ドル円 一段高は限界、調整の押しが入りやすい(週報8月第2週)

先週のドル円は、ドルが上昇、135円台半ばまで上伸後にやや押しての週末クローズでした。

ドル円 一段高は限界、調整の押しが入りやすい(週報8月第2週)

一段高は限界、調整の押しが入りやすい

〇先週のドル円、ペロシ議長訪台で円買い先行するもFRB関係者のタカ派発言でドル買いに
〇金曜発表の米国雇用統計強くドル上昇、135円台半ばまで上伸後やや押して週末クローズ
〇米国雇用統計の非農業部門雇用者数は過去最大、コロナ前のピークを上抜ける
〇ペロシ議長の訪台による米中関係の悪化、万が一有事になれば近場の有事で円売りか
〇今週は133.50レベルをサポートに136.00レベルをレジスタンスとみる

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初はペロシ米下院議長訪台によるリスクオフから円買いが先行したものの、複数のFRB関係者が市場参加者の2023年の緩和転換見通しをハト派過ぎると否定したことで米金利が上昇、ドル買いの動きへと転じました。その後金曜NY市場までは133円台半ばをもみあいの中心として方向感がはっきりしない展開が続きましたが、米国雇用統計が予想よりも大幅に強く非農業部門雇用者数がコロナ前のピークを上抜けたことからドルが上昇、135円台半ばまで上伸後にやや押しての週末クローズでした。

先週は今後にも影響を与える材料が2つ出てきました。ひとつはペロシ下院議長の訪台による米中関係の悪化、もうひとつはFRB関係者によるタカ派誘導発言です。ペロシ下院議長は元々4月に訪台する予定でしたがコロナに感染したことで、先週に延期となったもので、米中の関係悪化につながっても訪台は実現する予定でした。その後は予想通りの米中関係悪化となりましたが、台湾も中国も日本にとっては隣国であり、万が一有事にでもなれば、近場の有事ということから円売りになると見ています。中国もロシアによるウクライナ侵攻後の世界情勢を見たことで、すぐに動くことは無いと見られますが、将来的な火種となったことはたしかです。

それ以上に影響が大きかったのがFRB関係者のタカ派発言で、市場参加者は次回9月の利上げ幅を0.25か0.5かという思惑の中、米国の景気後退懸念を反映して0.25とよりハト派的な見通しが増えていました。また利上げのピークも早ければ今年12月に迎え、2023年は3月以降緩和に転じてもおかしくないという見通しで動いていました。それに対して、年内だけでなく来年も引き締めは継続されるという発言を通して、早く大きくに加え長く利上げという印象操作をしてきたようです。既に9月FOMCの利上げは0.75%がコンセンサスとなっていて、ピークもこれまでより0.25%高い3.50%と以前の水準へと戻りました。

この米金利上昇に加え、過去最大の非農業部門雇用者数を見て再びドル高へと舵をきってきましたが、前回高値の139円台前半が目先の高値となったことには変化は無いと見られ、今回の金利上昇だけで高値更新につながるほどの材料にはなっていないと考えます。全体として、133円割れのドル買いと上は135円台半ばか136円台半ばか、上方向のレジスタンスはテクニカルに考えてみます。

いつもの日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

長期的な上昇トレンドから中期的な下降トレンドへと転換し、更に現状は短期的な上昇トレンドにあると考えると、7月高値139.38レベルと8月安値130.39レベルの61.8%戻しとなる135.94(青のターゲット)までの戻しを考え、状況によっては78.6%(61.8%の平方根)戻しとなる137.45も視野に入れるという流れにあります。

ただ、137円台半ばまでの戻しにはもうひとつ材料が無いと難しいと考え、前者のターゲットと重なる136円をレジスタンス水準と考えることとします。いっぽうでサポートは雇用統計の日の東京後場の高値となった133円台半ばは今週は底堅くなる水準です。逆に同水準まで押すことはあるのだろうかというころになりますが、米金利上昇の影響から米国株が下げやすくなり、その動きから円買いにつながる流れはありそうです。

現状は一方向に動くと考えるよりも上下ともに抜け切れない流れが続くと見て、今週は133.50レベルをサポートに136.00レベルをレジスタンスと、押しが入りやすい展開を考えたレンジを示しておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月8日(月)
08:50 本邦6月貿易収支(国際収支)

8月9日(火)
**:** シンガポール、南ア市場休場
08:01 英国7月小売売上高
09:30 豪州8月消費者信頼感
10:30 豪州7月企業景況感
21:30 米国4〜6月期単位労働コスト速報値

8月10日(水)
10:30 中国7月CPI・PPI ☆
15:00 ドイツ7月CPI
16:00 トルコ6月失業率
18:30 南ア7月企業信頼感
21:30 米国7月CPI ☆
23:00 米国6月卸売売上高
23:30 週間原油在庫統計
24:00 (シカゴ連銀総裁講演)
27:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)

8月11日(木)
**:** 東京市場休場
08:01 英国7月住宅価格
16:00 トルコ6月経常収支
21:30 米国7月PPI ☆
21:30 米国新規失業保険申請数

8月12日(金)
08:30 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
15:00 英国4〜6月期GDP速報値 ☆
15:00 英国6月鉱工業生産、貿易収支
15:45 フランス7月CPI
16:00 トルコ6月鉱工業生産
18:00 ユーロ圏6月鉱工業生産
21:30 米国7月輸入物価
23:00 米国8月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月1日(月)
週明け1日もドル円は終日ドル安・円高の動きを続けました。中長期的に円を売っていた向きのポジション調整が未だ続いていることが主要因ですが、材料的には前週同様に米国に波及してきた景気後退リスクに加え、ペロシ下院議長が台湾を訪問することに対して中国が強力な対抗措置を取ると発言したこともドル売り要因となりました。東京朝方には133円台半ばからスタートしたもののNY引け間際には131.60レベルまで下げ安値引けとなりました。

8月2日(火)
ドル円はペロシ下院議長の訪台計画に対して中国が反発したことから、米中間の緊張の高まりを懸念した円一段高の動きで始まりました。東京仲値過ぎには130.39レベルの安値をつけ、その後NY市場までは130円台後半を中心としたもみあいが続きました。しかし訪台後の中国の反応は軍事演習等想定内のものであったこと、また複数のFRB関係者が市場参加者による来年の緩和転換見通しをミスリードと発言したことで米金利が反転上昇しドル円は133円台前半まで上昇し高値引けとなりました。

8月3日(水)
ドル円は朝方こそNY市場の流れを受けドル買いが先行していましたが、仲値前後にドル売りが出たことをきっかけに後場早い時間帯には132.28レベルまで下押しが入りました。その後欧州市場では改めてドル買いの動きとなりNY市場では強い経済指標と前日に続いてFRB関係者のタカ派な発言が続いたことで134.55レベルまで上伸後、引けにかけては利食いも入り134円割れでのクローズとなりました。

8月4日(木)
ドル円は東京朝方はNY後場の流れを受けてドル売りが先行したものの133円台半ばより下ではドル買いオーダーも見られ仲値過ぎには反転。欧州市場序盤には中国軍が台湾沖に複数のミサイルを発射し日本の経済水域にも着弾したことから一時的に円売りとなり134.42レベルの高値をつけました。しかし134円台半ばにはドル売りオーダーが見られたこと、米国がサル痘感染拡大を警戒し公衆衛生上の緊急事態を宣言したことからドル売りの動きが強まり132.76レベルまで水準を下げ安値圏での引けとなりました。

8月5日(金)
東京朝方に132円台半ばまでの下押し失敗後は実需買いも入り133円台を回復、米国雇用統計を前にNY市場までは133円台前半でのもみあいが続きました。雇用統計はNFPが予想を上回る+52.8万人、前月の数字も上方修正されたことで非農業部門の総雇用者数はコロナ前のピークを1.3万人上回る史上最高の雇用者数を記録、その動きから大幅利上げ思惑が再燃し、米金利は急上昇、ドル円も135.50レベルまで急進しました。引けにかけては135円挟みで底堅い地合いのまま引けました。

注:ポイント要約は編集部

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