待による思惑買いが株式市場に入り、株高がきっかけとなったリスクオン相場でした。欧州市場序盤には113円台半ばを回復してのNY市場入り、雇用統計はNFPこそ強かったものの平均時給が弱かったこともあり、発表直後は上げて下げと忙しい展開、引けにかけては落ち着きを取り戻し、再び113円台半ばへと戻し高値圏でのドル引けとなりました。

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