ドルは底堅いものの133円水準が高値か
〇先週のドル円、FOMC議長会見に反応し米金利低下とドル円下げ、翌早朝に128円台前半へドル売り進む
〇英中銀MPCとECB理事会はドル円への影響は限定的、金曜の雇用統計までは128円台半ばでのもみあい
〇NFPの強い数字に米金利上昇、ドル円は131円台に乗せて高値引け
〇次期日銀総裁が雨宮副総裁なら急速な緩和縮小に動かず日米金利差拡大の流れから短期的にはドル高か
〇今週は131.00レベルをサポートに、133.00レベルをレジスタンスとする流れとみる
〇雇用統計前の高値圏130円台半ばがサポート、131円台半ばから下は買い遅れた向きのドル買いも入るか
今週の週間見通し
先週のドル円は、週初は月末要因、週半ばは金融政策イベント、週末は米国雇用統計と週を通してイベントが多い一週間でしたが、ドル円に影響が出たのはその中でもFOMCと雇用統計でした。
FOMCでは予想通り0.25%の利上げと利上げ幅が縮小され、声明でも継続的な利上げという文言を用いて3月以降の利上げを視野に入れ、12月の金利見通しで示された2023年末の中央値5.125%は変わっていない印象を与えややタカ派的な印象を与えましたが、その後の議長会見では声明内容に加え、ディスインフレプロセスにも言及し、引き締め終了が近そうなハト派な印象を与えました。市場はこの会見に反応し、米金利低下とドル円の下げにつながり、翌東京早朝には128円台前半へとドル売りが進みました。
英中銀MPCとECB理事会はドル円への影響は限定的でしたが、金曜の雇用統計までは128円台半ばでのもみあいを続けました。そして雇用統計はADP全国雇用者数が弱かったことから弱い数字が出るかもしれないという見方があるいっぽうで、ADPと雇用統計(NFP)の方向性が違うことも多いため、結果を見るまではわからないと考える向きが大半だったかと思います。
雇用統計では失業率が3.4%と予想3.6%よりも良く、1969年5月以来53年ぶりの低い失業率を見ることとなりました。サプライズだったのはNFP(非農業部門雇用者数)で予想が+20万人前後に集中していたところに+51.7万人と一瞬合っているのかと目を疑う数字が出ました。この異常ともいえる強い数字に米金利は上昇、ドル円は131円台に乗せて高値引けというのが先週一週間の動きでした。
そして、週末には日経新聞が政府が雨宮日銀副総裁に総裁就任を打診したとの記事が出ました。雨宮副総裁がそのまま総裁に横滑りする人事であれば黒田総裁路線をそのまま継続すると見られ、以前から一時的には円安に動くという見方が一般的でしたが、週明けの円相場はその通りの動きとなり、ギャップアップして132円台で始まる動きとなりました。
こうして一週間の動きを見てわかることはFRBは5%超えまで利上げを継続する可能性はあるものの2023年中には緩和への転換に移る可能性をFRBとしても考えているらしいことが見えてきたことで、FF先物のピーク金利は5.0〜5.25%へと上がってきたものの、第4四半期中には利下げに動くというのが金利市場のコンセンサスという変化が見られました。
また次期日銀総裁が雨宮副総裁ということになれば急速な緩和の縮小には動かないであろうとの見方から、当面は日米金利差拡大の流れからドル高という見方になっています。しかし、日銀もいつまでも黒田路線を継続できるとは誰も考えていないでしょうから、どこかで緩和縮小の動きが出てくると見て、おそらく海外の投機筋を中心とした円金利市場での催促相場は今後もいつ出て来てもおかしくありません。早ければ就任後多少の間を置いて年後半にも動きが出てくるかもしれません。
そうしたことを考えると短期的には円安に動きやすい流れではあるものの、長期的には円高リスクは大きいと言えます。テクニカルには、いつもの日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
長期的には2021年安値と2022年高値の半値押し127.29(赤の水平線)で下げ止まったことから短期的な安値は見たと考えられるものの、1月18日高値131.56レベルを明確に抜けない限りはまだ下降トレンドは継続している、というのが先週時点での見方でした。
米国雇用統計後の上昇で昨年高値からのレジスタンスラインを明確に超え、週末の雨宮副総裁に次期総裁就任の打診という記事から131.56レベルも明確に上抜けてきました。こうなると、昨年高値と今年の安値との23.6%戻しとなる133.04、およそ133円が短期的なドル高値の目途という動きになりそうです。
いっぽうで下値については雇用統計前の高値圏でもあった130円台半ばがサポートとなってくるでしょうが、131円台半ばから下では買い遅れた向きのドル買いも入ってきそうです。今週は131.00レベルをサポートに、133.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
2月6日(月)
**:** NZ市場休場
16:00 ドイツ12月製造業新規受注
17:15 オーストリア中銀総裁講演 ☆
18:30 英国1月建設業PMI
19:00 ユーロ圏12月小売売上高
26:00 英中銀チーフエコノミスト講演 ☆
2月7日(火)
09:01 英国1月小売売上高
09:30 豪州12月貿易収支
12:30 豪中銀政策金利発表 ☆
16:00 ドイツ12月鉱工業生産
16:45 フランス12月貿易収支
22:30 米国12月貿易収支
26:00 パウエルFRB議長 ☆、シュナーベルECB理事講演
26:30 カナダ中銀総裁講演
**:** 一般教書演説
2月8日(水)
08:50 本邦12月貿易収支(国際収支)
23:15 NY連銀総裁講演 ☆
24:00 米国12月卸売売上高
24:30 週間原油在庫統計
2月9日(木)
09:01 英国1月住宅価格
18:45 英中銀総裁議会証言 ☆
22:30 米国新規失業保険申請数
2月10日(金)
09:30 豪中銀四半期金融政策報告 ☆
10:30 中国1月CPI・PPI ☆
16:00 英国10〜12月期GDP速報値 ☆
16:00 英国12月鉱工業生産、貿易収支
16:00 トルコ12月失業率、鉱工業生産
24:00 米国2月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
26:30 ウォラーFRB理事講演 ☆
30:00 フィラデルフィア連銀総裁講演 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
1月30日(月)
週明けのドル円は仲値に向けたドル買いが先行し130.29レベルまで上昇後はドル売りに反転、後場に入り民間提言組織である令和臨調が政府と日銀との共同声明見直しを提言したことをきっかけに円買いが強まり一時129.20レベルの安値をつけました。その後は下値も固くなり米金利上昇も手伝ってドル買いの動きとなり、さらにユーロドルの下げも重なり130.57レベルまで上昇後、若干押して引けました。
1月31日(火)
ドル円はNY市場までは前日高値圏でのもみあいを続けていましたが、連日の金融政策イベントを控えて積極的な取引が手控えられている様子でした。NY市場に入り発表された10~12月期の雇用コストが予想よりも弱かったことをきっかけに米金利低下ドル安の動きとなり、昼過ぎには下げる前の水準まで戻したものの、引けにかけては再び上値が重たい動きとなりました。
2月1日(水)
ドル円は朝方に若干売りが先行したものの下げきれず、その後東京市場ではじり高の動きとなりました。しかし、高値130.41レベルと前日高値は超えられず、米金利低下もきっかけにドル安方向へと反転、NY市場では予想よりも弱い経済指標も手伝ってFOMC前には129.18レベルまで水準を下げての発表待ち。FOMCは予想通り0.25%の利上げと利上げ幅を縮小、声明では継続的な利上げが適切という文言は残りました。議長会見でも継続利上げについての言及はあったものの、いっぽうでディスインフレプロセスにも言及し、引き締め終了が近そうな印象を与えました。これを受け米金利は大幅に低下し、為替市場ではドル売りが強まり、ドル円は128.53レベルまで売られた後に戻して引けました。
2月2日(木)
ドル円はFOMC後のドル安の流れを続け朝方に128.18レベルの安値をつけましたが日銀副総裁の緩和継続発言で下げる前の水準へと戻しました。その後欧州市場までは金融政策イベントを控えたユーロドルが下げる動きとともにドル買いとなり129.13レベルの日中高値をつけました。NY前場にはユーロ円の下げに引っ張られた円買いから128.08レベルの安値をつけたものの下げきれずに128円台半ばへ戻して引けました。
2月3日(金)
ドル円は雇用統計を前に小動きとなっていましたが、水曜に発表されたADP全国雇用者数が予想よりも悪かったことを懸念して上値が重く発表直前には128.33レベルの安値をつけていました。雇用統計は予想に反して非常に良い内容で失業率が3.4%、NFPは+51.7万人ととんでもなく強い数字となりました。この結果を受けて米金利は3.556%まで上昇、ドル円も131.20レベルまで上伸し高値引けとなりました。
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