ドル円 日米金融政策に一喜一憂するもドルは基本底堅い(週報2月第3週)

先週のドル/円相場はドルが一段高。一時昨年12月20日以来の135円台を示現する局面も観測されていた。

ドル円 日米金融政策に一喜一憂するもドルは基本底堅い(週報2月第3週)

日米金融政策に一喜一憂するもドルは基本底堅い

〇先週のドル円、ドル一段高で週末に年初来高値134.78を突破し135円台へ
〇1週間で約4円、前週末10日安値129.80を起点と考えれば5円を超える上昇
〇14日発表の消費者物価指数が前年同月比プラス6.4%で市場予想上回りドル高の支援要因に
〇植田氏が日銀新総裁に就任でも黒田路線は継続で「期待される政策転換はまだ先」(WSJ)か
〇今週は2月製造業PMI速報値や10-12月期GDP改定値などの米経済指標に注目
〇FOMC議事要旨公表、植田日銀総裁候補の所信聴取と質疑も別途注視
〇今週のドル/円予想レンジは、132.00-136.50

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが一段高。一時昨年12月20日以来の135円台を示現する局面も観測されていた。

前週末は、「中国の偵察気球」と思しき物体がまたもや観測され、カナダ上空で撃墜されている。そうしたなか岸田首相が11日に内視鏡手術をうけたのち自宅に帰宅し静養したが、週明け13日から通常執務を行う旨を明らかにしていた。
そうした状況下、ドル/円は週間安値に近い131.40円レベルで寄り付いたのち、ドル高が進行。細かな上下動はあったものの、ザックリ言って「寄り付き安・大引け高」の様相をたどり、週末には年初来高値134.78円を突破し135円台へ。ただ1週間で約4円、前週末10日安値129.80円を起点と考えれば5円を超える上昇をたどったことで最終盤は息切れ。利益確定売りなどに押され、週末NYは134.15円前後で取引を終え、越週している。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「日米金融政策」と「偵察気球問題」について。
前者のうち米国は、14日発表された注目の消費者物価指数が前年同月比プラス6.4%となり、7ヵ月連続の鈍化となったものの市場予想を上回る結果となり、ドル高の支援要因になった。また、その後発表された米生産者物価指数も上振れしドル続伸を後押し。さらに、良好な指標を受け、リッチモンド連銀総裁「従来の想定より高い水準に政策金利を引き上げる必要性が生じかねない」、クリーブランド連銀総裁「政策金利を5%以上にする必要がある」、「前回会合は0.5%の利上げでも説得力があった」といった強気コメントが週間を通して相次いでいた。一方、日本サイドは、有力欧米紙WSJが「一夜にして金融政策が激変することを期待すべきではない」と過度の政策変更観測にクギを刺すなか、岸田首相も国会で明言を避けつつ「アベノミクスを継承するか否かは日銀新体制がしっかりと判断」と、やや弱めのコメント。一部で失望を誘っていた。

対して後者は、いわゆる「偵察気球」問題は泥沼化の様相に。当初は「風に流され米国に到達した」などと下手に出ていた中国だったが、その後の米国による撃墜などを受け態度が大きく変化すると「米国の気球が先に中国領空に不法侵入した」と繰り返したうえで、「米側は徹底調査し、中国側に説明すべきだ」と要求するなど徹底抗戦ムードへと方針転換させている。それに対して米国サイドは、バイデン米大統領が「新たな冷戦を望んでいない」としたうえで、「中国の習国家主席と協議することを期待している」と述べていた。なお、「偵察気球」問題はさらに広がりを見せ、米中以外の地域でも問題視されはじめた。たとえばウクライナは、キーウ上空でロシア製とみられる6個の気球を目撃し、大部分が撃墜されたと発表。そのほかルーマニアやモルドバでも不審な飛行物体が観測されていたもよう。

<< 今週の見通し >>

先週は一服していたドル高が再燃。良好な米経済指標の後押しなどもあり、ドル/円は年初来高値を更新している。テクニカルにも、ドルの上値を阻んできた一目均衡表の先行帯の雲の下限をしっかり上抜けただけでなく、雲の上限が今月末にかけて135円前後まで切り下がってくることで、場合によっては今後上限も超えていく可能性が取り沙汰されていた。いわゆる「ダマシ」の動きにも一応要注意だが、素直に考えればドルの上値展望がさらに広がったと言えそうだ。
依然として日米金融政策が注目を集めるなか、日本については植田氏が日銀新総裁に就任しても取り敢えずは黒田路線の継続が予想され、「期待される政策転換はまだ先」(米紙WSJ)か。それに対して米国は、年内中の利下げ観測が後退するばかりか、利上げの長期化観測すら聞かれている。今週も伝えられる米経済指標や要人発言などに基本は一喜一憂しつつも、リスクとすればドル高方向にバイアスか。調整の動きなどで仮にドルが一時的に弱含んでも、押し目買いの動きから底堅く推移するとの見方も聞かれていた。

テクニカルに見た場合、ドル/円は移動平均の21日線を上回ったことに続き、一目均衡表の先行帯の雲の下限もしっかり超えており、基本的なリスクは上向き。ちなみに、昨年高値151.94円を起点とした大きな下げ幅の23.6%戻しは133円台ですでに上抜けており、フィボナッチで見た次のターゲットは38.2%戻しにあたる136.65円。ポジションは依然として偏っており、短期的には調整の動きにも要注意だが、先週高値135.12円を超えればさらなるドル高進行も否定できない。

今週は、2月の製造業PMI速報値や10-12月期のGDP改定値などの米経済指標が発表されるほか、2月初に実施されたFOMCの議事要旨も公表される予定だ。前者については良好な指標内容が今週も続くのか、後者についてはどの程度タカ派トーンが示されるのかを注視している向きも多い。また、植田日銀総裁候補の所信聴取と質疑も別途注視されている。

そんな今週のドル/円予想レンジは、132.00-136.50円。ドル高・円安については、まず先週高値135.12円の攻防に注目。しっかり抜ければ移動平均の90日線や200日線も近いフィボナッチポイントにあたる136.65円などを目指す展開か。
対してドル安・円高方向は、133円半ばに目先のサポートあり。ただ割り込めば先週上回ってきた一目均衡表の先行帯の雲の下限が視界内、再び意識されそうだ。

日米金融政策に一喜一憂するもドルは基本底堅い

ドル円日足

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