ドル円 上値余地は少なく反落の可能性に注意(週報2月第3週)

先週のドル円は、日銀総裁人事に対する思惑も一巡し、就任後も緩和政策が継続されるという見方に落ち着いたことによる円売りでスタートしました。

ドル円 上値余地は少なく反落の可能性に注意(週報2月第3週)

上値余地は少なく反落の可能性に注意

〇先週のドル円、緩和政策継続の見方で円売りでスタート、その後米CPI強く米金利上昇でドル高に
〇週後半は米経済指標軒並み強く金利一段高で一時135円台、前週金曜安値からは5円以上の円安に
〇現在の円安は米金利上昇の影響が最も大きい、円要因での円売りは過大評価しない方が良い
〇現在のインフレ懸念とドル高は3/22のFOMC利上げまでは続かないとみるが目先はドルの底堅い展開続く
〇金曜の135円台からの反落を見ると135円台前半にはまだドル売りオーダー残る
〇今週は132.20レベルをサポートに、135.20レベルをレジスタンスとする流れとみる

今週の週間見通し

先週のドル円は、日銀総裁人事に対する思惑も一巡し、就任後も緩和政策が継続されるという見方に落ち着いたことによる円売りでスタート、その後米国CPIが予想よりも強くインフレの減速スピードが鈍っていることから米金利が上昇、為替市場はドル高という動きになりました。週後半は米国PPIを含め経済指標が軒並み予想よりも強かったことから金利一段高、ドル円は一時135円台に乗せたことで、前週金曜安値から考えると5円以上の円安を見た一週間でした。

日銀人事も実際に就任してからでないとわからないとは言うものの、おそらく現在の落ち着きどころよりも緩和姿勢は強く無いと思われ、年内思ったよりも早い段階でイールドカーブコントロールの撤廃には動くと見られます。現在の円安は米金利上昇の影響が最も大きいとは言うものの、円要因での円売りについてはあまり過大評価しない方が良いと思います。

また米国の政策金利もピーク金利が今までよりも0.25%ほど上にあがってきてはいるものの2023年末には緩和に転じるという見方もコンセンサスとなっていて、日本の緩和縮小の動きとともに長期的な視点では日米金利差縮小が改めて気にされるのがいつなのかというところです。ただ、短期的には10年債利回りも昨年11月以来の水準へと上昇してきていることから、予想よりも高い米国インフレ指標と強い経済指標が来月以降どうなるかだと思われます。

そこで1年前を振り返ると、2月末から3月初めにかけてはロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにエネルギーを中心として多くの物の価格が上昇した時期と重なります。つまり、3月に発表される2月、3月の数字は改めてインフレが減速する数字となってくる可能性も高く、現在のインフレ懸念とドル高は3月22日のFOMCの利上げまでは続かないようにも思えます。

ただ目先ということになると、しばらくはドルが底固い展開が続きそうではあります。テクニカルには日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

先週一週間で思った以上に円安が進んだことでテクニカルには昨年高値と年初来安値との38.2%戻しとなる136.65を視野に入れる向きも増えてきそうですが、金曜の135円台からの反落を見ると、135円台前半にはまだドル売りオーダーも残っていると感じさせます。いっぽうで、2月安値からの短期的な上昇チャンネル(青)のサポートラインが131円台後半を上昇中であることから、132円水準は買いが出やすくなってきます。

先週の上げ方が個人的にはやや行き過ぎ感を感じますので、下方向に多少余裕を見て、今週は132.20レベルをサポートに、135.20レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

2月20日(月)
**:** 米国市場休場
19:00 ユーロ圏12月建設支出
24:00 ユーロ圏12月消費者信頼感速報値 ☆
30:45 NZ10〜12月期PPI

2月21日(火)
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表 ☆
17:15 フランス2月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 ドイツ2月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏2月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 英国2月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 南ア10〜12月期失業率
19:00 ドイツ2月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏2月ZEW景況感
23:45 米国2月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
24:00 米国1月中古住宅販売
30:45 NZ1月貿易収支

2月22日(水)
10:00 NZ中銀政策金利発表 ☆
16:00 ドイツ1月CPI
16:45 フランス2月企業景況感
18:00 ドイツ2月ifo企業景況感
28:00 FOMC議事録公表 ☆

2月23日(木)
**:** 東京市場休場
18:30 南ア1月PPI
19:00 ユーロ圏1月CPI
20:00 トルコ中銀政策金利発表 ☆
22:30 米国10〜12月期GDP改定値 ☆
22:30 米国新規失業保険申請数
24:50 (アトランタ連銀総裁講演)
25:00 週間原油在庫統計
29:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
**:** G20(〜25日)

2月24日(金)
08:30 本邦1月CPI ☆
09:01 英国2月GFK消費者信頼感
16:00 ドイツ10〜12月期GDP改定値 ☆
16:00 ドイツ3月GFK消費者信頼感
16:45 フランス2月消費者信頼感
22:30 米国1月個人所得・個人消費支出 ☆
24:00 米国1月新築住宅販売
24:00 米国2月ミシガン大消費者信頼感
24:15 ジェファーソンFRB理事 ☆、(クリーブランド連銀総裁講演)
27:30 ウォラーFRB理事 ☆、(ボストン連銀総裁講演)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

2月13日(月)
週明け東京市場では金曜の植田新総裁に対する評価も一巡し、就任当初は現在の緩和政策を継続していく可能性が高いという見方が定着したことによる円売りが続きました。日経平均株価が朝方の安値圏から大きく反発したことも円安に作用し、NY昼前には132.91レベルの高値をつけましたが、前週高値をわずかに更新したのみで反落、引けにかけては132円台前半へと押して引けました。

2月14日(火)
米国CPI発表を前にして前日NY市場での流れを継続、ドルの上値が重たい展開が続きましたが、ポジション調整の範囲を超えるものではありませんでした。米国CPIは算出方法が変わることで前回までの数字とは直接比較がしにくいものの、わずかに強い数字となるというコンセンサス。結果はCPIが5.6%と前回よりは低かったものの予想よりは強く、ここにきてインフレ減速スピードが鈍っているという印象を与えました。発表直後は米金利が乱高下したものの、複数のFRB関係者の発言も重なってその後は金利上昇、為替市場も直後は乱高下し一時131.52レベルの安値をつけたものの、133.31レベルまで上伸し若干押しての引けとなりました。

2月15日(水)
前日の米国CPI以降のFRB関係者のタカ派発言、FF先物のピーク金利上昇といった動きからドル円は一段高となりました。NY市場では経済指標が軒並み予想より強い数字となったことから米金利が一段と上昇し、ドル円は134.36レベルの高値をつけ、そのまま高値圏での引けとなりました。

2月16日(木)
前日のドル高の流れを受け133円台後半の高値圏でのもみあいがNY朝方まで続きました。強い米国PPIを受けて米金利が上昇するとドル買いが強まり一時134.46レベルの高値をつけましたが、134円台半ばから上には利食い売りも見られ引けにかけて134円を割れる動きとなりました。

2月17日(金)
ドル円は米金利上昇の動きとともにドル買いが先行し仲値過ぎに前日高値を上回ると仕掛けのドル買いも加わって一段高となりました。欧州市場前場には10年債利回りが3.927%へと上昇し、昨年11月10日以来の水準となり、その後低下に転じましたが、ドル円は一歩遅れて135.12レベルの高値をつけ、その後NYの引けにかけては米国3連休を控えてのポジション調整も入り、1円近い下げを見ての引けとなりました。

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