短期的には上下とも見たものの上値は重い
〇先週のユーロドル、米金利低下の影響強く週間の値幅は週初より80pipsほど上昇
〇スイス中銀と英中銀の会合はコンセンサス通りの+0.5%と+0.25%の利上げ
〇景気後退懸念が今後出てくると考えユーロは短期的には先週高値でいったん上を見たという印象
〇一連のCPIが出た後の31日のラガルドECB総裁の講演は注目
〇四半期末のロンドンフィキシングで実需が傾くと思いのほか動く可能性があり注意
〇今週は1.0670レベルをサポートに1.0900レベルをレジスタンスとする週とみる
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルはクレディ・スイスの買収が決まったことで小康状態となっていましたが、金曜にはドイツ銀行の経営不安の思惑が出て、米国だけでなく欧州の大銀行にも問題が広がってきました。ただ米国では米金利が短期間に上昇したことが銀行のポートフォリオを毀損させたということが問題ですが、欧州の場合は以前から続く経営問題に改めて焦点が当てられたという点で問題の本質は異なります。
それでもユーロドルの動きとしては米金利低下の影響がより強く木曜まで上昇を続けたことで週間の値幅でも週初よりは80pipsほど上昇して引けています。また先週はスイス中銀と英中銀の会合がありましたが、それぞれ+0.5%と+0.25%の利上げとコンセンサス通りであったことから、あまり市場への影響は見られず、金融機関の経営問題に目が移ったと言えます。
ただ、欧州の金融機関も短期間で金利が上昇していることから米銀と同じような問題を抱えている銀行はあるでしょうし、金曜に発表された製造業PMI速報値を見ると各国ともに予想以上に弱くインフレが高止まりしている中での景気後退懸念が今後出てくるであろうことを考えると、ユーロも短期的には先週高値でいったん上を見たという印象です。
今週は主要国のCPI速報値が発表されますが、CPIの数字がよほど低下していない限りECBは次回も利上げを行う可能性は強く、一連のCPIが出た後の31日のラガルドECB総裁の講演は注目されます。また四半期末のロンドンフィキシングで実需が傾くと、期末で実需以外の取引が減少する中で思いのほか動く可能性がありますので、これも注意しておきたいところです。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
ドル安のほうが目立ったことからユーロドルは3本の平行線の真ん中の水準まで上げてきましたが、同ラインで反落したこと、2月高値と3月安値の78.6%(61.8%の平方根)戻し1.0923でほぼ止まったことから引き続きレジスタンスとしてワークしていると見て良いでしょう。いっぽうで下値については一番下のサポートラインが3月安値と重なって来ていて、1.05台前半がサポートとなりやすい水準です。
下値には幅がありますので、3月安値と高値の61.8%押しとなる1.0673を参考にします。今週は1.0670レベルをサポートに1.0900レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
先週はクレディ・スイスの株価を長期で見ましたので、今週はドイツ銀行を見てみましょう。
月足チャートですが、コロナショック後の安値4.4485がユーロ発足後の最安値です。先週の陰線は大きく水準を考えるとかなりの下げとなっていますが、先週見たクレディ・スイスのように下げっぱなしというほどではありません。ただ、12.5ユーロ水準で妙に上値が重くなってきていることから2022年安値7.429をトライしやすい流れにありそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
3月27日(月)
**:** 欧州、英国夏時間取引開始 ☆
17:00 ドイツ3月ifo企業景況感
17:30 ドイツ連銀総裁講演 ☆
22:40 エルダーソンECB理事講演 ☆
24:00 シュナーベルECB理事講演 ☆
26:00 英中銀総裁講演 ☆
3月28日(火)
15:45 フランス3月企業景況感
17:45 英中銀総裁議会証言 ☆
3月29日(水)
15:00 ドイツ4月GFK消費者信頼感 ☆
15:45 フランス3月消費者信頼感 ☆
3月30日(木)
18:00 ユーロ圏3月消費者信頼感 ☆
21:00 ドイツ3月CPI速報値 ☆
3月31日(金)
15:00 ドイツ2月小売売上高
15:00 ドイツ2月輸入物価
15:00 英国10〜12月期GDP改定値 ☆
15:00 英国3月住宅価格
15:45 フランス3月CPI速報値 ☆
15:45 フランス2月PPI
16:55 ドイツ3月失業率
18:00 ユーロ圏3月CPI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏2月失業率
24:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
3月20・21日(月・祝)
週明け東京市場ではクレディ・スイスの余波も懸念されていたものの、UBSによる買収、日米欧による流動性供給の協調を好感し、リスクオフ相場が底打ちの動きとなりユーロドルも欧州市場序盤に1.0632レベルで底打ちしました。
翌21日は東京市場では動きが見られず、欧州市場では前日からのリスクオフの巻き返しが続きユーロドルも買い戻しの動きとなりました。ユーロドルは1.0789レベルまで買い戻され高値圏での引けとなりました。
3月22日(水)
ユーロドルはFOMCまでほとんど動かず、FOMC後の議長会見で利上げが一旦停止される可能性に言及したこと、イエレン財務長官が預金保険の拡大に慎重な発言をしたことからドル売りとなり、1.0912レベルまで上昇後に若干押して引けました。
3月23日(木)
ユーロドルは欧州市場序盤までユーロ買いが続きました。米金利低下によるドル売り、英中銀、スイス中銀の会合で利上げが予想されていることもユーロを下支えしていました。両中銀は予想通りの利上げ幅で一連のイベントが終わったこともあり、ユーロドルは引けにかけてじり安となり1.0824レベルの日中安値をつけ安値引けとなりました。
3月24日(金)
ドル円は前日の流れを受けドル売りが先行、米金利も低下が続き欧州市場昼前には129.64レベルの安値をつけました。欧州市場序盤からのユーロ円の下げも円買いを強めましたが、NY市場では米金利が反発したことや、強いPMIを手伝って130円台後半へ戻して引けました。
ユーロドルは東京市場ではまったく動かず、欧州市場に入りドイツ銀行の経営危機の噂から1.0713レベルまで100pips以上の下げを演じ、ユーロ円も139.07レベルまで水準を切り下げました。ドイツ銀行による債券の早期償還が誤解された面がありそうでしたが、ドイツ銀行もクレディ・スイス同様に以前から経営問題で話が上る金融機関のひとつであることから、米国だけでなく欧州の金融機関に対する警戒感もしばらく続きそうだという思惑が広がりました。
ディスクレーマー
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