ユーロ上昇回帰はダマシとなり再度下げか(11月第三週)

先週のユーロドルは、火曜欧州市場までは2週間以上に渡って続いた狭いレンジでのもみあいとなっていましたが、よくある嵐の前の静けさという状態だったのでしょうか

ユーロ上昇回帰はダマシとなり再度下げか(11月第三週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、火曜欧州市場までは2週間以上に渡って続いた狭いレンジでのもみあいとなっていましたが、よくある嵐の前の静けさという状態だったのでしょうか、もみあいが長く続いた分反動も大きく、予想よりも強かったドイツGDPに過剰ともいえる反応を見せ、一気にこれまでのレンジを上抜ける流れとなりました。

翌水曜には高値1.1862レベルと、月曜の安値1.1637レベルから200ポイント以上もの短期上昇となりましたが、その後は利食いともぶつかり、週後半は再びもみあい相場へと戻る流れとなりました。週末の段階では週半ばまでの上げの影響が大きく、先週までのユーロ安トレンドを否定するほどの上げとなりました。こちらは後からテクニカルな分析で指摘します。

しかし、ややユーロ高に勢いが無くなったのは金曜です。モラー特別捜査官がトランプ政権関係者の召喚状を出したことから、トランプ大統領周辺が絡んでいると思われるロシアゲート等の疑惑に対して何らかの進展がみられる可能性が出てきた件です。東京前場こそドル円同様にドル売りの動きとなったものの、それ以降はドル売り・ユーロ買いとはならず、やや上値が重たい状態での週末となったのです。

そして、週明けに飛び込んできたのがドイツの連立協議に関するニュースです。当初は3党連立に向けて協議が進展しているとのニュースだったところに、突如連立協議決裂とのヘッドラインが流れました。ニュースによると与党CDUと連立協議を続けるFDP、緑の党のうちFDPの担当者が緑の党との政策が違いすぎるため退席したと報じられています。FDPが交渉の場に戻らないと、少数与党となるか再選挙となるかのどちらかですが、いずれにしてもドイツの政局が一気に流動的となる可能性が出てきました。

決裂後にメルケル首相は暫定首相として本日大統領と協議すると語り、FDP党首は連立の合意草案が矛盾だらけだとして協議から離脱したと語りました。先週の英国に続いてドイツまでもとなると、先週形成されたユーロ高への回帰が大きなダマシとなる可能性も出てきました。本日のメルケル首相と大統領との協議をまずは見守りたいところですが、暗雲が立ち込めているという言葉がふさわしい様子です。

これで、ドルもユーロも売り材料を抱えていますので、消去法として円買いという動きがもっとも無難な選択肢となり、当面はユーロは対ドルでは売りが入りやすく、ユーロ円では大きく売られるリスクがあるという感じです。ここからはテクニカルな観点から見てみます。日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

先週火曜の東京市場までは、チャート中央の9月高値を中心としたヘッド&ショルダーを形成し、ユーロ一段安の可能性を探る展開でしたが、火曜の急騰で9月高値からの下降チャンネルを上抜け、ヘッド&ショルダーによる下げは失敗したと考えざるを得ない動きが続きました。そこに本日早朝のニュースによる下げで、下降チャンネル上限まで押す動きとなったところまでが現状です。(黄色のラインマーカー部分)

この上限のレジスタンスラインがサポートとなっている内はまだいいのですが、チャンネル内に再度入り込む動きとなった場合、上げる動きも同様に失敗することとなります。チャートの先読みは禁じ手ですが、少数与党にしても、再選挙にしてもメルケル首相が今後首相でいられるかどうか、というところまで行きかねませんので材料的にユーロ売りであることは間違いありません。

先週は英国でしたが、今週はドイツの政局が流動的となってきたことから、ユーロは水準こそ違うものの戻り売り、やや下方向に余裕を見て1.1650レベルをサポートに、1.1780レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週のコラム

先週はFX羅針盤の補足記事とも合わせてユーロポンドを見ましたが、今週は上にも書いた通り、ユーロ円の売りがもっとも入りやすいと思いますので、ユーロ円の日足チャートを見てみます。水準的にも11月安値も10月安値も下回ってきたため、短期的にも長期的にも神経質にならざるを得ないチャートです。こちらも日足チャートをご覧ください。

              ユーロ円日足

              ユーロ円日足

ユーロドルと同じく1か月を紫の四角で囲んでありますが、9月高値、10月高値、11月高値でトリプルトップ状のリバーサルパターンを形成中で、10月安値と11月安値がネックライン、本日の下げでその水準を試しているチャートです。

赤いフィボナッチのラインは、4月安値114.83と10月高値134.50との23.6%と38.2%の押しに引いてありますが、前者は129.86と130円の大台とも重なる水準で、まずは最初のターゲットとされやすい水準で、更にユーロ売りが強まる場合には、38.2%押しにあたる126.99、こちらは6月下旬以降は見ていない水準ですが、今後もし8月安値が視野に入ってきた場合には、考えておくべき水準です。

本日、欧州時間のメルケル首相と大統領との協議後の発表が気になりますね。

前週のユーロレンジ

        始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.1662 1.1862 1.1637 1.1792
ユーロ円  132.58 133.86 131.92 132.21

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

11月13日(月)
 英国の政局不安からポンドに東京朝方から売りが強まる展開となり、ユーロドルもじり安の展開が続きました。しかし、NY市場の朝方にポンドが底打ちするとともにユーロドルにも買い戻しが入り日中高値を更新後に高値圏へと切り上げましたが、値幅自体は狭くあまり活発ではない値動きのまま一日を終わりました。

11月14日(火)
 東京市場では動意薄でしたが欧州市場序盤に発表されたドイツのGDPが予想よりも強かったことをきっかけにユーロドルが上昇、これまで狭い値幅での取引が続いていた反動もあり大きく値を伸ばすこととなりました。その後もNY後場までワンウェイアップの力強い上げ相場となり、安値から1.1805まで140ポイント強の上昇となり、そのまま高値圏での引けとなりました。

11月15日(水)
 東京市場では動きの鈍かったユーロドルが欧州市場に入り一段高となり、NY市場の朝方には1.1862レベルまで上伸する動きを見せました。しかし、連日のユーロ買いに対して短期筋の利食いも入り、引けにかけてはユーロドルは行ってこいの動きでの引けとなりました。

11月16日(木)
ユーロドルは1.17台後半での小動きが続き、週前半に大きな動きを見せた反動か、まったく方向感がはっきりしない展開となりました。ただ、1.1750以下では買いも控えている様子でユーロ高を見込む向きが増えている印象の一日となりました。

11月17日(金)
東京前場は米国モラー捜査官がトランプ陣営に召喚状とのニュースに反応し、ドル売りユーロ買いとなり1.18台前半に乗せました。しかし、株安の動きはユーロ円でのリスクオフの売りとなり、その後は高値圏での膠着状態。海外市場では値動きも狭く動意薄のままでの引けとなりました。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

11月20日(月)
**:** メルケル首相、大統領と協議
16:00 ドイツ10月PPI
20:45 オーストリア中銀総裁講演
21:15 ラウテンシュレーガーECB理事講演
23:00 ドラギECB総裁講演
23:15 コンスタンシオECB副総裁講演

11月21日(火)
18:30 英国10月財政収支
24:00 クーレECB理事講演

11月22日(水)
21:00 メイ首相・コービン党首討論
21:30 英国財政報告書公表
21:30 フランス中銀総裁講演
24:00 ユーロ圏11月消費者信頼感速報値

11月23日(木)
16:00 ドイツ7〜9月期GDP確報値
16:45 フランス11月企業景況感指数
17:00 フランス11月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ11月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏11月製造業・サービス業PMI速報値
18:30 英国7〜9月期GDP改定値
21:00 フランス中銀総裁講演
21:30 ECB理事会議事要旨公表
25:30 スイス中銀総裁講演
27:15 クーレECB理事講演

11月24日(金)
18:00 ドイツ11月ifo景況感指数

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