ドル円見通し 2022年9月22日を上回る介入規模推定だが値動きは当時と類似(2024/5/1)

ドル円は、5月1日早朝には157.84円まで戻し、29日夕刻からの戻り幅を3.34円として29日夕刻への急落幅に対して凡そ6割を戻した。

ドル円見通し 2022年9月22日を上回る介入規模推定だが値動きは当時と類似(2024/5/1)

2022年9月22日を上回る介入規模推定だが値動きは当時と類似

〇ドル円、5/1早朝157.84まで戻し、4/29夕刻からの戻り幅3.34として急落幅の約6割を戻す
〇市場介入、日銀の資金変動から5兆円規模だったと推察
〇160円の壁分厚いとの認識強まり、当面の天井つけた印象強まれば揺れ返しの円高期に入る可能性も
〇米雇用コスト指数、前期比1.2%上昇、前年同期比も高い水準維持
〇米長期債利回り、雇用コスト指数上昇で賃金インフレ圧力根強いとの懸念から総じて上昇
〇ダウ・ナスダックとも大幅下落、米利下げ開始先延ばし感が優勢となったことを嫌気
〇157円台を維持する内は一段高余地あり、158円超えからは159円台への上昇を想定
〇157円割れからは下げ再開疑い、156円割れから下落期入りとし4/29夕安値154.50前後への下落想定

【概況】

ドル円は4月26日の日銀金融政策決定会合(現状維持、総裁会見では円安への警戒感薄い印象)と26日夜の米3月PCEデフレーターが予想を上回ったことにより158円台へ急伸し、29日午前に160.16円へ大幅続伸して1990年4月2日高値160.36円以来の160円台到達となったが、市場介入と推察される急落で29日夕刻安値154.50円へ下落してこの間の下げ幅は5.66円となった。しかし狼狽売りが一巡すると買い戻し優勢となり、30日午前に156.99円を付けて29日夜反発時高値156.88円を超え、30日夜の米四半期雇用コスト指数が予想を上回ったことによる賃金インフレ感から米長期債利回りが上昇してドル全面高となる中、5月1日早朝には157.84円まで戻し、29日夕刻からの戻り幅を3.34円として29日夕刻への急落幅に対して凡そ6割を戻した。
今夜はADP民間雇用、JOLTS求人件数、ISM製造業景況指数、2日未明にはFOMC声明発表と議長会見があり、2日夜には週間新規失業保険申請件数と四半期労働コスト、3日夜には米雇用統計と重要イベントが続く。

【5兆円規模の市場介入だった可能性】

日銀の資金変動から4月29日の急落は5兆円規模の市場介入だったと推察されており、2022年9月22日の介入規模2.8兆円を超えて同年10月21日の5.6兆円(3連休を挟んで10月24日に追加で0.7兆円の介入あり)に迫る規模だったとされる。
2022年9月22日は介入による急落で当日高値145.89円から140.36円まで5.53円の急落幅だったが、当日安値から切り返しに入り、当週の週足は陽線を維持して同年10月21日高値151.94円まで一段高となり高値切り上げ幅は3.09円だった。

今回の介入と思われる急落幅は5.66円であり、当日の狼狽売りが一巡してからはすでに半値戻しを超えて6割近くの戻りを見せており、介入後の値動きは2022年9月22日に近い動きと思われる。
2022年のように一度目の介入を消化して4月29日高値160.16円を超え163円から165円前後へ水準を切り上げてゆく可能性も考えられるが、そのためには米FOMC等をドル全面高で通過して投機的な円売りだけではないファンダメンタルズの根拠を伴った勢いが必要であり、かつ160円前後で想定される二度目の大規模介入もクリアする必要があり、かなりハードルが高いという印象もある。
160円の壁が分厚いとの認識が強まり、米FOMCも9月に利下げ開始に踏み切る見通しとして4月29日高値で当面の天井を付けたとの印象が強まれば、いったん揺れ返しの円高期に入る可能性も考えられる。

【米雇用コスト指数上昇、景況感悪化も目立つ】

4月30日に米労働省が発表した1-3月期の四半期雇用コスト指数(ECI)は164.0となり前期比1.2%上昇
して10-12月期の0.9%上昇を超えて市場予想の1.0%上昇を上回った。上昇率としては1年振りの拡大であり、前年同期比は10-12月期と変わらずの4.2%上昇で高い水準を維持したため、賃金インフレ圧力が根強いことを示して米長期債利回り上昇とドル高を招いた。
米経済情報会社MNIインディケーターズによる4月のシカゴ購買部景況指数は37.9となり3月の41.4から低下して市場予想の45.0を下回った。また米民間調査機関コンファレンス・ボードによる4月消費者信頼感指数は97.0となり3月の103.1から大幅低下して市場予想の104.0も下回って2022年7月以来最低となった。現況指数は前月の146.8から142.9へ、期待指数は74.0から66.4へ、向こう半年間の景気見通しでは「改善する」が前月の14.3%から12.8%へ低下して「悪化する」は前月の18.5%から19.9%へ上昇した。

最近の米経済指標は景況感の悪化が顕著になる一方でインフレの高止まりないし再燃感が強まる傾向にある。FRBは利上げを躊躇するリスクと先延ばしするリスクを天秤にかけ、3月FOMCまでは年内3回利下げ想定を維持していたが、4月16日のパウエル議長発言では直近の統計により引き締め状態が長引くことを示唆していた。5月2日未明のFOMCでは現状維持とされるが、議長会見で9月利下げ期待度が下がり年3回利下げが難しくなるのか注目される。

【米2年債利回りは年初来最高を更新】

4月30日の米長期債利回りは雇用コスト指数の上昇による賃金インフレ懸念から総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは4月29日まで2営業日連続で低下していたが30日は前日比0.06%上昇の4.68%となり、30年債利回りも0.06%上昇の4.79%と3日ぶりに反発し、いずれも昨年12月以降の最高水準に近いところに来ている。政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.06%上昇の5.04%となり4月25日につけた5.03%を超えて1月12日に付けた4.24%以降の最高を更新した。
一方でNYダウは前日比570.17ドル安の大幅下落で3日ぶりの反落となり、ナスダック総合指数も325.26ポイント安と大幅下落した。利下げ開始先延ばし感が優勢となったことを嫌気している。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は4月29日午前高値160.16円から夕刻安値154.50円まで急落したが、狼狽売り一巡で持ち直しに入ったため、30日午前時点では4月29日夕安値を目先の底とした上昇期入りとして5月2日午前から6日午前にかけての間への上昇を想定した。
5月1日早朝へ戻りを続けているのでまだ上昇途中とみるが、今夜の米経済指標や明朝のFOMC次第では波乱となる可能性もあるため、159円超えからは160円試しへ向かうとみるが、157円割れを弱気転換注意とし、156円割れからは戻り一巡後の下落期入りとして5月2日夕から6日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では4月29日夕刻からの反騰継続で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いているので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは下落期入りとみて安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。

60分足の相対力指数は4月29日午前の95ポイントから夕刻に30ポイント台へ急落したが、その後は持ち直しを続けて1日早朝には70ポイントに迫っているので、60ポイントを割り込んでも回復する内は一段高余地ありとし、50ポイント割れからは下落再開として40ポイント以下への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、157.00円を下値支持線、158.00を上値抵抗線とする。
(2)157円台を維持する内は一段高余地ありとし、158円超えからは159円台への上昇を想定する。今夜の米経済指標や明朝のFOMC次第では160円に迫る可能性もあるとみるが乱高下に注意したい。
(3)157円割れからは下げ再開を疑い、156円割れからは下落期入りとして4月29日夕安値154.50円前後への下落を想定する。154円台は買われやすいとみるが、156.50円以下での推移なら2日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

5/1(水)
休場 香港、中国、韓国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム
ドイツ、フランス、スイス、ノルウェー、オランダ、イタリア、ベルギー、スペイン、ロシア
インド、パキスタン、トルコ、南ア、メキシコ、ブラジル
17:30 (英) 4月 S&Pグローバル 製造業PMI改定値 (速報  48.7、予想 48.7)
21:15 (米) 4月 ADP非農業部門雇用者数 前月比 (3月 18.4万人、予想 17.5万人)
22:45 (米) 4月 S&Pグローバル 製造業PMI改定値 (速報 49.9、予想 49.9)
23:00 (米) 4月 ISM製造業景況指数 (3月 50.3、予想 50.0)
23:00 (米) 3月 建設支出 前月比 (2月 -0.3%、予想 0.3%)
23:00 (米) 3月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (2月 875.6万件、予想 868.6万件)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC(連邦公開市場委員会)政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
27:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見

5/2(木)
休場 中国
07:45 (NZ) 3月 住宅建設許可件数 前月比 (2月 14.9%)
08:50 (日) 4月 マネタリーベース 前年同月比 (3月 1.6%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨( 3月18-19日開催分)
10:30 (豪) 3月 貿易収支 (2月 72.80億豪ドル、予想 74.00億豪ドル)
10:30 (豪) 3月 住宅建設許可件数 前月比 (2月 -1.9%、予想 3.0%)
14:00 (日) 4月 消費者態度指数・一般世帯 (3月 39.5、予想 39.7)
16:55 (独) 4月 HOCB 製造業PMI改定値 (3月 42.2、予想 42.2)
17:00 (欧) 4月 HOCB 製造業PMI改定値 (3月 45.6、予想 45.6)

21:30 (米) 3月 貿易収支 (2月 -689億ドル、予想 -692億ドル)
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (10-12月 3.2%、予想 0.7%)
21:30 (米) 1-3月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (10-12月 0.4%、予想 3.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.7万件、予想 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 178.1万人)
23:00 (米) 3月 製造業新規受注 前月比 (2月 1.4%、予想 1.6%)



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