ランド円レポート月曜版
まず、先週の振り返り(ショートコメント)ですが、ランド円は「格付け発表までは、7.80レベルをサポートに、8.15レベルをレジスタンスとする週」としました。実際のレンジは、格付け発表までは安値が7.91レベル、高値が8.08レベルと膠着、格付け発表後の安値も7.85と予想以上に動きが少なかった週となりました。
先週はランド(対ドル、対円とも)を取引する全ての参加者が24日の格付け発表に注目していました。結果はS&Pが格付けを1ノッチ引き下げ、BBB−からBB+とジャンク債(投資不適格)とし、理由として「経済成長が低迷する一方、政府債務の増加で財政政策の柔軟性が失われつつある」ことをあげました。
いっぽう、ムーディーズはBaa3(BBB−相当)と格付けこそ変えませんでしたが、格付けを引き下げる方向で見直すと発表しました。同社は「経済、財政上の課題は予想より深刻である可能性がある」としています。来月の与党ANCの党大会や今後の同国の状況を見た上で改善が見込まれない限り、格付けが引き下げられる可能性が高いと考えざるを得ません、
更に、両社に先立ってジャンク債へと引き下げていたフィッチは前日23日にBB+と現状維持としています。24日のS&Pの発表がNYの引け直前だったということもあり、流動性の不安もありましたが対ドルで14.1552まで、対円で7.85へと下げたものの、ムーディーズが現状維持だったことでかろうじて急落は避けました。対ドルでも対円でも前の週の安値を割り込んでいませんので、当面は懸念が残るものの土俵に残ったというのが市場参加者の見方のようです。
しかし、ムーディーズが格付けを引き下げる方向で見直すとしている点では相当に危険です。ソブリン(国債)の指標のひとつにシティグループが発表している「シティ世界国債インデックス」というものがあります。これは、シティグループが開発した債券インデックスで、世界の主要国債の投資収益を各市場の時価総額比率で加重平均し指数化したものですが、国際分散投資のベンチマークとして広く使われているものです。
また、この指数に連動するファンドは世界中にあり、日本でもインデックスファンドとして上場ファンド(銘柄コード1677)のひとつとしてかなりメジャーなものです。現在23か国の国債から構成されていますが、この指数に採用される国債には以下のような条件があります。
・海外投資家の参加を積極的に促し方針の一貫性が示されていること
・最低残存期間が1年以上であること
・市場規模が500億米ドル相当以上であること
・最低残存金が一定額以上であること
・S&Pとムーディーズの格付けがジャンク級でないこと
ここまで読むと現在の南ア国債は最後の条件に首の皮一枚でつながっていることとなり、もしムーディーズが格付け引き下げを行うとシティ世界国債インデックスからの除外が決まります。除外が起きた場合のインパクトとして100億ドル以上の資金が南アフリカから流出する恐れがあるといわれています。
つまり、今後の南アフリカの状況次第では100億ドル以上の資金流出つまり、南アフリカランド売りへと繋がるリスクがあるわけです。もちろん、ムーディーズもすぐに引き下げることは無いでしょうが、早ければ年明け2月にもとの憶測もあり、そのような不安がある状態でランド高に動くことはとても考えられません。
下の週足チャートを見ていただくとわかりますが、ドルランドの史上最安値は2016年1月につけた17.8187でまだまだ距離があります。
ドルランド週足
しかし、南アフリカ経済や財政が急に好転するとも考えにくく、今後もランド売りのプレッシャーは断続的に出て来るものと思われ、ターゲットとなりやすいのが史上最安値(ドル最高値)とその後の高値(ドル安値)との半値にあたる15.0657、およそ15の大台というところです。またランド円の場合は、昨年の最安値6.92と今年の戻し高値8.95の61.8%押しが7.79となりますので7円台前半から7円の大台が今後視野に入ってくる可能性を常に意識しておきたいものです。
それでは、今週の値動きを考えるためにいつもの4時間足チャート(上かランド円、ドルランド、ドル円)をご覧ください。
ランド円、ドルランド、ドル円四時間足
前述した通りで思いのほか下げていませんが、ここに至るまでの間に国内の個人投資家から着実な買い下がりの動きが出ているものと考えられます。買いが鈍ってくる動きが出てきたときには注意なのですが、とりあえず危険が先送りされたのが現状です。
テクニカルにも心理的にも8円の大台は上値が重たくなりやすく、13日安値7.75を試しやすいのが今週だと考えています。基本は戻り売り、大台8.00レベルをレジスタンスに、7.75レベルをサポートとする流れを見ておきます。
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