トルコリラ円見通し 当面はドル円に合わせた動き、先行きは震災の影響を注視(23/2/20)

トルコリラ円の2月17日は概ね7.16円から7.11円の取引レンジ、18日早朝の終値は7.12円で前日終値の7.10円からは0.02円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 当面はドル円に合わせた動き、先行きは震災の影響を注視(23/2/20)

当面はドル円に合わせた動き、先行きは震災の影響を注視

〇トルコリラ円、2/6発生の大地震後もドル円と歩調を合わせた動き続く
〇ドル円の上昇に合わせ14日夜に7.06、16日に7.13へ上昇、17日夜には7.16まで高値伸ばす
〇対ドルでは、17日は18.89から18.81の取引レンジ、最安値更新を伺う動き続く
〇欧州復興開発銀行、2023年トルコ年間GDPは地震の影響で最大1%押し下げられるとの見解示す
〇今後は財政赤字の拡大と共に貿易赤字の拡大と経常収支の悪化が懸念される
〇23日にトルコ中銀MPC、大地震による影響を踏まえ8%へ利下げする可能性も取り沙汰される
〇ドル円のリバウンドが一巡し下落に転じるなら、トルコリラ円も1/16安値割れ試しの流れへ
〇7.09以上での推移中は一段高余地ありとし、7.16超えからは7.20台を目指す上昇を想定
〇7.09割れからは先週の上昇に対する修正安とみて7.05前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の2月17日は概ね7.16円から7.11円の取引レンジ、18日早朝の終値は7.12円で前日終値の7.10円からは0.02円の円安リラ高だった。
トルコリラ円はドル/トルコリラにおける緩やかなリラ安基調の中でドル円の騰落に合わせた動きを続けており、2月6日発生の大地震後もドル円と歩調を合わせた動きは続いている。
ドル円は2月14日夜の米CPI発表をきっかけとしたドル全面高に押し上げられて2月17日夜には135.10円を付けて1月16日安値127.21円以降の高値を更新、1月6日高値134.77円を超えて年初来高値も更新した。トルコリラ円もドル円の上昇に合わせて2月14日夜に7.06円へ上昇、16日には7.13円へ上昇、17日夜には7.16円まで高値を伸ばした。
2月17日深夜以降は連日のドル高が一服、米国市場が2月20日のプレジデンツデーにより3連休となるためにポジション調整的なドル安が優勢となったことでドル円が134円を試すところまで反落し、トルコリラ円も18日早朝には7.11円まで失速した。週間では2月10日終値6.98円から0.13円の円安リラ高だった。

【対ドルでは最安値更新を伺う動き続く】

ドル/トルコリラの2月17日は概ね18.89リラから18.81リラの取引レンジ、18日早朝の終値は18.82リラで前日終値の18.84リラからは0.02リラのドル安リラ高だった。週間では2月10日終値18.81リラから0.01リラのドル高リラ安。
2021年12月20日に付けた当時の史上最安値18.36リラを2022年9月後半に突破、その後は最安値更新が続くもののトルコ中銀によるリラ安防衛への介入や国内輸出企業の外貨保有規制による半ば強制的な外貨売りとリラ預金拡大等によりリラの下落速度は抑制されているが、高インフレの中で4会合連続の利下げが強行されたこともあり8月に18リラ台に到達、9月後半には18.50リラを超え、今年1月に18.80リラを超えてきた。
2月6日のトルコ南部大地震発生後のリラ安進行により2月15日には18.90リラへ取引時間中の史上最安値を更新、終値ベースでも2月15日の18.84リラが最安値となった。

【トルコ大地震の影響】

2月6日発生したトルコ南部の大地震による死者はトルコ側で4万人を超え、シリア側では5800人を超えたとされる。被害の大きかった10県には2月9日時点で3か月間の非常事態宣言が発令された。被災地域のトルコGDPに占める比率は凡そ10%。
トルコにおいては1939年12月27日に発生したエルジンジャン地震(M7.8)の死者3万3000人を超えた。また1999年8月17日に発生したイズミット地震(トルコ北西部、M7.6)では1万7000人死亡とされるが実際は死者行方不明者合わせて4万人を超えたとされ、イスタンブールから70キロの距離だったことと製油所や軍事施設等も集中し、トルコGDPの約35%を占めていたために被害総額は当時のレート100億ドル前後とされた。また同年11月12日にはM7.2の余震が発生している。

(1) 建物倒壊による被災者の大量発生、シリア反政府地区における被災者の難民化が今後も大きな問題となる。治安の悪化、民族対立も深刻。建築基準法違反による建物倒壊も多いとされ、エルドアン政権によるこれまでの建築業界への優遇的な政治への批判も強まっている。
(2) 5月14日に予定されている大統領選挙についてはまだ変更云々が決まっていないようだが、エルドアン大統領有利な情勢で復興への期待感が強まれば予定通りに実施されることも考えられるものの、再選に不利とみれば非常事態宣言による延期やそれに対する野党側及び国民の批判が高まり政治混乱を招くことも懸念される。

(3) 金融市場は落ち着いた動きで推移している。大地震発生後にトルコ国内の金融機関に対してはFX取引におけるスプレッドの拡大と手数料引き上げが要請されるリラ安抑制策がとられ、2月8日から15日まで取引閉鎖されたイスタンブール証券取引所においては自社株買いの優遇策等により株買いを奨励したことでイスタンブール株価指数は地震発生後の暴落から一転して取引再開後は急伸した。
(4) 震災級の被害対応による巨額財政支出となることが予想される中でトルコ財務省は支払い前のゴールド買い付けを停止して資金確保を優先した。また政府による被災者支援寄付キャンペーンで1150億リラ(約60億ドル)が集まったとされるが、そのうちトルコ中銀が300億リラ(約16億ドル)を寄付したとされる。

(5) 欧州復興開発銀行(EBRD)は2月16日に2023年のトルコの年間GDPは地震の影響により最大1%押し下げられるとの見解を示した。実際の被害と復興需要の相殺効果も踏まえた数字であり、被害地域は農業と軽工業中心だったとした。米金融大手のJPモルガンは大地震の被害額を250億ドル(トルコGDPの2.5%)と想定したが、トルコの企業・経営者連合によれば経済的な損失は840億ドル超とされ、ブルームバーグ社の試算では被害対策支出はGDPの5.5%相当、財政赤字がGDPの5.4%を超える可能性があるとされる。
(6) 被害の大きかった10県の輸出額は2022年のトルコ全体の8.5%、約216億ドルとされ、地震の影響による輸出の毀損は約70億ドル=トルコ全体の3%と推計されている。今後は財政赤字の拡大と共に貿易赤字の拡大と経常収支の悪化が懸念される。

(7) 2月23日にトルコ中銀のMPC(金融政策委員会)がある。トルコ中銀はエルドアン政権の意向を踏まえて昨年8月から11月まで4会合連続で利下げを決定、政策金利の週間レポレートを14%から9%へ引き下げたが、11月会合では当面の利下げサイクルを終了すると宣言し、12月と今年1月は政策金利を据え置いた。今のところ、市場の事前予想は9%での現状維持だが、2月6日に発生した大地震による影響を踏まえて8%へ利下げする可能性も取り沙汰されている。

【当面はドル円のリバウンドと歩調合わせる】

ドル円は2021年1月底を起点として2022年10月21日高値まで大上昇してきたが、歴史的な大上昇も一巡して下落期に転じ、今年1月16日には127.21円まで下げた。大上昇の背景は日銀が異次元金融緩和政策を継続する中で米FRBがハイペースでの利上げを繰り返したことによる日米金利差の拡大だった。2022年9月と10月に日銀の大規模市場介入を行って円安に歯止めをかけ、12月には長期金利変動許容上限を引き上げるなど異次元金融緩和政策の修正に入る一方で、米FRBは利上げペースを減速させて利上げサイクルの終点が近いことを印象付けたことがドル円の今年1月16日への下落背景であった。

1月18日に日銀が市場の期待に反して追加の政策修正を見送り金融緩和政策継続を強調したこと、日銀人事を巡る思惑や、米国のインフレが期待程に落ちずに利上げ期間の長期化への懸念が高まったことが1月16日以降のドル円上昇がリバウンドに入る背景となってきた。この流れはまだ続く可能性があるが、2月24日の日銀新総裁らの国会所信表明や2月24日夜の重要インフレ指標である米PCEデフレーターの内容次第ではリバウンドの継続でドル円の上昇が加速するか、リバウンド一巡によるドル円の下落再開へのきっかけとなる可能性があるので市場の関心も高い。

トルコリラ円は中長期的なドル高リラ安により2021年12月高値から下落基調にあるが、昨年7月後半からはドル高リラ安の進行速度が鈍化していることでドル円の動きとほぼ同調している。当面はドル円のリバウンドが2月24日のイベントを超えて継続できるかどうかを見定める必要があるが、2月24日のイベントを通過してドル円が高値を更新する場合には昨年10月からの下落幅に対する半値戻し139.57円を目指す可能性が高まるため、トルコリラ円も1月6日高値7.18円を突破して7.20円から7.25円にかけての水準を試しに向かう可能性が出てくると思われる。
ただし、ドル円のリバウンドが一巡して下落に転じる場合、昨年10月天井を起点とした下落期の第二期に入るとみてトルコリラ円も1月16日安値割れを試しに向かう流れへ進みかねないと思われる。

当面はドル円に合わせた動き、先行きは震災の影響を注視

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.09円を下値支持線、7.16円を上値抵抗線とする。
(2)7.09円以上での推移中は一段高余地ありとし、7.16円超えからは7.20円台を目指す上昇を想定する。7.20円以上は反落警戒とするが、7.13円以上での推移なら高値試しを続けやすいとみる。ただし直前高値から0.05円を超える反落発生からは2月10日以降の上昇に対する大きな修正安とみてその後の続落を想定してゆく。
(3)7.09円割れからは先週の上昇に対する修正安とみて7.05円前後への下落を想定する。7.05円以下は反騰注意とするが、7.09円を下回っての推移なら安値試しを続けやすいとみるが、直前安値から0.05円を超える反騰が発生するところからは上昇再開の可能性ありとみて戻り高値切り上げを試して行く流れと考える。

【当面の主な予定】

2月20日
 16:00 2月 消費者信頼感指数 (1月 79.1)
 23:30 1月 中央政府債務 (12月 403.3億リラ) 
2月22日
 16:00 2月 製造業景況感 (1月 101.7)
 16:00 2月 設備稼働率 (1月 75.3)
2月23日
 20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 9.00%、予想 9.00%)
 20:30 週次 外貨準備高 2月17日時点 グロス(2月10日時点 756.3億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 2月17日時点 ネット(2月10日時点 244.4億ドル
2月24日
 17:00 1月 海外観光客数 前年同月比 (12月 26.79%)

注:ポイント要約は編集部

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