ユーロ 上値トライ失敗で以前のもみあいに逆戻り
〇先週のユーロドル、弱い米CPI受け高値1.0369到達、ドル買戻しで揉み合いに戻して引ける
〇露からのガス供給減少きっかけとした景気後退懸念、ユーロドル上値抑えられやすい
〇今週はユーロ圏GDP・CPI改定値発表予定、影響少なく方向感は出にくいか
〇ユーロ安スイス高の流れ続く、スイス中銀は9月会合で政策金利(現在−0.25%)プラス予想
〇今週は1.0150レベルをサポートに1.0300レベルをレジスタンスとするレンジをみる
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、7月19日から続く1.01レベルをサポートに1.02台後半をレジスタンスとする狭い値幅でのもみあいを弱い米国CPIをきっかけとしたドル売りの動きから上抜けしたものの、複数の地区連銀総裁が市場参加者がハト派に傾かないように意図的にタカ派発言を繰り返したことによるドル買い戻しで結局はこれまでのもみあいの中に戻しての引けとなりました。
ドル円を見ているとわかるようにドルはそれなりに変動しているのですが、その要因は予想からずれた結果の経済指標で、米国雇用統計では金利上昇とドル買い、米国CPIでは金利低下とドル売りとなりました。いっぽうでユーロドルは欧州の景気後退懸念が強く、英国も英中銀MPCで長期的な後退局面を迎えるとの見通しにあったように、ロシアからのガス供給減少をきっかけとしたインフレと景気悪化が年後半には現実化するとの見込みがユーロドルの上値を抑えやすくしています。
今週は欧州関連の経済指標ではユーロ圏GDP改定値やCPI改定値といった発表はあるものの改定値で影響は少ないと見られ、新規材料でも出て来ないと方向感は出にくいでしょう。ただ、これまで同様に悪材料に反応しやすい地合いは変わっていませんし、米国CPI前後に複数の地区連銀総裁が政策金利の高止まりと緩和への転換はまだまだ先であることに言及したことからドルの動きとしてはドルの押し目買い(ユーロの戻り売り)が出やすい流れです。
またこの夏は日本も猛暑ですが、欧州では熱波と言われほどの記録的な暑さが影響して電気消費量増大による電気代高騰、ライン川の水位が過去30年で最も低下していることによる大型船舶の運航停止や積載する荷物を4分の1程度に減らさないと運行できない状況になっていて、余分な輸送量がコストの押し上げに直結し、発電用石炭輸送にも支障が生じ、ドイツ経済に影響が出始めているようです。
材料的にはユーロ売りに繋がる要素が多そうですが、テクニカルにはどうか日足チャートを見てみましょう。
先週の米国CPI後のユーロ高値(ドル安値)は年初来高値からの下降チャンネル(青)の上限、そして6月下旬の高値と年始来安値の61.8%戻しとテクニカルには重要なポイントで抑えられて反落しました。このことから短期的には戻り高値を見て、改めて以前のもみあい水準に戻してきたと見てよさそうです。
このもみあいも上限は6月下旬の高値と年始来安値の半値戻し(太い赤の水平線)と重なりますし、下限は年初来安値と8月上旬高値の半値押しと重なっているため、しばらくは下降チャンネル同様にそのまま使っていてよいでしょう。また、年初来安値とCPI後の高値の半値押しが1.0159(緑のターゲット)となっているため、同水準は最初のサポートとなりやすいと見ています。
今週はこれらのテクニカルな水準を参考に1.0150レベルをサポートに1.0300レベルをレジスタンスと以前のもみあいに戻るレンジを見ておくこととします。
今週のコラム
今週はユーロスイスの日足チャートを見ます。
ユーロスイスは3月にパリティを試したものの反発しましたが、6月に試した際には明確に下抜けの動きとなり、その後もユーロ安・スイス高の流れが続いています。現状はピンクの平行線で示した下降チャンネルの中を着実にユーロ安へと歩んでいると言えます。
材料的にはスイス中銀も9月の会合で政策金利(現在―0.25%)がプラスとなることが予想されることがスイスフラン高につながっていますが、テクニカルにドルスイスフランで変形トリプルトップを形成し、ネックラインを下抜けてきたこともスイスフラン高につながっています。
当面のスイスフランは各主要通貨に対して強含みの値動きを続けやすいと言えるでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
8月15日(月)
(特になし)
8月16日(火)
15:00 英国7月失業率
18:00 ドイツ8月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏8月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏6月貿易収支
8月17日(水)
15:00 英国7月CPI ☆
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP改定値 ☆
27:00 FOMC議事録公表 ☆
8月18日(木)
18:00 ユーロ圏7月CPI
18:00 ユーロ圏6月建設支出
8月19日(金)
08:01 英国8月消費者信頼感
15:00 ドイツ7月PPI
15:00 英国7月小売売上高
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月8日(月)
ユーロドルは一時的な上下は見られたものの、東京市場から米金利が低下する動きとともにNY前場まで一貫してユーロ買いの動きが続きました。東京朝方には1.0159レベルの安値も見ましたが1.0222レベルまで買われ、引けにかけては1.02を割り込む動きとなったものの積極的な取引は見られないままでした。
8月9日(火)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場に入りロシアが欧州向けガスの供給は継続するとの発言に欧州市場序盤は買いが先行しました。しかしドル円同様にドル買いの動きも出ていたことから、1.0248レベルで高値をつけると、引けにかけては買われる前の水準に押して引けました。
8月10日(水)
ユーロドルもドル円同様米国CPI発表まではドルじり安の動きからユーロドルはじり高、予想よりも弱いCPI直後にはドル売りから1.0369レベルの高値をつけ、引けにかけては1.03水準へと押して引けました。
8月11日(木)
ユーロドルは東京時間には1.0275レベルまで水準を切り下げていましたが、欧州勢参入とともに買いが強まりNY朝方には1.0364レベルと前日高値に迫りました。引けにかけては米金利上昇の動きとともに1.03近くに押して引けました。
8月12日(金)
ユーロドルは東京市場では若干の上下はあったものの横ばい、欧州市場に入りドル円のドル買いに引っ張られる形でユーロ売りの動きとなりました。NY市場ではドル円の動きが横ばいとなったのに対してユーロドルは続落し、NY昼前には1.0238レベルの安値をつけ、引けにかけては若干戻して引けました。
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