ドル円 今週は短期高値を見ての調整入りか(週報2月第4週)

先週のドル円はテーマとして2つ。植田日銀総裁候補の所信聴取でどのような発言が出てくるのかと、3月FOMCの金利見通しが一段上がるとの思惑による米金利の動きです。

ドル円 今週は短期高値を見ての調整入りか(週報2月第4週)

今週は短期高値を見ての調整入りか

〇先週のドル円、植田日銀総裁候補所信聴取と3月の米政策金利引き上げ幅に注目集まる
〇植田氏就任後に着手するであろう緩和の縮小は、思ったよりも早い段階で示されるのではないか
〇週後半、米10年債利回り一時3.978%まで上昇、ドル円136.52レベルへ週間高値更新し高値圏での引け
〇今週は米金利が4%大台前で足踏み、為替市場は高値圏でのもみあいから下げへの調整の週になるか
〇134.80レベルをサポートに、136.80レベルをレジスタンスとする流れとみる

今週の週間見通し

先週のドル円は、テーマとしては大きく2つ。ひとつは植田日銀総裁候補の所信聴取でどのような発言が出てくるのか、もうひとつは最近強めの経済指標が続く中で、3月FOMCの金利見通しが一段上がるとの思惑による米金利の動きです。

まず、植田日銀総裁候補の所信聴取は本日の参議院で終わりますが、衆議院での発言同様に現在の緩和を継続するというスタンスは崩さず、そのまま次期日銀総裁となることは確実です。ただ、緩和を継続としながらも正常化に向けてYCC(イールドカーブコントロール)の調整にも言及している点には注意が必要です。

国会での所信聴取は日銀総裁就任に向けての最終面接のようなものですから、模範解答に若干の自身の意見を取り入れる程度の発言に抑えるのは当然といえ、緩和継続の部分よりもYCCで誘導する年限を10年から5年に変えるなど、現時点ではそのオプションは明言しないものの就任後に着手するであろう緩和の縮小は、思ったよりも早い段階で示されるのではないかと見られます。

もし緩和継続を変えないのであれば、この点について具体例を挙げることは無かったと思いますし、もともとハト派であったとしても現在の執行部よりも中立に近い意見を持っているであろうことは現在の緩和政策の副作用についての考え方からしても明らかです。短期的には緩和という文言に目が行くかもしれませんが、就任後は中立寄りに舵を切ってくるタイミングは4〜6月期に起きるのではないかと見ています。

そして、米国の金利上昇思惑は長期債利回りにも波及していて、先週は木曜、金曜と3.978%まで上昇し4%の大台を視野に入れ始めた様子が伺えます。為替市場は日米10年債利回り差との相関が高いため、短期的にはドル高・円安に動きやすいのですが、さすがに4%となると株式市場には悪材料となりますし、このまま140円に逆戻りということも無いと見ています。

参考までに日米10年債利回り差(ライン、左軸)とドル円(ローソク足、右軸)の動きを比較しておきましょう。週足チャートです。

今週は短期高値を見ての調整入りか

円債10年物が直近では0.5%の上限で高止まりする中で、米金利が上昇していることから金利差は拡大し、ドル円もドル高となってきていることがよくわかります。

テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。

2月安値からの短期的な上昇チャンネル(青)の中での動きが続いています。また昨年高値と年初来安値との38.2%戻しとなる136.65を視野に入れる動きとなり、同水準が上昇チャンネルの現在の上限とも一致するため、短期的にはいったん調整の下げが入りやすい流れになってきたと考えられます。

米金利が4%の大台前での足踏み、為替市場は高値圏でのもみあいから下げへの調整、そんな週になるのではないかと考えられますので、今週は134.80レベルをサポートに、136.80レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

2月27日(月)
13:10 植田総裁候補所信(参議院)
16:00 トルコ1月貿易収支
19:00 ユーロ圏2月消費者信頼感 ☆
22:30 米国1月耐久財受注
24:00 米国1月住宅販売保留件数
24:45 スペイン中銀総裁講演
26:00 レーンECB理事講演 ☆

2月28日(火)
09:00 豪州2月企業信頼感
09:30 豪州1月小売売上高
16:00 トルコ10〜12月期GDP
16:45 フランス2月CPI速報値 ☆
16:45 フランス1月PPI
16:45 フランス10〜12月期GDP改定値
18:30 南ア10〜12月期失業率
21:00 南ア1月貿易収支
22:30 米国1月卸売在庫
23:00 米国12月住宅価格、ケースシラー住宅価格 ☆
23:45 米国2月シカゴ購買部協会景況指数 ☆
24:00 米国2月消費者信頼感 ☆
28:30 シカゴ連銀総裁講演 ☆
30:45 NZ1月住宅建築許可

3月1日(水)
09:30 豪州10〜12月期GDP
09:30 豪州1月CPI ☆
10:30 中国2月製造業PMI
10:45 中国2月MarkIt製造業PMI ☆
16:00 トルコ2月製造業PMI
17:30 フランス中銀総裁講演 ☆
17:50 フランス2月製造業PMI
17:55 ドイツ2月製造業PMI
17:55 ドイツ2月失業率
18:00 ユーロ圏2月製造業PMI
18:30 英国2月製造業PMI
19:00 英中銀総裁講演 ☆
22:00 ドイツ2月CPI速報値 ☆
23:45 米国2月製造業PMI
24:00 米国2月ISM製造業景況指数 ☆
24:00 米国1月建設支出
24:00 イタリア中銀総裁講演
24:30 週間原油在庫統計

3月2日(木)
09:30 豪州1月住宅建築許可
19:00 ユーロ圏2月CPI速報値 ☆
21:30 ECB理事会議事要旨公表 ☆
22:30 米国10〜12月期非農業部門労働生産性改定値
22:30 米国新規失業保険申請数

3月3日(金)
08:30 本邦2月東京区部CPI ☆
08:30 本邦1月失業率・有効求人倍率
10:45 中国2月MarkItサービス業PMI ☆
16:00 ドイツ1月貿易収支
16:00 トルコ2月CPI
16:45 フランス1月鉱工業生産
17:50 フランス2月サービス業PMI
17:55 ドイツ2月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏2月サービス業PMI
18:30 英国2月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏1月PPI ☆
23:45 米国2月サービス業PMI
24:00 米国2月ISM非製造業景況指数 ☆
26:00 (アトランタ連銀総裁講演)
**:** 米独首脳会談

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

2月20日(月)
 週明けの為替市場は米国が祝日で3連休ということもあり、目立った動きは見られませんでした。大きな経済指標の発表や要人発言なども無く、終日のレンジも62銭と最近のドル円にしては静かな1日でした。

2月21日(火)
 米金利上昇が各金融市場で主要テーマである状況は変わらず、一日を通して米金利が上昇、休み明けのNY市場では強い経済指標も手伝って米金利が3.96%へと11月10日以来の水準へと上昇しました。ドル円もNY前場に135.23レベルの高値をつけましたが、135円台では売買が交錯し引けにかけては大台割れの動きとなりました。

2月22/23日(水/木)
 ドル円は火曜にドル高に動いて以降、水曜そして東京が休場となった木曜と134円台後半を中心として方向感がはっきりしない展開が続きました。木曜のNY市場では米国10年債利回りが一時3.978%まで上昇し、ドル円は135.36レベルと週間高値を更新しましたが、引けにかけては米金利が急速に低下する動きとともにドル円も134円台半ばへと下押しして引けました。

2月24日(金)
 週末の東京前場は植田新総裁候補の所信聴取を受けて仕掛け的な動きが見られ、短時間に134.05〜91のレンジで振れが見られました。その後はしばらくレンジ内でのもみあいとなっていましたが、海外市場に移り日銀の緩和継続が意識されたことに米金利上昇の動きが重なりドル買いの動きが強まりました。NY市場に入り発表された経済指標を受け米金利は一段と上昇し3.978%と前日の水準に並び、ドル円も136.52レベルへと上昇し高値圏での引けとなりました。

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