ドル円、32年ぶりドル高値圏、当局の介入は如何に(週報10月第3週)

先週のドル/円相場はドル一段高。週末にかけ、とくに上げ幅を拡大すると1998年高値147.64円を上抜け32年ぶり高値圏へと達している。

ドル円、32年ぶりドル高値圏、当局の介入は如何に(週報10月第3週)

ドル円、32年ぶりドル高値圏、当局の介入は如何に

〇先週のドル円、1998年高値147.64を超え148円台到達、週末NYでも週間最高値圏を維持
〇米財務長官ドル高容認発言、日本サイドは口先介入相次ぐが円売りの流れは止められず
〇1週間で3円超えるドル高進行、今週内に150円トライの可能性も、円買い介入第2弾の動きを注視
〇今週のドル/円予想レンジは146.00-151.00、150円をめぐる攻防に注目
〇ドル安・円高方向は先週末安値147.09が最初のサポート

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドル一段高。週末にかけ、とくに上げ幅を拡大すると1998年高値147.64円を上抜け32年ぶり高値圏へと達している。

前週末、9日未明に北朝鮮が懲りずに弾道ミサイルを再び発射。その一方、ロシア軍がザポロジエ原発に新たな砲撃を行い「電源供給が断たれた」と伝えられ一時物議を醸すも、そののちIAEAから「非常用のディーゼル発電機が起動した」との発表がなされていた。
そうした状況下、ドル/円は145.30-35円で寄り付いたのち、週間を通してほぼ一貫した右肩上がり。当局の介入警戒感などから9月に示現した年初来高値145.90円手前では一時上げ渋ったものの、超えると断続的にストップロスを巻き込みつつ147円台へ。さらに1998年高値も超えると148円台を示現。週末NYでもそのまま148円台、週間を通した最高値圏を維持したまま取引を終えている。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「円安進行と口先介入」と「ロシア情勢」について。
前者は、前週末の英紙FTインタビューに続き、米CNBCでも米財務長官が再びドル高容認発言。具体的には、米国の景気が先進国のなかでもっとも好調だと指摘したうえで、「ドル高進行は当然の結果」との認識を示している。その一方、日本サイドは鈴木財務相や松野官房長官、神田財務官から口先介入が連日のように相次ぐも実弾介入が実施された様子なし。さらに英紙FTは、岸田首相がインタビューで、「円安進行でも日銀の超金融緩和政策を支持する姿勢」を示唆したと報じたことなども、消極的な円安容認と捉えられていた。その後も、鈴木財務相から「G20で過度な変動に対応するため介入を実施したことを説明した」との発言が聞かれるなど、引き続き口先介入が相次いだものの、市場の反応は鈍く円売りの流れは止められず。

対して後者は、ウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶ「クリミア大橋」が爆発したことが物議を醸す。ロシアは「ウクライナ側のテロ」といった見方をとるなか、「報復」としてウクライナ全土へのミサイル攻撃を実施した。しかし、これにはウクライナ市街地を対象にした攻撃もあり、一般市民の死傷者が多数出たことで、米欧や英国の首脳、NATOや国連の事務総長らが一斉に非難の声をあげていた。一方、それとは別に国連総会でロシアによる「4州併合」非難決議が採択され、ロシアなどは反対に回ったものの、結果的には193ヵ国中143ヵ国が賛成し可決されている。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円はドルが一段高。週央12日に、それまでの年初来高値を更新しただけでなく98年高値も超えるなど、1週間で3円を超えるドル高の進行となった。テクニカルに見た場合、ドルの上値はまたもや青天井状態となり、早ければ週内にもドル高の心理抵抗である150円トライあるいは突破の可能性も出てきた。しかし、前回に介入を実施した9月22日安値を起点としても約3週間で8円を超えるドル高が進行している。そのあいだ明確な調整は観測されていないことで、そろそろしっかりとした下押しが入っても不思議はない。

日米金利差は今後さらに拡大する公算が大きいうえ、前述した米財務長官発言のように、米国が事実上のドル高容認をしていることで、市場のドル買い安心感は根強いものがある。つまり、一時的な調整は別にして基調そのものがドル安方向へと転換することは想像できない。ただし、日本サイドの要人発言を聞くと、円買い介入第2弾はかなり近いのかもしれず、一応注意しておきたいところ。また、それとは別に英国情勢やロシア情勢を中心とした欧州ファクターも市場のかく乱要因として警戒していて損はなさそうだ。

テクニカルに見た場合、ドル/円は32年ぶりの高値圏で148円台での推移。リスクがドル高方向に高いことは間違いなく、147.64円を超えたことですでに強い抵抗もしばらく存在しないことは非常に気掛かり。一応150円が心理的な抵抗になると目されるが、超えた場合のめどは再びはっきりせず、それこそ1990年高値160.20円まで明確な目標はなくなってしまう。そんな状況であることを理解していれば、政府・財務省がどこかで介入することも考えられるが・・・。

今週は、9月の住宅建設許可件数などの米経済指標や地区連銀経済報告の発表が予定されている。また、米通貨当局者による講演等も少なくないうえ、バンカメやゴールドマンサックスなどによる決算発表も実施される見通しだ。合わせて注意を払いたい。

そんな今週のドル/円予想レンジは、146.00-151.00円。ドル高・円安については心理抵抗の150円をめぐる攻防にまずは注目。超えれば再び青天井状態で、1990年高値が中期ターゲットとして意識されそうだ。
対してドル安・円高方向は、ここ数日ドルの下値が切り上がっていることから、先週末安値147.09円が最初のサポートか。下回っても、どこまで大きく下押しが入るのかは疑問だが、リズムが崩れることで思いのほか深い押しとなる可能性も。

ドル円、32年ぶりドル高値圏、当局の介入は如何に

ドル円日足

注:ポイント要約は編集部

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