トルコリラ円見通し ドル円と同調した動き続くも7.50円台を維持できず上値重い(22/8/15)

トルコリラ円の8月12日は7.46円から7.40円の取引レンジ、13日早朝の終値は7.44円で前日終値の7.41円からは0.03円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し ドル円と同調した動き続くも7.50円台を維持できず上値重い(22/8/15)

トルコリラ円見通し ドル円と同調した動き続くも7.50円台を維持できず上値重い

〇トルコリラ円、8/11夜米PPI発表直後7.33へ下落するも、8/12はドル円と同調し7.40台中盤へ持ち直す
〇対ドル、8/12は17.98から17.91の取引レンジ、1ドル18リラ手前の攻防続く
〇8/18のトルコ中銀金融政策委員会を見て、膠着状態から抜け出すか試される週となる可能性
〇大手格付会社ムーディーズ、8/12にトルコのソブリン格付けを「B3」に一段階引き下げ
〇8/18のトルコ中銀金融政策委員会、市場予想は現行の14%での据え置き
〇7.40以上での推移中はリバウンドの継続余地ありとし、7.47超えからは7.50前後への上昇を想定する
〇7.37割れからは下げ再開とみて8/11夜安値7.33試しとし、底割れからは7.30前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の8月12日は7.46円から7.40円の取引レンジ、13日早朝の終値は7.44円で前日終値の7.41円からは0.03円の円安リラ高だった。
週間では8月5日終値7.53円から0.09円の円高リラ安。
ドル/トルコリラは相変わらず1ドル18リラを壁とした安値圏での膠着状態が続いているためにトルコリラ円はドル円を見ながらの展開となっている。8月2日にドル円が130.39円まで大幅下落したところで7.27円の安値をつけ、その後にドル円が反発した過程で8月9日には7.60円まで戻したが、8月10日は米CPI発表の円高により下落して安値で7.37円をつけ、11日夜の米PPI発表直後の円高により7.33円まで安値を切り下げた、2日続けての米インフレ指標発表を通過したことでドル円が戻したために12日は7.40円台中盤へ持ち直した。

8月2日安値の後は新たな安値更新を回避しているものの中勢レベルでは下げ渋りにとどまっており、日足レベルでは12月23日高値11.15円以降の最安値を更新した後の下げ渋りにとどまっている。
今週は8月18日にトルコ中銀の金融政策決定会合も控えており、高インフレが一段とエスカレートする中で利上げする気のない中銀及びエルドアン政権に対して市場が1ドル18ドルの壁を超えるリラ安へ進むのかどうかも注目される。またドル/トルコリラが膠着状態を続けるうちはドル円次第でもあり、ドル円が8月2日安値を起点とした反騰を継続できるのか、戻り一巡から失速して7月14日高値以降の下落基調を拡大させるのかも注目されるところだ。

【ドル高リラ安はトルコ中銀MPCから膠着状態を抜け出すか】

ドル/トルコリラの8月12日は17.98リラから17.91リラの取引レンジ、13日早朝の終値は17.93リラで前日終値と変わらなかった。
週間では8月5日終値の17.91リラからは0.02リラのドル高リラ安だった。
8月12日夕刻発表のトルコ小売売上高が予想を下回ったことや大手格付け会社ムーディーズがトルコの格下げを行ったことが圧迫要因となったが、1ドル18リラを防波堤とした膠着状態を抜け出すきっかけにはならなかった。
8月18日のトルコ中銀MPC(金融政策委員会)を見て膠着状態から抜け出すか試される週となりそうだが、直近の最安値は8月3日の17.99リラで昨年12月20日に付けた取引時間中の史上最安値18.36リラにはまだ距離があるものの、既に6月後半からは日足終値ベースでの史上最安値更新を8月3日の17.94リラまで続けてきた。その後は新たな安値更新へ進んでいないものの17.80リラ台では戻り売りにつかまり1ドル1リラを壁とした膠着状態に変わりはなく、きっかけ次第で堤防決壊的なリラ安に向っても不思議ないところだ。

【ムーディーズが格下げ】

大手格付会社ムーディーズは8月12日にトルコのソブリン格付けを従来の「B2」から「B3」に一段階引き下げた。同社は「経常収支の赤字が従来予想を大きく上回る可能性が高く、世界的に金融情勢が逼迫している中で対外資金需要が高まっている」とした。また今後の見通しについては「B3」に格下げした状況でリスクが均衡するとして見通しは従来の「ネガティブ」から「安定的」に変更した。
ムーディーズは2020年9月11日に既にジャンク級だった「B1」から「B2」へ格下げして見通しを「ネガティブ」とし、2021年12月3日時点でも「B2」に据え置いて見通しも「ネガティブ」のままだった。

大手格付会社ではフィッチレーティングスが7月9日に従来の「B+」から「B」に引き下げ、見通しを「ネガティブ」としている。同社は政治的配慮によりトルコ中銀は急速なインフレの上昇で主要先進国が金融引き締めへ進んでいるにもかかわらずに2021年12月以来政策金利を14%に維持していること、外貨準備の減少やリラへの減価圧力、インフレの急伸が経常赤字を拡大してそれを補填するための資本流入を阻害しているとした。因みにフィッチは2017年1月にトルコを投資適格から外してから4回の格下げを行ってきた。
S&Pは2022年4月4日に「BB−」から「B+」へ格下げして見通しを「ネガティブ」としている。

【8月18日のトルコ中銀MPCでは14%の据え置き予想】

8月18日にトルコ中銀のMPC(金融政策委員会)が開催されて政策金利の発表がある。
現時点での市場予想は調査対象のエコノミスト全員が現行の14%での据え置きとみている。

8月3日に発表されたトルコ7月消費者物価上昇率は全体の前年同月比が79.60%となり6月の78.62%から伸びた。前月比は6月の4.95%から2.37%へと伸びが鈍化したものの大幅な加速は続いている。コア指数の前年同月比でも6月の57.3%から61.7%となり、生産者物価の前年同月比は6月の138.31%から144.61%へと大幅に加速している。欧米が金融引き締めを強化することにより新興国市場からの投資マネーが本国に還流しやすい状況にあり、本来ならインフレ対策と通貨防衛上の利上げを行うべき状況だが、エルドアン政権は低金利がインフレを抑制し、リラ安が輸出を拡大して景気を拡大させるとの政策方針であり、2020年11月へのリラ暴落に際して利上げで対抗したアーバル前中銀総裁を解任した後も利上げ派の副総裁らを相次いで解任してきた。また統計局トップも更迭しているため、インフレの実態は公式のインフレ率を大幅に上回ているのではないかとされている。
8月12日にはトルコ中銀による年末インフレ率予想調査が発表され、前月の69.94%から70.60%へと若干上方修正されたが、まだかなり甘い見通しと思われる。

【概ね3か月から4か月周期のサイクルではもう一段安の懸念あり】

【概ね3か月から4か月周期のサイクルではもう一段安の懸念あり】

トルコリラ円の日足は概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルで推移しており、昨年12月20日の史上最安値以降では、今年3月11日安値、6月16日安値で底打ちしてきたが、8月2日にかけての下落で6月16日安値を割り込んだだめに現状は6月27日の戻り高値を起点としてサイクルの下落期にあると思われる。
安値形成期は6月16日安値から3か月目となる8月半ばからやや長引けば9月前半にかけての間と想定されるため、8月2日安値から円安に依存してやや戻しているもののこのサイクルの底打ちには日柄が浅すぎる印象がある。
今年3月11日安値からの反騰時は3月24日に26日移動平均を超えたところから上昇継続に入り4月28日高値まで続伸している。また6月16日安値からの反騰時も6月24日のトルコ企業への外貨保有と融資規制策の発表がきっかけだったものの26日移動平均超えから2連騰の急騰で6月27日高値へ上昇している。このため現状も26日移動平均(現在7.65円)を日足の終値ベースで超えてくればいったん上昇期に入る可能性が考えられるが、同線を超えないうちはサイクルの下落期がまだ続く可能性が優先されると思われる。

日足の相対力指数は8月2日に20ポイント台序盤まで低下したところから40ポイント台まで戻したものの、それ以上へ進めずにいる。50ポイントを超える反騰へ進めば当面の底打ちによる上昇継続感が強まると思われるが、40ポイント台へ乗せても維持できないうちはもう一段安余地ありとみる。相場が一段安した際に指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られれば3か月から4か月周期のサイクルにおける底打ち感も出てくると考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、7.37円を下値支持線、7.47円を上値抵抗線とする。
(2)7.40円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは11日夜安値を起点としたリバウンドの継続余地ありとし、7.47円超えからは7.50円前後への上昇を想定する。ただし7.50円前後では戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)7.37円割れからは下げ再開とみて8月11日夜安値7.33円試しとし、底割れからは7.30円前後への下落を想定する。7.30円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、ドル/トルコリラが1ドル18リラの壁を超えてリラ安が加速する場合は7.20円台中盤(7.27円から7.23円)へ下値目途を引き下げ、さらに安値試しが続きやすくなるとみる。

【当面の主な予定】

8月15日
 17:00 7月 財政収支 (6月 -310億リラ)
8月18日
 20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 14.0%)
 20:30 週次 外貨準備高 8/12時点 グロス (8/5時点 677.7億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 8/12時点 ネット (8/5時点 118.1億ドル)
8月22日
 17:00 7月 観光客数 前年同月比(6月145%)
 23:30 7月 中央政府債務 (6月 343億リラ)
8月23日
 16:00 8月 消費者信頼感指数 (7月 68.0)
8月25日
 16:00 8月 製造業景況観指数 (7月 103.7)
 16:00 8月 設備稼働率 (7月 78.6%)
 20:30 週次 外貨準備高 8/19時点
8月26日
 16:00 8月 経済信頼感指数 (7月 93.4)



注:ポイント要約は編集部

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る