ユーロ 長期ユーロ安トレンドは変わらず
〇先週のユーロ、ECB政策金利引き上げ観測で買いの動き、週初高値1.0198レベルに至る
〇その後は強い米CPI結果でドル全面高、週後半0.99台後半を中心としたもみ合いの展開に
〇ユーロ、買われたところでは売りという流れ、今後も続くか
〇EUが電力使用削減草案提出、景気後退懸念が広がる、排出権取引価格は大幅低下
〇今週は米、英、スイス、日本が中銀会合開催予定、欧州二国は米利上げ幅に足並み揃える可能性高い
〇今週は0.9850レベルをサポートに、1.0100レベルをレジスタンスとするレンジをみる
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、週初こそ前週後半のユーロ買い戻しの流れを継続し月曜に週間高値となる1.0198レベルをつけました。そして火曜に注目の米国CPIが発表され予想よりも強い数字に反応してドル全面高、ユーロドルもパリティ割れと急速に値を下げましたが、週後半は0.99台後半を中心としたもみあいを続け、方向感がはっきりしないままの引けとなりました。
今週は米国FOMC、英中銀MPC、スイス中銀会合と主要な中銀の金融政策決定会合が開かれますが、FOMCに関しては0.75%利上げをコンセンサスとして進んでいます。英中銀とスイス中銀は0.5%と0.75%で見方は分かれていますが、高いインフレを抑えるためには、ある程度思い切った利上げが必要ですし、米国も0.75%上げるとなれば、足並みを揃える可能性は高そうです。スイス中銀の会合は四半期ごとであることから、スイスも一気にプラス金利へと浮上、いよいよ主要国で緩和を継続する国は日本だけとなりますが、日銀会合も22日、ただ現状維持は変わらないでしょうから、対欧州通貨でも円は売られやすい流れになりそうです。
ただ欧州に目を向けると先週初にEUが罰則を伴う電力使用削減の草案を出し、エネルギー市場の環境が大きく変わらなければ、冬に向けて実現する可能性が高いことを考えると産業界の活動低下から景気後退がますます懸念されることとなります。実際に欧州での排出権取引を見ると工場の稼働が低下する見込みから排出権の買い手が減少し、排出権の取引価格は8月中旬から9月上旬にかけて大きく値を下げました。今後こうした産業界に対する懸念が各所で出てくると見られ、それを考えるとユーロを買うことには躊躇せざるを得ません。
そして金融政策だけでなく、経済指標やイタリアの総選挙など今週は週を通してイベントが続きますので、よほどサプライズが無ければユーロは買われたところでは売りが出てくるという流れは今後も続くものと見られます。
テクニカルには日足チャートをご覧ください。
長期平行下降チャンネル(青)は有効で、今後ユーロが買われる場合に戻り売りを考える向きの多くがこのレジスタンスラインを気にしています。今週はこのラインが1.01を割り込んでくることとなり、1.01レベルでの売りが出やすい地合いです。いっぽうで下値は9月安値0.9865レベルまで強いサポートは見られず、0.98台半ばをターゲットに依然としてユーロは下向きと言えます。
今週は0.9850レベルをサポートに、1.0100レベルをレジスタンスとするレンジを見ておくこととします。
今週のコラム
本文中で排出権取引の話を出しましたので排出権(エミッション)のチャートを見ておきたいと思います。
このチャートは排出権12月限のチャートです。世界最大の市場である欧州気候取引所におけるCO2の排出権1トンあたりの価格(ユーロ)で、8月には100ユーロに迫っていましたが、9月に入り65ユーロ台にまで下げていることがわかります。
欧州における工場の稼働と密接に関連しますので、冬に向けて時々チェックしておきたい銘柄と言えるでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
9月19日(月)
**:** 東京・LDN市場休場
18:00 デギンドスECB副総裁講演 ☆
18:00 ユーロ圏7月建設支出
21:00 スペイン中銀総裁講演
21:45 フランス中銀総裁講演
9月20日(火)
15:00 ドイツ8月PPI ☆
17:00 エストニア中銀総裁講演
17:00 ユーロ圏7月経常収支
9月21日(水)
16:00 デギンドスECB副総裁講演
27:00 FOMC結果発表 ☆
27:30 パウエルFRB議長講演 ☆
9月22日(木)
15:30 黒田日銀総裁会見 ☆
15:45 フランス9月企業景況感
16:30 スイス中銀政策金利発表 ☆
20:00 英中銀MPC結果発表 ☆
23:00 ユーロ圏9月消費者信頼感速報値 ☆
9月23日(金)
**:** 東京市場休場
08:01 英国9月消費者信頼感
16:15 フランス9月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ9月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏9月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ラトビア中銀総裁会見
17:30 英国9月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
9月25日(日)
**:** イタリア総選挙 ☆
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
9月12日(月)
ユーロドルはECBが政策金利を2%まで引き上げるとの観測記事に反応し東京市場から対ドル、対円でユーロ買いの動きとなりました。欧州市場に入ると1.0198レベルの高値をつけましたが、EUが電力使用削減に目標設定を義務付けるとの草案が出たことで一段の景気後退リスク懸念も広がり、1.0105レベルまで下押し後にやや戻しての引けとなりました。
9月13日(火)
ユーロドルは米国CPI発表まではユーロ買いが先行し1.0188レベルの高値をつけていました。CPI発表直後に1.0030レベルまで売られ、その後も引けにかけてドル買いがが引かずユーロドルは0.9960レベルまで水準を下げ安値引けとなりました。
9月14日(水)
ユーロドルも前日CPI後のドル買い・ユーロ売りから早朝に0.9955レベルの安値をつけました。ドル円でのドル売りが強かったことからユーロドルでもドル売り・ユーロ買いとなっていましたが、ユーロ円での円買いも強かったことからユーロドルの値幅は限定的なままで終わりました。
9月15日(木)
ユーロドルは東京時間はユーロ売り・ドル買いとなっていましたが、海外市場以降は買いが目立ちパリティを回復したものの動きは鈍く、終日のレンジも62pipsに留まりました。
9月16日(金)
ユーロドルは東京市場ではほとんど動かず、欧州市場序盤にポンド売りに引っ張られてユーロドルにも売りが広がり、一時0.9946レベルと週間安値を更新しました。NY市場では米金利低下の動きからユーロ買い・ドル売りの動きとなり1.0036レベルまで買い戻された後にやや押して引けました。
ディスクレーマー
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