ドル円 金融危機懸念が続きドルは戻り売り(週報3月第3週)

先週のドル円は、週を通して次々と金融機関の問題が発生しては当局が即日対応することを繰り返してきました。

ドル円 金融危機懸念が続きドルは戻り売り(週報3月第3週)

金融危機懸念が続きドルは戻り売り

〇先週はクレディ・スイスの経営危機など週を通して次々と金融機関の問題が発生
〇投資家心理は冷え込みリスクオフ相場が続きやすい流れ
〇今週のFOMCでの2023年末金利見通しとパウエル議長の会見が最大の注目材料
〇目先のターゲットは、年初来安値と先週高値との61.8%押しの131.29
〇今後、金融機関の経営危機など更なるリスクオフ材料によっては大台130円も視野に
〇今週は大きく動く時は円高と考え130.30レベルをサポート、132.80レベルをレジスタンスとする

今週の週間見通し

先週のドル円は、前週末のシリコンバレー銀行の破綻、週明け未明(米国日曜)の当局による預金全額保護の発表、米地銀への波及と救済計画、さらには世界的な大銀行であるクレディ・スイスの経営危機と週を通して次々と金融機関の問題が発生しては当局が即日対応することを繰り返してきました。クレディ・スイスへの対応もスイス中銀が流動性供給をし、週明け未明にはUBSによる買収と日々、金融危機懸念という名前のジェットコースターに乗っているような感じです。

当局の素早い対応に安心感はあるものの、UBSによるクレディ・スイス買収にあたってCoCo債(AT1に分類される劣後債)が完全な元本削減(ゼロ)による自己資本拡充に使われることとなりました。株価もかなり下がっているものの、劣後債がゼロになるという事態は投資家を焦らせるには十分なニュースで、これで落ち着いたと見るよりも更なる金融危機懸念はまだやってくると見た方がよさそうです。今後新たな金融機関問題が出て来ても当局による対応はあるでしょうが、投資家心理は冷え込みリスクオフ相場が続きやすい流れは変わりそうもありません。

こうした中で、今週は水曜にFOMC、木曜にスイス中銀と英中銀の会合があります。FOMCではシリコンバレー銀行破綻以降は0.25%の利上げがコンセンサスとなっていますが、すでにその段階でターミナルレートに到達し、6月には利下げに転じ、2023年末の水準は3.75〜4.0%(中央値3.875%)がFF先物市場の取引水準から予想されます。果たして、今週のFOMCで2023年末の金利見通しがどのようになるのか、前回5.125%から大幅な低下見通しが示されるのか、答え合わせとパウエル議長の会見が最大の注目材料です。

またスイス中銀は政策金利決定会合が四半期に一度しか無いため、これまではECBに追いつくために大幅な利上げがあるかもしれないと考えられてきましたが、UBSによるクレディ・スイス買収とそれに伴う流動性供給の動きが出てきたことで、逆に利上げ幅が少なくなる可能性も指摘されています。現状は0.5%の利上げがコンセンサスです。

材料的にはまだリスクオフの材料が明らかに多く、ドル円は戻り売りが出やすい流れにありますが、テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

2月安値からの短期的な上昇チャンネル(青)を下抜け、現状ではやや急ではあるものの3月高値からの下降チャンネル(ピンク)の中での動きと考えても良さそうです。目先のターゲットは、年初来安値と先週高値との61.8%押し131.29となりますが、今後出てくるかもしれない金融機関の経営危機など、更なるリスクオフ材料によっては大台130円も視野に入れておいたほうが良いでしょう。

今週はドルの上値が重たい地合いが継続し、大きく動く時は円高と考え130.30レベルをサポートに、132.80レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

3月20日(月)
08:50 日銀会合(3月)主な意見公表 ☆
16:00 ドイツ2月PPI ☆
19:00 ユーロ圏1月貿易収支
23:00 ラガルドECB総裁 ☆、ポルトガル中銀総裁講演

3月21日(火)
**:** 東京市場休場
06:45 NZ2月貿易収支
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表 ☆
19:00 ユーロ圏3月ZEW景況感 ☆
19:00 ユーロ圏1月建設支出
21:30 ラガルドECB総裁 ☆、フランス中銀総裁講演 ☆
23:00 米国2月中古住宅販売
**:** FOMC(〜22日)

3月22日(水)
16:00 英国2月CPI ☆
17:00 南ア2月CPI
17:45 ラガルドECB総裁講演 ☆
18:30 レーンECB理事講演 ☆
20:30 フィンランド中銀総裁講演
21:00 ベルギー中銀総裁講演
22:45 パネッタECB理事講演 ☆
23:30 週間原油在庫統計
25:45 ドイツ連銀総裁講演 ☆
27:00 FOMC結果発表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆

3月23日(木)
17:00 南ア1〜3月期消費者信頼感
17:30 スイス中銀政策金利発表 ☆
17:40 ギリシャ中銀総裁講演
19:00 オーストリア中銀総裁講演
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:00 英中銀MPC結果発表 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
23:00 米国2月新築住宅販売
24:00 ユーロ圏3月消費者信頼感速報値 ☆
**:** EUサミット ☆

3月24日(金)
08:30 本邦2月CPI ☆
09:01 英国3月GFK消費者信頼感 ☆
16:00 英国2月小売売上高
17:15 フランス3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 ドイツ3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 英国3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
21:30 米国2月耐久財受注
22:45 米国3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆

3月26日(日)
**:** 欧州、英国夏時間に移行 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月13日(月)
シリコンバレー銀行の破綻に続きシグネチャー銀行も破綻と金融当局は万全の体制を整えてはいるものの先行きの不安がリスクオフの姿勢を強めた週明け相場となりました。株式市場は下げ、金は買われと典型的な動きを見せましたが、為替市場ではこれまで金利差拡大思惑によるドル円の買いの巻き戻しでドル売りが強まる結果となりました。NY朝方には132.28レベルまで水準を下げ、引けにかけては133円台に戻しました。

3月14日(火)
前日はシリコンバレー銀行の破綻の影響からリスクオフの動きが強まりましたが、当局の対応によりいったんは落ち着きつつあることからリスクオフの巻き返しの動きになりました。株式市場は上昇し、ドル円も一時134.90レベルまで買い戻されました。米国CPIは予想通りとなったこと、目先の材料が米国の金融機関問題へと変化してきたこともあって材料視されませんでした。引けにかけては134円台前半に押して引けました。

3月15日(水)
欧州市場までは前日のリスクオフの巻き返しが続き、欧州市場朝方には135.11レベルの高値をつけていました。しかし、以前から経営不安が囁かれていたクレディ・スイスに対して筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクが追加投資はしないと述べたことをきっかけに同社株を中心に欧州株式市場は全面安となり、ドル円、ユーロドルともに大幅安となり、NY朝方にドル円は132.21レベルの安値をつけ、引けにかけてはスイス中銀が必要ならば流動性を供給すると発表したことで133円台前半へ戻して引けました。

3月16日(木)
ECB理事会を前にNY市場までは小動きのドル円でしたが、米地銀ファースト・リパブリックの経営危機からリスクオフに動き、一時131.72レベルの安値をつけました。その後、大手米銀による支援が報じられ株高、ドル円買い戻しとなり、133.83レベルまで買い戻され高値圏での引けとなりました。

3月17日(金)
シリコンバレー銀行破綻から始まった金融危機懸念はクレディ・スイスの経営危機にまで発展してきたことで週末を前にリスクオフの動きが終日続きました。米金利は低下、NYダウも一時500ドルを超える下げとなり、ドル円は131.55レベルまで下落し、引けにかけて131円台後半に戻しての引けとなりました。

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