ドル円 先週のレンジ内でもみあいもドル安トレンドは変わらず(週報4月第2週)

先週のドル円は、週初はOPECプラスによる減産サプライズで原油価格上昇とともに円安で始まりました。

ドル円 先週のレンジ内でもみあいもドル安トレンドは変わらず(週報4月第2週)

先週のレンジ内でもみあいもドル安トレンドは変わらず

〇先週のドル円、週初はOPECの減産サプライズで原油価格上昇とともに円安で始まる
〇一時133.75レベルの高値をつけるも弱い経済指標を受け米金利低下によるドル売りに
〇雇用関連の弱い経済指標が火曜、水曜と続き130.64レベルまで水準切り下げる
〇金曜は予想よりも若干強い米国雇用統計を受け132円台前半へと戻す
〇本日19:15から植田日銀総裁による就任会見、内容によっては円関連だけ動く可能性も
〇今週は131.30レベルをサポートに、133.30レベルをレジスタンスとする流れとみる

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初はOPECプラスによる減産サプライズで原油価格上昇とともに円安で始まり、東京後場に一時133.75レベルの高値をつけたもののそこまで。同レートを週間高値に利食い、そしてNY市場では弱い経済指標を受けて米金利低下によるドル売りとなりました。特に雇用関連の弱い経済指標が火曜、水曜と続き130.64レベルまで水準を切り下げましたが、木曜はイースター連休前の買い戻し、金曜は予想よりも若干強い米国雇用統計を受けて132円台前半へと戻して引けました。

まずOPECプラスによる減産ですが、先週のユーロ週報でも書いた通りで今回よりもはるかに多い12月の200万バレル減産にもまったく原油価格は上がりませんでした。また全世界の原油生産量は先週は9000万バレルと書きましたがこれは下限の推測で、上限は1億バレル程度が推測され、今回の減産量は現状維持で1%強、世界最大の産油国でもある米国が増産したら、今後の景気後退懸念による消費量減少の方が大きい可能性があります。つまり、今回の減産の影響はあまり無いというのが現時点での見方となります。

そして景気後退懸念については、先週の雇用関連の経済指標で一段と懸念が強まりました。火曜の求人件数は2021年5月以来の1000万件割れとなり、続くADP全国雇用者数は予想よりも弱く、失業保険申請数は予想よりも多くと、雇用関連で米国の景気後退懸念が広がっています。金曜の雇用統計は予想よりは若干良かったものの、悪いという思惑の中での発表だったためにドル買いになっただけで、決して雇用状況が良いと客観的に言える数字でもありません。

米金利も10年債利回りは3.25%台まで低下したものの金曜には3.4%台へと戻し、5月FOMCにおける利上げ思惑も一時期は現状維持が60%を超える状況が、再び0.25%利上げの織り込み度が66%程度へと上がってきました。ただ、5月3日のFOMCまで3週間以上あり、今後出てくる経済指標が弱かったり、今週のCPIが予想以上に低下したりしている場合には再び現状維持思惑が強まる可能性が高まります。現時点では5月に最後の利上げを行い、5.0〜5.25%となり、7月26日FOMCで緩和に転じるというのがコンセンサスです。

緩和に転じるタイミングはFOMCメンバーに比べるとかなり手前ですが、7月という時期は昨年長短金利の利回り差(10年債−2年債)がマイナスとなったタイミングであり、過去の例から判断すると1年以内に景気後退となるということも金利市場参加者の利下げ思惑につながっていると考えることもできるでしょう。そういう意味で、短期的に米金利は上下しても数か月という単位で考えると低下している可能性は高く、そうなると中期的な為替市場もドル安トレンドに向かいやすいということになります。

今週に関してはイースターの4連休が明ける火曜からが本格的な市場再開となりますが、FOMCで投票権を持つ地区連銀総裁の講演が多いため、どのような発言が出てくるのか注目です。市場参加者の見通しよりはタカ派であると考えられますが、そうでも無いということになれば金利低下に繋がるでしょう。

そして本日から新日銀総裁としてスタートを切る植田日銀総裁による就任会見が本日19:15から予定されています。金融政策に直結する話が出てくるかどうか、出てくるとしたら出口戦略について何か言及するのか、会見内容によっては参加者が少ない中で円関連だけ動く可能性があります。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

先週と同じく昨年高値からのレジスタンスラインと年初来安値からのサポートライン(どちらもピンクのライン)のみを引いてあります。現在は3月高値と3月安値との戻しが半値戻し133.76でほぼ確定した段階にあり、戻り売りが優勢となりやすいと言えるでしょう。この半値戻しの手前133円台前半が今週はレジスタンスとなってきそうです。

いっぽうで目先の下値も見たと思いますので、先週の安値圏はサポートとなってきます。今週は先週のレンジ内で横方向のもみあい局面を考え、131.30レベルをサポートに、133.30レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

4月10日(月)
**:** 東京、NYを除いて主要市場は休場 ☆
08:50 本邦2月貿易収支(国際収支)
16:00 トルコ2月失業率
 19:15 植田日銀新総裁就任会見 ☆
23:00 米国2月卸売売上高
23:00 スペイン中銀総裁講演
29:15 NY連銀総裁講演 ☆

4月11日(火)
08:01 英国3月小売売上高
09:30 豪州4月消費者信頼感
10:30 豪州3月企業景況感
10:30 中国3月CPI・PPI ☆
16:00 トルコ2月鉱工業生産
18:00 ユーロ圏2月小売売上高
26:30 シカゴ連銀総裁講演 ☆

4月12日(水)
07:00 フィラデルフィア連銀総裁講演 ☆
08:30 ミネアポリス連銀総裁講演 ☆
21:30 米国3月CPI ☆
22:00 英中銀総裁講演 ☆
22:00 (リッチモンド連銀総裁講演)
23:00 カナダ中銀政策金利発表 ☆
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC議事録公表 ☆
27:15 フランス中銀総裁講演 ☆
**:** G20(〜13日)

4月13日(木)
08:01 英国3月住宅価格
10:30 豪州3月失業率
**:** 中国3月貿易収支
15:00 ドイツ3月CPI
15:00 英国2月貿易収支、鉱工業生産
18:00 ユーロ圏2月鉱工業生産
21:30 米国3月PPI ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
27:00 ドイツ連銀総裁講演 ☆

4月14日(金)
15:45 フランス3月CPI
21:30 米国3月小売売上高、輸入物価
22:15 米国3月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国4月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
23:00 米国2月企業在庫

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

4月3日(月)
週明けのドル円は週末にサウジアラビアが5月から50万バレルの原産を発表、OPECプラスと協調して115万バレルの減産が行われることを受け、原油価格とともにドル円もギャップアップして始まりました。東京後場には133.76レベルへと金曜高値を更新しましたが、133円台後半では利食い売りも多く下げへと転換、NY市場では弱い経済指標を受け米金利が低下するとドル円も下げが加速し、132.20レベルまで売られ安値圏での引けとなりました。

4月4日(火)
ドル円はNY市場までは株高とともにリスクオンによる円売りの動きが続きましたが、前日NYタイムの高値を上抜けることはできず、133.15/20水準ではドル売りオーダーが残っている印象でした。米国労働省が発表する求人件数が2021年5月以来の1000万件割れとなったことから、米金利が急速に低下し10年最利回りは3月24日以来の3.335%まで低下。ドル円も米金利低下とともに131.52レベルまで水準を切り下げ若干戻しての引けとなりました。

4月5日(水)
ドル円はNY市場まで前日安値圏で上下を続けていましたが、前日の求人件数に続いてADP全国雇用者数も予想より弱かったことから米金利が3.268%まで一段と低下しました。ドル円も130.63レベルまで売られましたが、引けにかけては買い戻しが入り131円台前半へと戻して引けました。

4月6日(木)
ドル円は前日までの下げに対してイースター4連休を前にしてのポジション調整による買い戻しが続きました。NY市場に入り発表された失業保険申請数は予想よりも多く今週に入ってからの雇用関連の指標は軒並み悪いということになりました。米10年債利回りも3.279%まで下げたものの引けにかけては戻し、ドル円は131.90レベルまで買い戻され底堅い地合いのまま引けました。

4月7日(金)
ドル円はグッドフライデーで東京以外の主要市場が休場となる中での米国雇用統計発表ということもあって、NY市場までは131円台後半での小動きが続きました。米国雇用統計は失業率が若干予想よりも良い程度でしたが、事前に発表された雇用関連指標が軒並み弱かったせいか、ドル買いで反応。直後に132.38レベルまで上昇後、引けにかけてはやや押して引けました。

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