米国ドル高容認で介入待ちのドル買いへ
〇先週のドル円、水曜に介入前高値145.90を上抜け、その後改めてドル買い強まる
〇木曜に強い米国CPI、週末前の一段高と週後半は連日のドル高となり148円台後半での引け
〇バイデン大統領、現状のドル高を懸念していない、輸入物価上昇を抑えたいと発言
〇日米同時に金融政策の転換が起きるまで現在のドル高は止まらず、どこまで円安が進むか
〇1990年高値160円台まで目立ったレジスタンスなし、まずは150円、次は160円大台という動きか
〇今週は146.80レベルをサポートに、150.00レベルをレジスタンスとする週とみる
今週の週間見通し
先週のドル円は、振り返ると週初安の週末高と週を通してドル高の動きとなりましたが、それでも週前半は145円台後半で比較的静かな値動きとなっていました。動きが出たのは水曜に介入前高値145.90を上抜けてからで、その後は改めてドル買いが強まり、翌日の強い米国CPI、週末前の一段高と週後半は連日のドル高となり、148円台後半での引けとなりました。
週末にはバイデン大統領が中間選挙で争点のひとつとなっている米国内のインフレを意識してだと思われますが、現状のドル高を懸念していない、と輸入物価上昇を少しでも抑えておきたいという発言を行いました。またドル高の相手国に対して、経済成長や健全な政策の欠如と米国の引き締めを正当化しました。このことから、今後もFRBの引き締めと金利差拡大によるドル高進行は中間選挙までは放置されることは確実です。
そうなってくると日本だけではありませんが、簡単にドル高を抑えることは出来なくなりますし、特に緩和継続を明確にしている日本の場合、短期的には円買い介入しか打つ手はありませんが、今後は介入が入るのを待って押し目を絶好のドル買いチャンスとする動きが鮮明になってくると見られます。1997〜1998年のアジア通貨危機の際も介入ではドル高を止められませんでしたから、今回も円買い介入はドル高進行速度を抑えるスムージング・オペレーションになるでしょう。
長期的には米金利の頭打ちと緩和への転換が2023年第4四半期以降に起きることが確実視されていますし、日本のCPIも着実に上昇してきていることから、早ければ2023年中にも利上げは無くともQE縮小が開始される可能性はあり、日米同時に金融政策の転換が起きるまで現在のドル高・円安は止まらず、それまでにどこまで円安が進むのかということになるでしょう。
先週末にドル円が147円台に乗せたことから長期的なチャートを見ましたが、今一度週報でも見ておきましょう。
1998年高値の147円台は値幅観測的にもいったん止まりやすい水準だったのですが、上抜けてきましたので、次のターゲットとなると1990年高値の160円台まで目立ったレジスタンスはありません。同水準まで一気に行くとは思えませんが、まずは150円の大台、その次は160円の大台という動きが今後出てくることとなりそうです。
短期テクニカルには日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
サポートラインは8月安値を起点に、上側のラインは7月高値を起点とした上昇ウェッジ(青のライン)の中での動きが想定でき、金曜高値は上側のラインと重なっていることから今週も週前半は一気にドル高に進むことは考えにくいものの、介入前高値を上抜けて以降のドル買いペースの速いことを考えると、調整は短く浅くその後は改めてドル買いの動きになるでしょう。
介入後の安値を起点とした上昇N波動(ピンク)を考えると次のターゲット127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションは149.82(ピンクのラーゲット)とほぼ150円の大台と重なりますので、今週は150円を意識する展開となっていきそうです。ただ介入が出る出ないにかかわらず、介入を真似したような投機的なドル売りも出てくる可能性もあり、振れは大きくなりそうです。
今週は146.80レベルをサポートに、150.00レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
10月17日(月)
17:00 デギンドスECB副総裁講演
21:30 米国10月NY連銀製造業景況指数 ☆
24:00 レーンECB理事講演 ☆
28:00 ドイツ連銀総裁講演
10月18日(火)
06:45 NZ7〜9月期CPI
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表 ☆
11:00 中国7〜9月期GDP ☆
11:00 中国9月鉱工業生産、小売売上高
18:00 ドイツ10月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏10月ZEW景況感
22:15 米国9月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国10月NAHB住宅指数 ☆
25:00 シュナーベルECB理事講演
27:00 (アトランタ連銀総裁講演)
10月19日(水)
06:30 (ミネアポリス連銀総裁講演)
15:00 英国9月CPI ☆
17:00 南ア9月CPI
18:00 ユーロ圏9月CPI
18:00 ユーロ圏8月建設支出
20:00 南ア8月小売売上高
21:30 米国9月住宅着工・建築許可 ☆
23:00 カンリフ英中銀副総裁議会証言
23:00 ポルトガル中銀総裁講演
23:30 週間原油在庫統計
27:00 ベージュブック ☆
**:** APEC財務相会合(〜21日)
10月20日(木)
07:30 セントルイス連銀総裁講演、(シカゴ連銀総裁講演)
08:50 本邦9月貿易収支(通関)
09:30 豪州9月雇用統計
15:00 ドイツ9月PPI ☆
15:45 フランス10月企業景況感
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:30 米国10月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
21:30 米国新規失業保険申請数
23:00 米国9月景気先行指数、中古住宅販売
26:45 クックFRB理事講演 ☆
27:45 ボウマンFRB理事講演 ☆
**:** EUサミット(〜21日)
10月21日(金)
06:45 NZ9月貿易収支
08:01 英国10月消費者信頼感
08:30 本邦9月CPI ☆
15:00 英国9月小売売上高
22:10 NY連銀総裁講演 ☆
23:00 ユーロ圏10月消費者信頼感速報値 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
10月10日(月)
東京、米国市場がともに休場となったこともあって終日動意薄な展開が続きました。ドル円は金曜雇用統計後の流れを続け、押しを挟みながらもドル買い、NY市場昼前には145.80レベルをつけたものの介入前高値はトライ出来ず145円台半ばに押して引けました。
10月11日(火)
東京市場では高値圏でのもみあいとなり介入前高値に近づくもトライしきれずという動きが続きました。NY後場には145.90レベルと介入前高値に並び、いつ新高値を更新してもおかしくない状態で引けました。
10月12日(水)
ドル円は東京前場からドル買いが先行し、介入前高値145.90レベルを上抜けると昼前には146.39レベルまで上昇。その後若干の押しを挟み海外市場では再びドル買いが進行し、米国PPIが予想よりも強かったこともあってNY昼過ぎには146.97レベルの高値をつけ、そのまま高値圏での引けとなりました。
10月13日(木)
ドル円は米国CPI発表を前に146.80前後の狭い値幅での取引が続いていました。CPIは前年比、前月比とも予想よりも強く金利上昇、株安、ドル高で反応し、ドル円は1998年高値を上抜け147.67レベルと1990年以来のドル高・円安の水準を見ました。直後には介入と見紛う急落を見ましたがすぐに戻し、引けにかけては147円台前半でのもみあいとなりました。
10月14日(金)
ドル円は前日の米国CPI発表後のドル高地合いを継続しドルがじり高の展開を辿りました。週末前で介入警戒感もあることから東京市場では積極的な取引は見られませんでしたが、欧州市場に入り前日高値を上抜け、NY市場では148円台に乗せるとドル買いが加速、148.86レベルの高値をつけ、引けにかけてはやや押して引けました。
ディスクレーマー
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