ドル円 今週は横ばいもドルは底堅い流れへ(週報8月3週)

最近は米金利の動きと円相場との相関が再び高くなってきたことを考えると短期的にはドルが底堅い動きを示しやすいと言えそうです。

ドル円 今週は横ばいもドルは底堅い流れへ(週報8月3週)

今週は横ばいもドルは底堅い流れへ

〇先週のドル円、米CPIが予想外に弱い数字となりドル急落、米金利は雇用統計前の水準へ下げる
〇その後複数の地区連銀総裁のタカ派発言から米金利反転上昇、ドル円も133円台後半へ戻す
〇米金利の動きと円相場との相関が再び高くなりつつあり、短期的にドルが底堅い動きを示しやすいか
〇短期的に雇用統計後の高値135.56とCPI後安値131.72の中で、どこまで上がれるかトライ中の様相
〇今週は132.25レベルをサポートに134.50レベルをレジスタンスとみる

今週の週間見通し

最近のドル円は、激しい動きが続いていますが、大きな動きとしては第1週の強い米国雇用統計後のドル急騰と先週の弱いCPI後のドル急落により週をまたいでの行って来いの動きを見たということでしょうか。雇用統計については先週も書いた通り非農業部門雇用者総数がコロナ前のピークを上抜け米国としては過去最大の雇用者数を見たことです。

また先週の米国CPIは予想8.7%に対して8.5%と弱い数字を見たことで、前回9.1%でピークアウトしたとの見方が広がりました。米金利は下げ雇用統計前の水準へと下押ししましたが、複数の地区連銀総裁がタカ派な発言をしたことから米金利が反転上昇、ドル円も133円台後半へと戻すこととなりました。

この複数の地区連銀総裁の発言はほぼ同様の内容であったことから、現在のFRB内のコンセンサスに近いと考えてよさそうですが、9月FOMCまで間が長いため、その間に市場参加者がハト派に傾かないようにという強い意志が感じられます。代表的な発言はメスター・クリーブランド連銀総裁の発言ですが、要点は以下の3点です。
(1) 目標2%への回帰には4%超の水準が適切
(2) 来年上半期まで引き締め、その後いったん停止
(3) 緩和は2%台回帰を数か月確認する必要

順に見て行くと(1)はFRBのインフレ目標まで下げるには4%超の政策金利が適切というものですが、市場参加者のピーク見通しが3.25%まで下がっていたことに対して、FRBはもっと利上げを行うということを暗に示したものです。4%超はFOMCメンバーの中でもタカ派と思いますが、市場参加者のピーク見通しが現在でも3.50%であることを考えると、3.75%あたりは考えておいたほうが良さそうというところでしょうか。

引き締めのピーク時期については(2)と(3)で示されていますが、市場参加者は3.50%のピークを2023年前半に見て後半には既に緩和に転じるという見方をしていました。それに対しては明確に否定しピーク金利が長期に渡って継続するであろうこと、緩和に転じるにはインフレ率が2%台に戻しその状況が数か月続いて初めて考えることだとしました。米国CPIはピークアウトとは言っても8%台ですし、現在の物価が落ち着いてCPIが2%台に下がるのはかなり先のことと見られますので、2023年中に緩和に転じる可能性は低いかもしれないと取れます。

上記のこと、また最近は米金利の動きと円相場との相関が再び高くなってきたことを考えると短期的にはドルが底堅い動きを示しやすいと言えそうです。実際にCPIで下げた時でも安値は雇用統計前の水準に押した程度で、その後は買いに転じています。このあたりの動きはテクニカルに見て行きましょう。いつもの日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。



長期的な上昇トレンドから中期的な下降トレンドへと転換し、更に現状は短期的な上昇トレンドに戻した後のもみあいにあると考えられます。短期的には雇用統計後の高値の135.56(赤の太い水平線)とCPI後の安値131.72(青の太い水平線)の中で安値からどこまで上がれるかをトライ中と見てよいでしょう。

これら2つの水準に対して61.8%戻しが134.09、78.6%(61.8%の平方根)戻しが134.74となっていてこれら両水準の間となる134円台半ばより上では売りが出やすい水準となりそうです。いっぽうで下値については132円台前半では下げ止まりやすいのではないかと考えています。

最近は変動が大きかったので今週は中休みでやや変動が少なくなると考え132.25レベルをサポートに134.50レベルをレジスタンスと、押しが入りやすい展開を考えたレンジを示しておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月15日(月)
08:50 本邦4〜6月期GDP速報値 ☆
11:00 中国7月鉱工業生産、小売売上高
21:30 米国8月NY連銀製造業景況指数
23:00 米国8月NAHB住宅指数

8月16日(火)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
15:00 英国7月失業率
18:00 ドイツ8月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏8月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏6月貿易収支
21:30 米国7月住宅着工・建築許可
22:15 米国7月鉱工業生産・設備稼働率

8月17日(水)
07:45 NZ4〜6月期PPI
08:50 本邦7月貿易収支(通関)
11:00 NZ中銀政策金利発表 ☆
12:00 NZ中銀総裁会見
15:00 英国7月CPI ☆
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP改定値 ☆
20:00 南ア6月小売売上高
21:30 米国7月小売売上高
23:00 米国6月企業在庫
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC議事録公表 ☆

8月18日(木)
10:30 豪州7月失業率
18:00 ユーロ圏7月CPI
18:00 ユーロ圏6月建設支出
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
23:00 米国7月中古住宅販売
23:00 米国7月景気先行指数
26:20 カンザスシティ連銀総裁講演
26:45 (ミネアポリス連銀総裁講演)

8月19日(金)
07:45 NZ7月貿易収支
08:01 英国8月消費者信頼感
08:30 本邦7月CPI ☆
15:00 ドイ7月PPI
15:00 英国7月小売売上高

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月8日(月)
ドル円は週明け早朝に金曜高値を上抜け135.58レベルの高値をつけたものの135円台半ばから上ではドル売りオーダーも見られ欧州市場までは135円台前半の狭いレンジでの取引が続きました。海外市場に移ってからは上値が重たかったことに加え米金利が東京市場から水準を下げていた動きに遅れてドル売りとなり、NY市場前場には134.35レベルの安値をつけましたが、下がったところでの押し目買いも根強く引けにかけては135円に近づいての引けとなりました。

8月9日(火)
ドル円は翌日10日発表の米国CPIを前に様子見が強まっていましたが、東京朝方から米金利がじり高になる動きとともにドル円もじり高となっていきました。それでも終日のレンジは54銭に留まり、CPIの結果(予想8.7%、前回9.1%)を見てから判断したいという参加者が大半だったようでした。

8月10日(水)
米国CPI発表を前にNY市場までは若干上値が重たい動きとなっていました。CPIが年率8.5%と予想よりも低く、前回でピークアウトしたとの見方が広がり米金利が低下する動きとともにドル円は急落、132円目前まで下げた後に133円近辺まで戻しての引けとなりました。

8月11日(木)
東京は休場でしたが東京時間の昼前までは買い戻しが続き133.31レベルの日中高値をつけました。しかし、前日の急落を見た後の戻り売りも強くNY朝方まで売りが継続、弱いPPIも手伝って131.73レベルと前日安値を更新しました。その後、米金利が上昇に転じ7月22日以来の2.9%台まで上昇する動きとともに133円台に乗せて引けました。

8月12日(金)
東京前場は前日NY市場の流れを受けてドル買いが先行、日経平均大幅高も手伝って133円台半ばまで上昇。後場にはやや押しが入っての欧州市場入りとなりましたが、ドル買いが強くNY朝方には133.89レベルの高値をつけました。引けにかけてはやや売りも出て133円台半ばに押して引けました。



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