ユーロドルは横ばい、ユーロ円は下(週報3月第3週)

先週のユーロドルは株式市場の下げがドル円だけでなくユーロ円においても円買いの動きとなったことで、上昇はそれほど大きいものとはなりませんでした。

ユーロドルは横ばい、ユーロ円は下(週報3月第3週)

ユーロドルは横ばい、ユーロ円は下

〇先週のユーロドル、週前半は米銀破綻連鎖や経営危機によるリスクオフからドル売りユーロ買いの動き
〇株式市場の下げがドル円だけでなくユーロ円でも円買いの動き、ユーロドルは大きな上昇にはならず
〇今週はスイス中銀と英中銀の政策金利発表予定、金融危機懸念に対する声明文や会見内容に注目
〇レジスタンスは年初来高値と3月安値の半値戻し1.0777レベル
〇サポートは2月安値と3月安値がほぼ同水準の1.05台前半
〇今週は1.0520レベルをサポートに、1.0780レベルをレジスタンスとする週と見る

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは週前半は米銀の相次ぐ破綻や経営危機によるリスクオフの動きからドル売り・ユーロ買いの動きとなっていましたが、株式市場の下げがドル円だけでなくユーロ円においても円買いの動きとなったことで、ユーロドルの上昇はそれほど大きいものとはなりませんでした。


そして以前から経営不安が囁かれていたクレディ・スイスに対してサウジ・ナショナル・バンクが追加の出資はしないと述べたことをきっかけに、一気にクレディ・スイスの経営危機が問題となり、スイス中銀は流動性の供給、スイス政府も一部の債務を引き受けることで問題が広がらないようにとしていましたが、結局は週明けまでは持たず、週明け東京の未明にUBSによる買収が決まりました。

この買収によりCoCo債(Contingent Convertible Bonds、AT1に分類される劣後債)が自己資本拡充に使われることとなり、所有していた投資家(総額約2兆3000億円)は価値がゼロとなることも併せて発表されました。債券は通常であれば株式よりも返済順位が高いのですがCoCo債というのは永久劣後債(満期が無く返済順位が低い債券、リスクがある分利回りが高い)のひとつで、自己資本比率が一定割合を下回った際に元本が減額されるトリガーがある債券です。

今回はこのCoCo債の元本が全額減額されるという投資家にとっては恐ろしい事態になったのですが、過去にもあったこととはいえここまで大きい金額での全額減額ということになると、他のCoCo債への影響も出てきますし、これまで金融機関は資本増強、投資家はハイイールドと双方にメリットがあるかのように扱われてきた債券に対して、多くの投資家は敬遠せざるを得ない状況となってきます。

そうなると悪循環で金融機関は自己資本不足の恐れ、投資家心理は冷え込みと、今回のクレディ・スイスの問題だけでとても終わるとは思えません。欧州に留まらず、他の地域でも同様の問題は起きうると考えると、ドルも買えず、ユーロも買えず、結局のところは金や現金に資金が移りやすい流れがしばらく続く可能性があります。

今週はスイス中銀と英中銀の政策金利発表がありますが、利上げ自体は想定内であったとしても、今回は金融危機懸念に対しての声明文や会合後の会見内容には注目が集まることは間違いないでしょう。ユーロドルについてはドル売りとユーロ売りに挟まれて基本横ばい、ユーロ円は上値が重く下げやすいという先週の流れには大きな変化は無いと見られます。

テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。

ユーロドルは横ばい、ユーロ円は下

レジスタンスは年初来高値と3月安値との半値戻し1.0777レベル、サポートは2月安値と3月安値とがほぼ同水準で1.05台前半となり、引き続きこれら両水準が参考になります。今週はこうしたテクニカルな水準を参考に1.0520レベルをサポートに1.0780レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

今週のコラム

米銀中位行の問題が世界の大銀行であるクレディ・スイスにまで波及し、ついにスイス3大銀行と言われていたスイスの大銀行はUBS1行になってしまいます。今回のクレディ・スイスの経営危機に伴って同行の株価がどのような状況だったのかを確認しておきましょう。

ユーロドルは横ばい、ユーロ円は下 2枚目の画像

コロナショック前の高値13.058スイスフランが入るように週足チャートを表示しましたが、コロナショック後の回復局面でも高値は超えられず、その後は着実に値を下げるいっぽうでした。直近では1.550と8分の1以下にまで株価が下がり、いつ破綻してもおかしくないのではないかという状況が続いていたことが株価からも見て取れます。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

3月20日(月)
16:00 ドイツ2月PPI ☆
19:00 ユーロ圏1月貿易収支
23:00 ラガルドECB総裁 ☆、ポルトガル中銀総裁講演

3月21日(火)
19:00 ユーロ圏3月ZEW景況感 ☆
19:00 ユーロ圏1月建設支出
21:30 ラガルドECB総裁 ☆、フランス中銀総裁講演 ☆

3月22日(水)
16:00 英国2月CPI ☆
17:45 ラガルドECB総裁講演 ☆
18:30 レーンECB理事講演 ☆
20:30 フィンランド中銀総裁講演
21:00 ベルギー中銀総裁講演
22:45 パネッタECB理事講演 ☆
25:45 ドイツ連銀総裁講演 ☆
27:00 FOMC結果発表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆

3月23日(木)
17:30 スイス中銀政策金利発表 ☆
17:40 ギリシャ中銀総裁講演
19:00 オーストリア中銀総裁講演
21:00 英中銀MPC結果発表 ☆
24:00 ユーロ圏3月消費者信頼感速報値 ☆
**:** EUサミット ☆

3月24日(金)
09:01 英国3月GFK消費者信頼感 ☆
16:00 英国2月小売売上高
17:15 フランス3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 ドイツ3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 英国3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆

3月26日(日)
**:** 欧州、英国夏時間に移行 ☆

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月13日(月)
 相次ぐ米銀の破綻からユーロドルでもドル売り・ユーロ買いの動きが先行しましたが、株式市場の下げからドル円だけでなくユーロ円での売りも強まったことで、欧州時間にユーロドルは1.0650レベルまで下げました。NY市場では1.0749レベルへと改めて上昇後に1.07台前半で引け、ユーロ円はNY朝方に141.37レベルまで下げ、142円台後半に戻して引けました。

3月14日(火)
ユーロドルは東京市場ではユーロ安・ドル高とドル円同様にリスクオフ巻き返しの動きとなっていましたが、米国債とともにブンズ(ドイツ国債)の利回りも上昇したことからユーロ買いへと転じました。リスクオフの巻き返しでユーロ円の買い戻しが強まったことも効いていました。引けにかけてはユーロドルが1.07台、ユーロ円は144円台に戻して引けました。

3月15日(水)
ユーロドルは東京前場に1.0760レベルの高値をつけた後はやや利食い売りが入っての欧州市場入りとなりましたが、クレディ・スイス対して筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクが追加投資はしないと述べたことからNY昼前に1.0516レベルの安値をつけました。引けにかけてはスイス中銀の声明を受け、1.05台後半へと戻しました。ユーロ円はドル円とユーロドルの動きが重なったこともあり、144.96レベルから139.48レベルへと約5円50銭の急落を演じ、141円目前の水準まで戻して引けました。

3月16日(木)
ユーロドルはECB理事会までは底堅い動きとなっていましたが、ECB理事会は予想通り0.5%の利上げ。今回のECBは高止まりするインフレを抑える方向で動いたものの、今後の金融政策については現時点ではコメント不可能とし、金融市場の問題についても必要に応じて流動性を供給する準備はあるとしました。ECB理事会よりも米地銀問題の方がクローズアップされたため、ユーロ円の下げとその後の買い戻しに引っ張られる展開でした。ユーロ円は139.12レベルまで下げた後142.00レベルをつけ141円台後半で引けました。

3月17日(金)
ユーロドルでもリスクオフのドル売り(ユーロ買い)が続きましたが、クレディ・スイスの経営危機問題による株安からユーロ円の下げにつながり、欧州市場では一時的に下げていました。NY市場では再びドル売り転じ1.0685レベルに上昇後若干押して引けました。

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