トルコリラ円見通し 円高継続で3月8日以降の安値更新(23/3/27)

トルコリラ円の3月24日は概ね6.88円から6.74円、25日早朝の終値は6.86円で前日終値と変わらずだった。

トルコリラ円見通し 円高継続で3月8日以降の安値更新(23/3/27)

円高継続で3月8日以降の安値更新

〇欧米金融不安を背景に、トルコリラ円はドル円下落基調に合わせた展開、週間で0.06円の円高リラ安
〇対ドル、24日終値で19.05リラ、これまでの最安値を更新
〇大地震から1か月半、貿易・経常・財政赤字拡大、債務膨張、国力の土台の脆弱性が顕著となる傾向
〇昨年10月天井からの下落時に近い動きとなる可能性、史上最安値6.17を目指す流れで進みやすいか
〇6.87から6.90にかけては戻り売りにつかまりやすく、6.82割れからは下げ再開とみる
〇6.80割れからは下向きとし6.74試し、6.74割れからは6.72から6.70を試すとみる
〇円高の継続で下げ足が速まる場合は、3月末に6.70割れへ向かう可能性もあるとみる

【概況】

トルコリラ円の3月24日は概ね6.88円から6.74円、25日早朝の終値は6.86円で前日終値と変わらずだった。
ロシア制裁に関してロシア新興財閥(オリガルヒ)に加担している疑いにより米司法省がスイス金融大手クレディ・スイスとUBSを調査していると報道されたことをきっかけにドイツ銀株が急落、欧州主要株価指数が下落したことにより信用不安の拡大とみてドル円は24日安値で129.63円をつけて3月8日高値137.91円以降の安値を更新した。円高を受けてトルコリラ円も6.74円へ売られて1月16日安値と同値に並んだ。ベンダーによっては6.71円等をつけて1月16日安値を割り込んでいる。
3月10日の米銀破綻を発端とした欧米金融機関に対する経営不安の波及を背景に円高が進行しており、トルコリラ円もドル円の下落基調に合わせた展開を続けているが、3月8日以降はドル/トルコリラにおけるリラ安の進行によりドル円よりも下落が厳しくなっている。
週間では3月17日終値6.92円からは0.06円の円高リラ安となった。

【対ドルで最安値を更新】

ドル/トルコリラの3月24日は概ね19.25リラから18.99リラの取引レンジ、25日早朝の終値は19.05リラで前日終値の19.00リラからは0.05リラのドル高リラ安となった。
手元のデータでは3月15日につけた安値19.10リラを超えて19.25リラへ史上最安値を更新した。ベンダーによってはレートの開きも大きく、3月15日に19.31リラ、24日に19.28リラの安値提示も見られる。
終値としては3月23日終値の19.04リラがこれまでの最安値だったが24日終値で19.05リラへさらに更新した。
3月24日はドイツ銀株の急落が発生するなど、3月10日の米銀破綻を発端とした金融機関の連鎖破綻懸念は払拭できていない。米銀の破綻報道が主要因となるところではドル安ユーロ高の反応が見られてきたが、欧州銀の株安を主要因とする場合はユーロ安ドル高の反応が見られる。信用不安の拡大による投機マネーの萎縮が新興国への投資意欲を削ぐこととなるためにトルコリラにとってはトルコ自身の経済状況やリラ安、大地震の影響、5月の大統領選挙へ向けた不透明感と共にリラ売りが進みやすい状況といえる。

【2月の海外観光客数 前年比 21.35%増】

3月24日に発表された2月のトルコへの海外観光客数は187万414人で前年2月の154万1393人からは21.35%増となった。2月6日のトルコ南部大地震発生による影響は首都イスタンブールから震源地への距離もあるために今のところは目立たないようだが、11月から4月にかけては比較的観光の閑散期に当たるため、5月から10月にかけての最盛期への影響がどうなるのかについては引き続き注意がいると思われる。
パンデミック発生前の2019年2月は167万238人でありパンデミックの影響から回復している。2月の入国上位5か国はロシア、ブルガリア、ドイツ、イラン、ジョージアで全体の4割を占める。

【大地震から1か月半、貿易・経常・財政赤字の拡大、債務膨張】

2月6日にトルコ南部を襲った大震災級の災害により死者は5万人を超え、経済的損失は約1,000億ドル、GDP比で1割を上回るとされる。現状では凡そ200万人がテント暮らしを余儀なくされているという。EUからの財政支援が期待されているもののそれだけで賄えるものではなく、トルコ政府も財政状態が良くない中で巨額の財政支出を強いられる。
1月の貿易収支は142億ドルの赤字となり赤字額としては過去最大となった。2月についても通関ベースの速報で122億ドルの赤字となっており、リラ安による輸入額増と欧米の景気減速による輸出の頭打ちが影響している。
1月の経常収支は98.5億ドルの赤字でこれも過去最大の赤字となった。
2月の財政収支は1705.6億リラの赤字で赤字額としては過去最大で、2020年以降は月次における黒字と赤字の変動幅が急拡大しており危うさを感じさせるものとなっている。
中央政府債務も2月は4兆2111億リラとなり過去最大を記録したが、2022年2月の2兆9484億リラの1.4倍に膨れ上がっている。

大地震の影響により被災地からの輸出減少が影響し、年初からのリラ安が進行していることによる貿易赤字及び経常赤字の拡大基調も継続し、債務膨張も続くと懸念される。またトルコのGDPは2022年の第1四半期の前年同期比7.6%増、第2四半期の7.8%増から第3四半期に4.0%増、第4四半期に3.5%増と伸びが半減したが、2023年第1四半期(1-3月)は大地震の影響もありさらに鈍化すると見込まれており、当面は景気面でのプラス感には乏しく、国力の土台の脆弱性が顕著となる傾向を余儀なくされると思われる。

加えて5月14日の大統領選挙においては、エルドアン大統領及び与党AKP(公正発展党)への支持率が低下する中、最大野党CHP(共和人民党)のクルチダルオール党首が野党統一候補となり、イスタンブールのイマモール市長や首都アンカラのヤワシュ市長が副大統領に指名される見込みもあり、さらには第3勢力の少数民族クルド人系の野党HDP(国民主主義党)が独自候補を擁立しないとしたことで野党統一候補が優勢となりつつある。独裁的ともいわれるエルドアン政権が現職の強みを発揮するとしてもどう転ぶかわからないということになると、海外投資家からみれば大統領選挙の結果を見なければ積極的な投資マインドを持てない状況と思われる。

【昨年10月天井からの下落時に近い動き、当面のポイント】

【昨年10月天井からの下落時に近い動き、当面のポイント】

トルコリラ円は3月24日安値で1月16日安値と同値まで下げた。
1月16日から2か月弱の上昇を凡そ半月で解消しており、ベンダーによってはすでに底割れに達しているところもあることを踏まえれば、3月8日高値を起点として昨年4月28日高値から8月2日安値への下落時(下げ幅1.65円)や、昨年10月21日高値から今年1月16日安値への下落時(下げ幅1.43円)並みとなる可能性を警戒すべきと考える。
1月16日から3月8日への上昇幅0.55円の倍返しの下落とすれば下値計算値は6.19円、昨年10月21日からの下落時並みと仮定すれば下値計算値は5.86円、昨年4月28日からの下落時並みとすれば下値計算値は5.64円となる。5円台の安値について言及するのは時期尚早と思うが、昨年3月11日安値と8月2日安値を結ぶラインは6円台序盤に来ており、当面は倍返しの6.19円及び2021年12月20日につけた史上最安値6.17円を目指してゆく流れで進みやすいのではないかと思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、6.74円を下値支持線、6.90円を上値抵抗線とする。
(2)6.87円から6.90円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいところとし、6.82円割れからは下げ再開とみる。
(3)6.80円割れからは下向きとして6.74円試しとし、6.74円割れからは6.70円台序盤(6.72円から6.70円)を試すとみる。6.70円台序盤は買い戻しも入りやすいとみるが、円高の継続で下げ足が速まる場合は3月末に6.70円割れへ向かう可能性もあるとみる。

【当面の主な予定】

3月27日
 16:00 3月 製造業信頼感指数 (2月 102.4)
 16:00 3月 設備稼働率 (2月 75.2%)
3月30日
 16:00 3月 経済信頼感指数 (2月 99.1)
 20:30 週次 外貨準備高 3月24日時点 グロス(3月17日時点 739.3億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 3月24日時点 ネット(3月17日時点 199.9億ドル)
3月31日
 16:00 2月 貿易収支 (1月 -142億リラ)
4月3日
 16:00 3月 消費者物価指数 前月比 (2月 3.15%)
 16:00 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 55.18%)
 16:00 2月 消費者物価コア指数 前月比 (2月 2.1%)
 16:00 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (2月 50.6)
 16:00 3月 生産者物価指数 前月比 (2月 1.56%)
 16:00 3月 生産者物価指数 前年同月比 (2月 76.61%)

注:ポイント要約は編集部

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