ドル円 戻り売りの流れはしばらく継続(週報3月第4週)

先週のドル円は、米国の金融機関破綻が表面的には一段落したことで週前半はFOMCに向けて買い戻しが続きました。

ドル円 戻り売りの流れはしばらく継続(週報3月第4週)

戻り売りの流れはしばらく継続

〇先週のドル円、米国の金融機関破綻が表面的には一段落で週前半はFOMCに向け買い戻し続く
〇週末前にはドイツ銀行の経営不安と米金利低下で一時129.65レベルと2/3以来の安値圏に
〇当面はリスクオフをテーマに動き、円相場は円買いを考える状況が続く
〇どこかで戻り高値をつけ年初来安値127.21を試しに行く可能性が高い
〇戻り高値は131円台半ばがいいところだが、四半期末を控えての動きには念の為注意が必要
〇今週は129.50レベルをサポートに、131.50レベルをレジスタンスとする流れとみる

先週のドル円は、米国の金融機関破綻が表面的には一段落したことで週前半はFOMCに向けて買い戻しが続きました。FOMC自体は予想通り0.25%の利上げでしたが、インフレ抑制を強調する一方で、利上げが近く一旦停止される可能性にも言及し金利が低下したところに、イエレン財務長官が議会で預金保険の適用範囲の大幅な拡大は無いと水をさすような発言し更に下げ幅を拡大することとなりました。

イエレン財務長官は翌日の議会では正当化されれば預金保護のための追加措置を行うと発言し火消しに動いていましたが、預金保険の適用範囲については財務省内でも議論があるであろうことや、水面下で破綻予備軍の金融機関があるであろうと思わせる公聴会発言だったと言えます。そして週末前にはクレディ・スイスに続いてドイツ銀行の経営不安がうわさされ、米金利低下とともにリスクオフが強まり、一時129.65レベルと2月3日以来の安値圏を見ることとなりました。

シリコンバレー銀行破綻から始まった金融危機懸念は、当初は金利上昇による銀行ポートフォリオの毀損が問題となっていましたが、クレディ・スイス経営危機ではサウジアラビアが梯子を外したことで、UBSによる買収劇とCoCo債の元本ゼロとテーマが変化した感じでしたが、引き続き米国では金利上昇による経営悪化が終わったわけではありませんし、欧州に至っては大銀行の経営不安と更に問題が大きくなっていると言えるでしょう。

各国の当局は協調して対応に当たってはいるものの、どう考えても氷山の一角としか思えませんし、金融不安があってもインフレが高止まりしているため、緩和に転じることも出来ないというところが悩ましい状況でしょう。ある意味、インフレ率の上昇が緩やかでいまだ緩和を継続している日本は金融機関にとってはラッキーというところでしょうか。

日本の金融機関も長いゼロ金利下で外債を購入し、金利上昇による時価評価では損失が出ているはずですから全く無関係な話とは言っていられないでしょう。メガバンクは良いとして、地銀中位行あたりではどうなのか、3月期末決算を見て驚くようなことにはならないとよいのですが。

また、米国を中心に長期債利回りが低下している動きは日本の国債の利回り低下にもつながっていて、10年債利回りも上限の0.5%よりはだいぶ下で取引が行われていて、植田新総裁としてはイールドカーブコントロールの撤廃は前よりもしやすい環境にも思えます。ただ、それで長期債利回りが大きく上昇することが無いかを今後日銀内で検討していくこととなりそうです。

現在の金融市場を取り囲む環境を考えると当面はリスクオフをテーマに動いて良いと思いますので、円相場は円買いを考える状況が続くでしょう。テクニカルには日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

若干引き直しましたが、やや急ではあるものの3月高値からの下降チャンネル(ピンク)の中での動きを続け、年初来安値と先週高値との78.6%(61.8%の平方根)押し129.50をほぼ達成してからの反発調整局面となっています。ただ材料が変わらない以上、どこかで戻り高値をつけ年初来安値127.21を試しに行く可能性が高いチャートと言えるでしょう。

戻り高値は131円台半ばがいいところではないかと思いますが、四半期末を控えての動きには念の為注意が必要です。今週は先週安値と重なる129.50レベルをサポートに、131.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

3月27日(月)
**:** 欧州、英国夏時間取引開始 ☆
17:00 ドイツ3月ifo企業景況感
17:30 ドイツ連銀総裁講演 ☆
22:40 エルダーソンECB理事講演 ☆
24:00 シュナーベルECB理事講演 ☆
26:00 英中銀総裁講演 ☆

3月28日(火)
06:00 ジェファーソンFRB理事講演 ☆
09:30 豪州2月小売売上高
15:45 フランス3月企業景況感
17:45 英中銀総裁議会証言 ☆
21:30 米国2月卸売在庫
22:00 米国2月住宅価格、ケースシラー住宅価格 ☆
23:00 米国3月消費者信頼感 ☆
23:00 米国3月リッチモンド連銀製造業景況指数

3月29日(水)
09:30 豪州2月CPI ☆
15:00 ドイツ4月GFK消費者信頼感 ☆
15:45 フランス3月消費者信頼感 ☆
23:00 米国2月住宅販売保留件数
23:30 週間原油在庫統計

3月30日(木)
06:45 NZ2月住宅建設許可件数
09:00 豪州3月企業信頼感
17:30 南ア2月PPI
18:00 ユーロ圏3月消費者信頼感 ☆
**:** 南ア中銀政策金利発表
21:00 ドイツ3月CPI速報値 ☆
21:30 米国10〜12月期GDP確報値
21:30 米国新規失業保険申請数
25:45 (リッチモンド連銀総裁講演)

3月31日(金)
08:30 本邦3月東京区部CPI ☆
08:30 本邦2月失業率・有効求人倍率
10:30 中国3月製造業PMI ☆
15:00 ドイツ2月小売売上高
15:00 ドイツ2月輸入物価
15:00 英国10〜12月期GDP改定値 ☆
15:00 英国3月住宅価格
15:45 フランス3月CPI速報値 ☆
15:45 フランス2月PPI
16:00 トルコ2月貿易収支

16:55 ドイツ3月失業率
18:00 ユーロ圏3月CPI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏2月失業率
21:00 南ア2月貿易収支
21:30 米国2月個人所得・消費支出 ☆
22:45 米国3月シカゴ購買部協会景気指数 ☆
23:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感
24:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
28:00 NY連銀総裁講演 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月20・21日(月・祝)
週明け東京市場では前週末のクレディ・スイス経営危機から他行への波及も懸念されていましたが、UBSによる買収が決まり、また日米欧による流動性供給の協調が決まったことを好感し、いったんリスクオフ相場が底打ちの動きとなりました。
東京が休場となった21日は東京市場では動かず、欧州市場では前日からのリスクオフの巻き返し継続、米ドル、ユーロとも買い戻しの動きとなりました。ドル円は132.63レベルまで買い戻され高値圏での引けとなりました。

3月22日(水)
FOMCまでドル円は値動きこそ小さかったものの前日同様にリスクオフの巻き返しが進み、NY朝方には133.00レベルの高値をつけました。FOMCは予想通り0.25%の利上げとなり、ECB同様にインフレ抑制を強調するいっぽうで、利上げが近く一旦停止される可能性にも言及したことで米金利低下とドル安に動きました。会見でも利上げ休止を検討したとしたことで131.00レベルまで水準を下げた後に若干戻しての引けとなりました。

3月23日(木)
ドル円は東京前場はFOMC後の安値を下抜け130.42レベルと週初の安値を更新したものの下げきれず、NY市場までは米金利上昇とともに買い戻しが続きました。NY朝方には131.66レベルの高値をつけていましたが、NY市場では一貫して米金利が低下、FOMC後の水準を下回る動きとともにドル円も130.32レベルまで売られ、引けにかけては株価が上昇した動きも手伝って130円台後半へと戻しました。

3月24日(金)
ドル円は前日の流れを受けドル売りが先行、米金利も低下が続き欧州市場昼前には129.64レベルの安値をつけました。欧州市場序盤からのユーロ円の下げも円買いを強めましたが、NY市場では米金利が反発したことや、強いPMIも手伝って130円台後半へ戻しての週末クローズとなりました。

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